日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。
2022.12.06
明治大学 廣森教授への取材記事後編です。
今回の後編では、日本の環境でやる気を高めたり維持したりするためには、どのような学習方法や授業が効果的か、という点について紹介します。
著者:佐藤 有里
【目次】
―これまでのお話で、やる気がどのように英語学習に影響するかがわかりました。モチベーションや学習方略、学習スタイルは密接に絡んでいるというお話がありましたが、学習方法や授業の工夫によってやる気を高めたり維持したりすることはできるのでしょうか?
内発的動機づけを育てると良いのではないかと思います。そのときには、三つの心理的欲求をバランス良く満たすようにすることがとても大事です。
心理学の「自己決定理論」でよく出てくる話なのですが、この三つの欲求は、その人の文化的背景や年齢に関係なく、内発的なモチベーションにかなり強い影響力を持っていることがわかっています。
(資料提供:廣森教授)
一つ目は、「自律性」です。「自己決定をしたい」という欲求は誰もが持っているものです。
「いまから宿題をやろうかな」と思っているときに、親から「宿題やったの?」と言われると、そのうち自分から宿題をやらなくなってしまいますよね。ですから、選択肢を用意して本人に選ばせることもできると思います。
教師が単語テストを実施するときにも、「3種類のテストがあります。20個の単語テストだったら1個5点、10個の単語テストだったら1個10点、5個の単語テストだったら1個20点です。この中から1種類を選んで準備してください」と伝えると、生徒は「20個の単語をテストするので覚えてきてください」と言われるよりも、どれを選ぶか自分で考えて決めたほうがモチベーションは高まります。そこで勉強方法も変わってくると思います。
私が大学院生のとき、指導教員の先生に「成績の評価方法を3種類から選べます」と言われました。一番良い成績(S評価)を取りたい場合は、レポート二つを提出してテストを受ける。2番目の成績(A評価)でいい場合は、レポート一つとテスト。3番目の成績(B評価)でいい場合は、テストだけ。授業が始まる4月の時点で言われるので、「一番低い成績でいい」と言う学生はなかなかいなくて、結局は一つ目の方法を選ぶのですが、「自分で選んだ」ということがあるので、最初から「レポート二つとテスト」と言われるよりも「勉強しなければいけない」という気持ちになったのではないかなと思います。
選択肢が多すぎてもよくありませんが、適度な数の選択肢を与えることは、モチベーションにとって良い影響があると思います。
―たしかに、人から指示されたことをやるときよりも、自分で決めたことをやるときのほうが「がんばろう」と思える場面は多いですね。
そうですね。二つ目の「有能感」は、小さな成功体験を積み重ねて「やればできる」と思えることですね。最近は、モチベーションを一連のプロセス(モチベーションが学習の時期や状態とともに変化・発達する)として捉えて、学習の開始、学習中、学習後の振り返り、それぞれの観点からどのような動機づけ要因が重要なのかを考える研究が行われているんです。
学習を始めるときに重要な要因は、どの研究でも「適切な目標設定」が挙げられています。どのような目標を設定するかが学習方法にかなり影響を与える、ということです。
そして、「どのような目標を設定するか」だけではなく、「その目標をどのように達成するか」という見通しも併せて学習者に提示すると、モチベーションをもっと維持しやすくなると思います。
「これをやったら、次はこれをやって……」というスモール・ステップやサブゴールみたいなものですね。そういう見通しがあれば、その段階ごとにフィードバックを受けながら「ここがクリアできたから次はここに向かってがんばる」というような小さな成功体験を積み重ねることができます。
すると、「やったらできるようになるのかもしれない」という高揚感にもつながって、学習を続けられる可能性が高くなる、ということです。
そういう意味では、テストを定期的に受けてスコアをベンチマークにしてがんばる、という方法も、やる気を維持しながら学習することに役立つ方法の一つではないかと思います。
―三つ目の「関係性」は、どういうことでしょうか?
英語を学ぶことで「周り(教師やクラスメートなど)と繋がっている」というような感覚が得られることです。例えば、ペアワークやグループワークで友だちから受けた刺激が「勉強してみようかな」という気持ちに繋がります。
―学校の授業では、すでにやる気が高い学習者とやる気が低い学習者が混在していることが多いと思います。学習者のやる気の違いによって、動機づけの方法や学習環境を変える必要があるでしょうか?
