日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2023.05.18

お互いを「知る」だけに留まらない協働を意識した国際交流の紹介

お互いを「知る」だけに留まらない協働を意識した国際交流の紹介

公立小学校において2020年より英語が教科として導入され始めてから早3年。大学受験改革の影響もあり、小学校から中学校、高校へと進学するにつれて英語で読む・書く・話す・聞くという「スキル」面の上達が望まれています。これらのスキルを育てるには、小学校の英語の授業で英語に触れる機会を作るだけではなく、子どもたち自らが英語に触れたいと思う気持ちや、自分で英語を学びたいという気持ち、そして教室外でも英語に触れようとする姿勢を育てることが重要です。

そこで今回は、子どもたちの英語のスキルを育てる上で重要な役割を果たしていると言われる「異文化への興味・関心」という大切な土台について考えてみたいと思います。小学生と外国人がお互いを「知る」だけに留まらず、協働学習によって多様性に気づき共感し合える国際交流の実践例を2つ取り上げます。これらの実践報告の中には、子どもたちが自律して英語を学習できるようになるための情意面の成長に関するヒントがたくさん散りばめられていることでしょう。

 

小学生の国際理解・異文化理解を促進する異文化交流の実践例

実践例その1:国際交流基金関西国際センターの夏休み子どもワークショップ(今井, 品川 & 野畑, 2009)

最初にご紹介するのは、国際交流基金関西国際センター(以下KC)が毎年開催しているKC研修参加者と地域の小学生を対象とした国際交流ワークショップです。KCの研修参加者は主に日本語研修コースで日本語を学習中の研究者や大学院生で、世界13の国々から来た研修生が参加しました。小学生には、近隣の小学校や公民館、図書館などへチラシを配布して参加者を募集したそうです。最終的に、近隣の11校の5、6年生が23名参加してくれました。

交流会の運営は、KCの日本語教育専門員と地域の小学校の教員が連携して行いました。こうすることで、国際交流の実践をこのワークショップ限りとせず、学校での国際交流や英語教育に繋げられると考えたようです。ここでは、ワークショップ全体の概要とその意図、そして交流会後に行われたアンケート結果から、子供たちの感想をご紹介したいと思います。

 

<ワークショップ全体の概要>

オープニング 目標・スケジュール確認・文字クイズ

▼活動1:アイスブレイク

ひっつきゲーム
・司会が言う数字の人数を素早く集めて座る
・小学生と研修生の混合グループになることが条件

名前文字集め競争
・制限時間内に異なる言語の文字で自分の名前を書いてもらい、
できるだけ多く集める
・活動2のグループメンバーで数をシェアし、多さを競う

 

▼活動2: 知り合う

文字を書いてみる
・自分の名前をグループメンバーの母語の文字で書いてみる

どんな人かな?
・趣味と好きな漢字をシートに書き、見せ合いながら趣味・日本語の
学習経験について紹介する
・持参した文字表や文字練習帳などを見せ合う

こんな時なんて言う?
・「サッカーゴールを決めた瞬間」「びっくり箱を開けた瞬間」の2つ
絵を見て、それぞれ自分ならどんな発言をするかシートに書き紹介

 

▼活動3:一緒に作る

どんなイメージ?
・「夏」と聞いて思い浮かぶ単語をシートに6つ書き、結果を共有

砂で文字や絵を描こう
・共有した夏のイメージを、色砂を使い作品に仕上げる
・1人が「夏」をその人の母語で書く
・順番に夏のイメージの文字や絵を足していくが、他の人が書いた文字や絵に
書き足すイメージで行う

 

▼振り返り

どんなのできた?
・各グループで作った作品を鑑賞・紹介

仲間と一緒にしたこと
・ワークショップ中撮影された写真のスライドショーをみんなで鑑賞し活動を
振り返る
・スライドショーには各活動のポイントを思い出させるような短いフレーズが
載せられている

振り返りシート・アンケート記入
・ワークショップ前後の自分の気持ちの変化・発見について書きアンケートを
記入する

 

ワークショップ全体の流れの中で最も重要とされるのが活動3の「一緒に作る」です。この活動でしっかりと研修参加者による協働と創造が行われるよう、ここに至るまでの過程での活動が工夫されているのがわかります。

