日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2025.04.25

早期英語学習はどうすれば上手くいきますか?

早期英語学習はどうすれば上手くいきますか?

英語学習関係の動画で、「早期英語学習は意味がない」、「英語は学校で習うだけで十分」 などの意見があります。このように早期英語学習が無意味になってしまうこともあるんでしょうか。例えばIQによって効果が異なるのでしょうか。

早期英語学習に対して批判的な意見には、1)母語の習得や思考の発達に悪影響を及ぼすというものと、単純に2)英語習得における効果がないので意味がないというものがあると思います。1)についてはこれまでの 「みんなの疑問」 で紹介してきました。今回は2)に関するこれまでのコラムやインタビュー記事をご紹介します。早期英語学習が失敗する、もしくは失敗したと感じられている例が実際にあるのは事実ですが、これらの失敗の原因を理解することで正しい早期英語教育を行うことができるものと思われます。

 

早期英語学習ではインプットの量と質が重要

早期英語学習の失敗の多くはインプット(すなわち聞かせる音声)の量が十分でないか、質が悪いことに起因します。英語圏で育つバイリンガルと同等の英語を身に付けるためには数千時間単位の英語のインプットが必要です。もちろんこれは日本では確保するのがなかなか容易ではない時間ですが、当然ながら英語に触れる時間は多ければ多いほどいいと言えます。一方で、日本語を話す環境において英語圏で育つバイリンガルと同等の英語を身に付けられなかったとしても、それを 「失敗」 と呼ぶことはできないということがわかっていただけるはずです。

特に乳幼児期は言語の文法や規則を論理的に理解することは稀で、大量のインプットから帰納的に学ぶ(すなわち経験的に正しそうなものを理解する)のに適している時期であるため、英語のインプットは多い方が望ましいと言えます。インプットによる言語習得は胎児のとき、つまりお腹の中にいるときから始まっていると言われています。早稲田大学の尾島司郎教授(インタビュー時横浜国立大学教授)は日本の従来の英語教育におけるインプット量の少なさを指摘します。

また、特に乳幼児は環境の中から自分が習得すべき言語を選別していることがわかっています。英語をこの 「習得すべき言語」 の一つと認識してもらうためには、自分に向けて話されていることを自覚させることと、それに反応したことに対する何らかのフィードバックがあることが重要であることが研究により明らかになっています。ただ英語の映画を見せたり音楽を聞かせたりするだけよりも、適切な教材の音声を用いたり、ゲームを通して楽しみながら学ぶことによって、英語を 「習得すべき言語」 として意識してもらえることが期待できます。

特に、親が赤ちゃんに話し掛ける際には口を大きく開き、抑揚を大きくした発音をしますが、このような対乳児発話(マザリーズ)は実際に乳幼児に興味を持たれ、その言語の習得を促すことが明らかになっています。このことから、大人向けの英語を聞かせるよりも乳幼児向けの教材や歌を聞かせることが効果的であると言えます。

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早期英語学習には適切な環境が必要

適切なインプットのためには英語に触れる環境が重要です。一般に、早期英語学習は遊びを通して音声中心に行うと上手くいくと言われています。何よりもまず英語に興味を持って聞いてもらうことが非常に重要であるため、歌や遊びが効果的であると言えます。東京大学の池谷裕二教授も、楽しい体験を通した学習の方が効果的であることを指摘しています。

また、学習教材を見る際に、親が手本を見せたり一緒に反応したりすることも乳幼児期の言語習得を促すと言われています 。親が反応することにも、英語が 「習得すべき言語」 であることを伝える効果があるからです。

この際に親がその言語を話す必要はありません。また、いわゆる日本語英語しか話せない親御さんでも、その日本語英語を使って一緒に遊ぶことで乳幼児期の言語習得を促すと考えられます。重要なのは質のいいインプットをいかに聞かせるかで、その他に多少の日本語英語を聞かせたところで習得する英語の発音への影響を心配する必要はないと言えます。

特に日本においては、小中高校の学年が上がるほど英語学習の意欲を維持するのが難しく、苦手意識を持たれる傾向があります。従って小学校入学以前に適切な環境を整え、動機付けを行うことが重要であると言えます。歌や遊びなど楽しみながら英語に触れる経験を通して、英語に対する肯定的な意識が身に付くことが期待されます。

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状況次第で効果が見えにくいこともある

乳幼児期は短時間聞いた外国語の音の違い(例えば日本語母語話者にとってのLとRの区別)を即座に学習できるほど言語習得に優れている時期です。それは上述したとおり 「習得すべき言語」 や 「習得すべき発音」 がまだ完全に定まっていない時期だからなのですが、それゆえに、学習が早い分忘れるのも早いようです。Harmonious Bilingualism Network(HaBilNet)の創設者兼ディレクターであるニック・デハゥワー博士のインタビューでは、バイリンガルの子どもが低年齢児に使わなくなった言語を忘れてしまった例が紹介されています。このことから、早期英語学習においてインプット量と同時に継続的なインプットが重要であることがわかります。

また、子どもは様々な要因により、実際には話せる言語を敢えて話さないこともあります。これはバイリンガル児においては自然なことです。親御さんとしては不安になるのももっともですが、特に乳幼児期の言語習得はインプット(すなわちリスニング)から始まって少し時間を置いてアウトプット(スピーキング)が開始することを念頭に、長い目で見守ることが重要であると言えます。

また、早期英語学習の効果に対する不安感と同じくらい耳にするのが、母語の発達が遅れているのではないかという不安感ですが、これは研究においてその影響が否定されていると言って問題ありません。詳しくは過去のインタビューやみんなの疑問の記事をご覧下さい。

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いかがでしたか。

早期英語学習が必ず上手くいくというような甘い話はもちろんありませんが、巷に溢れている 「早期英語学習が無意味だ」 と一概に否定するような主張には根拠がないことが伝われば幸いです。

早期英語学習はただ英語を聞かせておけばいいというものではなく、親御さんをはじめとした周囲の協力が不可欠です。早期英語学習の成功は子どもの知能によって決まるものではなく、その成功には、適切なインプットを与えられる教材と周囲の大人が一緒に学習をしてあげられる環境が重要であると言えます。

 

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