すでにモチベーションが高い学生とそうではない学生では、必要な学習サポートや学習支援のあり方が違うと思います(Hiromori, 2006)。
やる気のある学生は、そもそも、教師による指導はあまり必要ないんです。どちらかというと、グループ・ワークやペア・ワークもいやがります。やる気があるので、どんどん自分でやりたいんですよね。
ですから、「これをやったらいいよ」というふうに学習教材を与えるとか、自律的な学びをサポートする環境をつくったり足場かけ(※5)をしたりすることのほうが必要です。
子どもたちを一人前の大人に育てることが教育の目標だと考えると、学校では、自律した学習者を育てることが一つの教育目標になり得ます。でも、学校という環境は、一つの閉じられた社会の中で同じものを使って学習させるので、自律性を育てることとは逆のことをしているところもあります。
学校教育は、そういう矛盾を抱えている側面もありますが、モチベーションの高い学習者が自律的に学べる環境を用意することは必要だと思います。
―やる気が低い学習者の場合は、どのような学習方法が効果的でしょうか?
学習に対してあまり積極的になれない学生は、なかなか一人で学習したり、授業にうまく参加したりできません。
でも、周りの学生や仲の良い友だちが「英語を勉強するのも悪くないよね」と言っていたり、宿題をやっていたりすると「自分もちょっとやってみようかな」と思う場合があるので、まずは協働的な学びを通じて、どうにか学習の中に引っ張ってくる。それができてくると、学びのサイクルのようなものに乗れる可能性が高くなるのではないかと思っています。
―授業の場合、学習者のやる気の高さによって「自律的な学び」と「協働的な学び」を使い分けることはどのように可能でしょうか?
学習者全員にとって効果的な授業をすることはなかなか難しいので、よく学習スタイルの研究では課題として挙げられる点ですね。学習者によっていろいろな学習スタイルがある、ということはわかっていても、30〜40人の生徒に対して先生は一人しかいないので、授業をどうしたらよいかがわからない、ということです。
ただ、教室内にこういう学習者がいるんだな、ということがわかれば、例えば、「自律的な学び」と「協働的な学び」のハイブリッド型のような感じで、それぞれの学習スタイルを半々ずつ取り入れるのも一つのやり方だと思います。
―一緒に学んでいる仲間の存在でやる気が高まる、という点は、とても興味深いですね。
まさに私が最近関心を持っているテーマでして、いま「英語学習における『やる気の伝染』メカニズムの解明」という研究に取り組んでいます。
私たちは、英語の学習に限らず、意識的か無意識的かにかかわらず、周りの人に大きな影響を受けます。
有名な人が「この商品はいいですよ」と言っていると、実際に使ったことはないのに「なんとなく良さそう」という感覚になってきて、気がついたら買っていた、ということはよくありますよね。
これは専門用語で「代理学習」と言います。周りの人の行動を観察しながら、意識的に、もしくは無意識的に、その人の価値観を内在化する、ということですね。
やる気が低い学生は、友だちがやっているのを見て「やってみようかな」と思うようになるので、このような代理学習は、おそらく英語学習でも起きるだろうなと考えています。
特に日本は、良くも悪くも同調圧力が強い社会なので、ほかの文化圏と比べて周りの影響を受けやすいのではないかと思います。この社会・文化的な特徴をうまく使って、例えば、周りに良い影響を与えられる学習者をクラスやグループの中に意図的に配置することで、グループ・ワークを活性化することができるか、ということを調べています。
―「みんな同じが良い」という日本の文化はネガティブに捉えられることが多いですが、そこをうまく利用する、ということですね。
そうですね。あと、私たちは、サッカー日本代表の試合があるとスタジアムで観戦したり、家で見られる映画をわざわざ映画館で見たりしたくなりますよね。これは、おそらく「場を共有したい」という気持ちがあるからだろうと思います。英語の授業にもそういうことがあるのではないか、「やる気の伝染」のようなことを教室内で起こせたらおもしろいのではないか、と考えて、この研究を始めました。
―「やる気の伝染」は、どのように研究されているのでしょうか?