例えば、このワークショップ自体のテーマを「文字の多様性」とし、参加者がお互いについて興味を持ち、国籍や生まれた国、年齢が異なっていても共通点を見つけることの楽しさを見出すことや、みんなで1つのゴールに向かって協力することを体験できるような内容に設定してあります。

 

<それぞれの活動の意図>

活動1〜活動3で行うアクティビティにはそれぞれ意図がしっかりと設定されています。

表|活動1〜活動3で行うアクティビティの意図

ワークショップの醍醐味である活動3の活動3-2 をもう少し詳しく見てみましょう。

 

写真|「活動3-2 砂で文字や絵を描こう」で作成されたもの

「活動3-2 砂で文字や絵を描こう」で作成されたもの

 

小学生Aさんがインドのヒンドゥー語で文字を書いて欲しいとリクエスト。

インド人研修生がヒンドゥー語で「夏」と書く

小学生Bさんが「なみ」と書く

中国人研修生が波間に見える魚を中国語で書く

小学生Cさんが「つり」と書き、「つり」の「り」をそのまま伸ばして魚に繋げた(Cさんは釣りが好きだと趣味の共有の中で事前に話していた)

クロアチア人研修生が「太陽」とクロアチア語で書く

小学生Dさんが寄せる浜の絵と「はま」という文字を書くが、研修生に意味が通じなかったため小学生Bさんがジェスチャーをしながら漢字を書いて意味を説明した

小学生Aさんが花火を書いて完成

 

アイスブレイクをきっかけにグループの関係性がどのように出来上がっているかが異なっていたため、この活動の進め方は各グループで異なっていました。上記の例で紹介したのは複数あったグループのうちの1つですが、最初に何から描きはじめればいいかわからないと言う小学生に対し「活動2-2で好きといった漢字を紹介すれば?」と声をかけている研修生の姿や、グループで協力して楽しそうに色砂の作品を作る姿が印象的だったようです。

 

<交流後のアンケート結果>

交流会実践後のアンケートの結果には、子供達の国際交流に関する興味深い思いや感想が表れていたようです。例えば「国が違っても考え方が同じなのが嬉しかったし、いろんな表現があって面白かった。」「世界にはいろんな文字があって面白いと思った。日本語と似ている文字も発見した。」という感想から、多様性について発見しながらも、共通点を発見し喜びとして受け止めたことがわかります。

また、「外国のことだけでなく、他の小学校の友達はどんなことが好きなのかがわかった。」という感想からは外国対日本の二項対立で考えずに、世界と日本の中の個の多様性も感じ取っていたことがわかったようです。

 

実践例その2:小学生と津田塾大学交換留学生の国際交流(白土, 関, 2020)

続いて紹介するのは、白土 & 関(2020)が行った津田塾大学に交換留学生として留学している大学生と東京都小平市の小学校6年生の国際交流授業についてです。白土&関(2020)は、2011年から2019年7月までに16回、交換留学生と小学生の交流授業を行ってきました。

この交流授業に参加したのは韓国・台湾・オーストラリア・フィリピン・ドイツ・フランスからの大学生合計12人と、小平市の小学校6年生2クラスの70人です。小学校6年生の英語の授業に交換留学生を招き、教室内のみの活動から教室の外の世界と結びつけることによって、英語をコミュニケーションの道具として認識し、子供たちの動機付けが高まるのではないかと予想しました。

ここでは、2019年7月に行われた交流授業の概要と授業の目的、そして授業後に行われたアンケートによる子供たちの声を紹介していきます。

 

<交流授業の目的>

子供たちの目的は主に以下の6つが設定されています。

① 班で協力して調べ学習をし、「日本文化と小平市のおすすめ施設を紹介しよう!」をテーマに英語で交換留学生に発表をする。

② 英語を使う必要性を交換留学生に発表を聞いてもらう状況から理解し、言語と現実世界のつながりを感じる。

③ 交換留学生の「出身地紹介」を英語で聞き、世界のいろいろな地域の人の文化や暮らしを身近に感じる。

④ 進んで交換留学生と交流をし、コミュニケーションの楽しさを実感する。

⑤ いろいろな国の交換留学生が日本語を学習していることを知る。

 

<交流授業の概要>

参加した人:東京都小平市の6年生の2クラス70人、韓国、台湾、オーストラリア、フィリピン、ドイツ、フランス出身の交換留学生12人

表|交流授業の概要

1の自己紹介ではまず、交換留学生が一人一人、英語でクラス全体に自己紹介をしました。この時、なるべく子供たちが普段の英語の授業で習った英語表現を使って自己紹介をするよう、留学生たちには事前に通知しておいたようです。また、同じ内容で留学生の母語、日本語を使って自己紹介をし、子供たちの理解を深めました。子供たちは自分たちの理解できる英語が聞こえると目を輝かせ、興味を持って留学生の自己紹介を聞いていたそうです。

2の発表では、まず子供たちは5、6人の班に分かれ交換留学生が各班に1人配置されました。1人ずつ交換留学生に向けて英語で自己紹介をすることから始めます。

子供たちはこの交流授業が行われるまでの1学期間で「留学生に日本の地域の良さを発表しよう」という調べ学習を行ってきました。それまでの学習で調べたことや発表してきた地域のおすすめ情報の中から最も伝えたい内容を班で話し合って決定し、発表方法を工夫し、練習を積んできました。発表後は、交換留学生が日本語と英語で発表に関する質問をしたり感想を述べました。

交換留学生による発表は、7分間で自分の出身国や地域についての紹介をShow & Tell方式(実際に写真や絵、紹介するものの実物などを見せながら行う発表形式のこと)で行われました。パソコンを持参し、事前に作成したスライドショーを見せながら発表をする人や、スマホを使って写真を見せる人、大きくプリントアウトした写真を見せながら説明する人など、各自工夫して自己紹介をした結果、子供たちは熱心に発表をきき、日本語も交えながら知っている英語で質問をしました。

3の外国語の挨拶紹介では、子供たちが交換留学生の母語による挨拶の仕方を教えてもらいました。交換留学生たちが母語と日本語でゆっくりと発言したり、紙に書いたりジェスチャーを使ったりして子供たちが理解できるように説明してくれたので、子供たちは異なる言語の音を純粋に楽しみ、慣れない発音を一生懸命何度も発音する姿が印象的だったようです。また、文字1つ1つの形についての説明を熱心に聞き、紙に書いてみたそうです。

上記の活動後はまとめとしてクラス全体で交流授業の感想を発表し、共有しました。その後、30分間の給食に交換留学生が参加し、交流授業よりも和やかでリラックスした雰囲気の中、英語や日本語、交換留学生の母語を用いながら会話している様子があちこちで見られました。

 

<交流後のアンケート結果>

交流後のアンケート調査から、交流会によって子供達が特に外国の言語や文化に強い興味を抱いたことがわかりました。例えば「英語だけではなく韓国語での挨拶に興味を持った。「英語だけではなく韓国語や中国語も習えてよかった。」「色々な外国語でありがとうなどのあいさつを知ることができてよかった。」「留学生の人が教えてくれた言葉にそれぞれルーツがあって面白かった。」「英語の時間は英語しか習わないので、もっといろんな言語を覚えたい。」など、英語以外の国の言語にも興味を持っていることがわかる感想が多くあります。

また、「色々な外国語を覚えてもっと外国のことを知りたい。」「韓国と日本は似ている文化もあるけど、言葉が違った。」「他の国のことをもっと知りたい。」など、言語だけでなく文化自体にも興味を抱き始めている感想も目立ったようです。

 

まとめ

今回のコラムでは、「相手について知るだけに止まらない協働を意識した国際交流」をテーマに、日本の小学校で実践された国際交流活動を2つほど紹介しました。いかがでしたでしょうか?

2つの国際交流実践後の子供達の感想から、外国語を学習する際はその国の文化、言語、そして多様な考え方への理解を深めながら取り組んでいくべきだということがわかります。そして、「外国語=英語」という固定概念を取り払い、英語は子供たちの異文化意識や国際感覚を養うためのツールであるという考え方にシフトしていくことが求められていると言えるでしょう。

これからの英語教育においては、英語を使って様々な国の出身の人とコミュニケーションを取ることで、子供たちの興味や視野が英語圏以外の国の言語や文化に広がっていくような新しくも理想的な国際交流活動への挑戦が求められていくのではないでしょうか。

 

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