実は、心理学の分野では、すでにそれなりの数の研究があって、例えば、パズルのようなタスクをしてもらう実験があります。
内発的動機づけを持って取り組んでいる人と外発的動機づけを持って取り組んでいる人の様子をマジックミラー越しに見学させて、その後の行動にどういう影響が出るかを調べた研究です。この研究では、観察された人(被観察者)の行動は、5分もしないうちに観察した人(観察者)のモチベーションに影響することが明らかになりました(Friedman et al., 2010) 。
こういうことを英語の授業中にペアワークやグループワークでできるか、ということを調べています。
例えば、グループワークをしてもらうときに、事前にグループごとにリーダー役を決めておいて、メンバーのモチベーションを高めるような働きかけ(例:Let’s get started! などと言いながら活動をリードする、メンバーに積極的に質問する、メンバーが何か発言したら励ましのコメントを言う、など)をするように指示します。このことは、ほかのメンバーには伝えません。
この意図的なリーダー役の配置によって、グループワークに対する取り組みやグループのパフォーマンスが変わってくるか、という実験をしています。
その結果、そういうリーダーがいるかいないかによってグループダイナミクス(集団力学)が違うことやグループのパフォーマンスに違いが出ることがわかってきて、ある程度の効果があるだろうと考えています(Hiromori et al., 2021)。
あと、もう一つ興味深い実験があります。このようなグループワークの効果が対面の授業とオンラインの授業でどう違うかを調べたんです。グループワークを活性化することは対面でもけっこう大変なのですが、オンラインの場合は、沈黙が多くなってしまったりして、さらに難しくなります。ところが、リーダー役を事前に決めて実施することで、その難しさを少し和らげることができそうということもわかってきました。
―生徒のやる気を高めるために先生が一人でがんばるのではなく、生徒同士でやる気を高め合ってもらうということですね。
教室には、グループダイナミクスがありますから、先生一人ががんばっても、生徒のやる気を高めることはなかなか難しいですよね。私も以前は200人の学生がいる授業を担当していましたが、学生たちにうまくまとまってもらわないと全体としてはなかなか良い授業ができません。
従来は、いかに一人の先生が30〜40人の生徒のモチベーションを高めるかということを考えてきましたが、もし、学生同士がお互いにモチベーションを高め合える方法がわかってくれば、「やる気が高まる教室」が実現するのではないかと考えています。
―この研究で課題となっている点は、どのようなことでしょうか?
例えば、リーダー的な役割を果たしてくれるようにお願いした学生を各グループに置いても、グループメンバーに「このグループワークでリーダー的な役割を果たしていた人がいたと思いますか?いたとしたら、誰ですか?」というような質問をしてみると、事前に指名していたリーダーの名前を挙げるメンバーは50%〜70%ぐらいしかいません。つまり、私たち研究者がいくら意図しても、それが100%実現されるわけではないんです。ですから、リーダーシップのトレーニングも必要になってくると思います。
また、一定の期間、同じリーダーでグループワークに取り組む場合と、毎回リーダーを変えて取り組む場合のどちらがいいかを調べる研究もしています。興味深いことに、ある程度の期間まではリーダーを固定したほうがいいけれど、何週間か過ぎると効果がなくなってくる場合があります。ですから、リーダーは固定したほうがいい、ランダムに選んだほうがいい、ということも一概に言えません。
さらには、グループ分けをするときに学習者のモチベーションや英語力をどのように組み合わせるか、というように、次々と課題が出てきます。
―一人の学習者について調べるだけでも変数がたくさんあるので、さらにほかの学習者の影響も調べるとなると、かなり複雑な研究になりますね。
そうですね。かなり多くの変数を全部コントロールして成果を検証しなければならないので、時間がかかると思います。
ですから、このような研究の数もやはり多くはないんですよね。ペアワークの研究はある程度進んでいるのですが、グループワークの研究は、さらに変数が増えて複雑になるからですね。
ただ、ほかの学習者の影響を受けることが現実ですから、研究のしがいがあります。
おそらく、親御さんにしても先生にしても、同じような感じで同じように教えているけれど、出てくる成果はまったく違う、ということはありますよね。
私も、同じ学年で同じような英語力の学生に同じ授業を教えていても、「がんばろう」という雰囲気がクラスによって違うので、とてもおもしろい研究テーマだと思っています。
―動機づけに関する研究では、「エンゲージメント」という概念が注目されているようです。モチベーションややる気と、どのように異なりますか?
エンゲージメント(engagement)は、やる気やモチベーションと似ているのですが、違う点があります。
「やる気」は、「やる」気ですから、何かをやろうとする気持ちですよね。
「モチベーション」は、やる気の方向性(やる気がどこに向いているのか)とやる気の強さ(やる気がどれくらいあるのか)です。
「エンゲージメント」は、やる気と行動を合わせた総括的な概念として捉えられています。
やる気に関する研究で使われるアンケート調査では、「英語をがんばって勉強していると思うか」といった質問項目があります。これはintended effort(主観的な努力)と呼ばれているのですが、achievement(学習成果)との相関関係は弱いことがわかってきています(Al-Hoorie, 2018)。
要するに、「やる気」という気持ちだけではなく、実際の行動が伴っていないと学習成果に結びつかないということです。そこで、やる気と行動をセットで考える「エンゲージメント」という概念が生まれたんです。
「痩せるためにビールを控えなきゃいけない」と思っていても、「ビールを飲まない」、「運動する」、「食事を節制する」といった実際のアクションが伴わないと、なかなかダイエットの成果を出せないことと同じですね(すみません,自戒の念を込めています……)。
―生徒のエンゲージメントが高いか低いかは、どのように評価することができるでしょうか?
エンゲージメントは、「行動」、「認知」、「感情」という三つの側面から捉えることで、学習者がどのように学習活動に取り組んでいるのかがわかる、と言われています。
教師は、「一生懸命取り組んでいる」、「長く取り組んでいる」、「積極的に発言しながら取り組んでいる」など、目に見える行動的エンゲージメントを見て、「この生徒はやる気がある」と判断しがちです。ところが、ペアワークやグループワークなどでよく発言している生徒も、実際には全然関係のないおしゃべりをしていたりして、学習活動そのものにあまり興味を持っていないことがあります。
ですから、行動、認知、感情など、いろいろな側面から包括的に「やる気」を考えなければならない、ということです。
(資料提供:廣森教授)
―学習者の「やる気」を評価するためには、目に見える行動だけではなく、活動に取り組んでいるときの思考や気持ちにも注意を向ける必要があるのですね。
そうですね。言語習得のための活動の場合、ただ単に「発言している」という行動だけでやる気を評価することはなかなか難しいだろうと思います。
私も最近、学生がどのようにペアワークに取り組んでいるかを三つの側面(行動、認知、感情)から調べる研究(Hiromori, 2021)をしています。
collaborative writing(ペアの相手と共同で文章を書く)のタスクをしてもらうのですが、発話数もターン・テイキング数(話し手と聞き手の交代)も多いペアの発話内容を分析してみると、タスクの質を高めようとしていないことがわかりました。
絵に描いてあること(ある家族が食事をしているレストランに蚊が入ってきてしまった)を説明する文章を書くタスクなのですが、例えば、とにかく長い文章を書こうとして「There is a family. じゃなくて、There is a mother. There is a father. っていうふうにしよう」と話していたペアがいました。「蚊」を英語で何て言うのか、という点にこだわってしまったペアは、「モスキー(正しくはmosquito)」ということばがたった15〜20分の間に60回くらい出てきました。
外から見ると、一見、英語で一生懸命話しているように見えるのですが、実際の会話内容を見てみると、認知的に浅く、学習が深まるようなやりとりになっていなかったんです。
ですから、やはり学習者の取り組みは包括的に見たほうがよいと思います。エンゲージメントの高さと英語力の関係は、タスクのパフォーマンス(例:文のボリュームや質など)など、いろいろな観点から評価して調べていますが、英語力が上がるかどうかを調べるためには、ある程度長期的な研究をする必要がありますね。
今回は、やる気がどのように英語学習に影響するのか、そして、どのような学習方法がやる気を高めたり維持したりするのか、という「やる気」と学習成果や学習方法の関係についてお話を伺いました。
英語を日常生活で使う必要がない日本では、「授業についていくため」、「入学試験に合格するため」、「良い会社に就職するため」といった外発的な動機で英語を学ぶことが一般的です。
それが強いモチベーションになって一生懸命努力をした結果、高い英語力を身につけたり、自信がついて英語学習に喜びや楽しさを感じ始めたりする人もいるため、外発的動機づけが英語学習にとって良くない、ということは一概に言えません。
しかし、ことばを実際に使えるようになるまでに長い時間がかかることを考えると、試験、進学、就職といった目的を達成したあとも「学びたい」という気持ちや行動を維持できることが重要です。
そこで、英語学習そのものが楽しいと思えるような内発的動機づけも大切になってきます。そのためには、「自分で決めている」(自律性)、「自分はやればできる」(有能感)、「みんなと良い関係をつくれている」(関係性)という実感をもてるような学習環境をつくることが役立つことがわかりました。
やる気が低い学習者にとっては三つ目の「関係性」が特に重要であり、教師だけではなく、ほかの学習者からほめられたり励まされたり、やる気の高い人の行動を見たりすることから良い影響を受ける、という研究結果は特に興味深いものです。
OECD(2022)が世界各国のクラス規模(2020年度)を調査したデータによると、日本(小学校:27人、中学校:32人)は各国の平均(小学校:20人、中学校:23人)を超えており、クラスの生徒人数が比較的多い国の一つです。近年、このような状況は日本の教育課題として議論されてきており、2021年には、法改正によって、小学校の学級規模の標準を2025年までに従来の40人から35人に引き下げることが決まりました。少人数学級とICT活用の両輪で「個別最適な学びと協働的な学び」を実現しようとする計画です(文部科学省, 2022)。
一人の教師が大人数の生徒を相手に一斉授業を行う教育から、一人ひとりの個人差に合わせた学習、生徒同士が学び合う学習を重視する教育が強く求められるようになったことが伺えます。
これまでは、「やる気が出ない」、「やる気が低い」といった課題は本人の学習方法や教師の指導方法を変えることで解決しようとする考え方が主流でしたが、さまざまな個人差のある生徒たち全員に一人の教師が影響を与えようとすることには限界があります。もし、やる気の高い生徒がほかの生徒に良い影響を与えられる仕組みが明らかになれば、生徒たちの個人差をポジティブに捉えてうまく活用し、あらゆる教師があらゆる教室でやる気が高まる授業を実現することができるのではないでしょうか。
その意味で、廣森教授が取り組む「やる気の伝染」に関する研究は、英語教育に限らず、教師にとって現実的な解決策を提案してくれる可能性が秘められており、今後ますます注目が高まると考えられます。
(※5)足場かけ(scaffolding)とは、学習者が自力では難しい目標に到達し、より高い目標に到達する力を身につけられるように、教師やほかの学習者などが一時的に支援すること。指導や学習活動、教材、ツールの工夫など、さまざまな方法がある。
【取材協力】
廣森 友人 教授(明治大学 国際日本学部・国際日本学研究科)
<プロフィール>
専門は、応用言語学、心理言語学、第二言語習得研究。言語習得に影響を与える学習者要因(学習動機、学習方略、学習スタイルなど)について調査・分析し、より効果的な第二言語(外国語)学習のあり方について具体的な示唆を得ることを目標として研究を行う。北海道大学 大学院国際広報メディア研究科にて博士課程を修了。日本学術振興会 特別研究員(DC)、愛媛大学 英語教育センター 准教授、立命館大学 経営学部 准教授、明治大学国際日本学部 准教授を経て2017年より現職。そのほか、トロント大学 オンタリオ教育研究所 客員研究員(2019年〜2020年)、レディング大学 心理学・臨床言語科学部 客員研究員(2020年〜2021年)、全国英語教育学会 事務局長(2011年〜2014年)、関東甲信越英語教育学会 副会長(2022年〜)。
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