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2021.03.29

小学校英語教育における「主体的で対話的な深い学び」とは

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小学校英語教育における「主体的で対話的な深い学び」とは

昨年2020年度から、それまで施行されていた新学習指導要領の移行期間が終了し、本格始動となりました。前回の学習指導要領からの重要な変更点として、「主体的で対話的な深い学び」が追加されたことが挙げられます。
各教科での実践が目標とされているこの「主体的で対話的な深い学び」ですが、5、6年生での教科化、3、4年生での英語活動導入が始まっている小学校英語科ではどのように実践されているのでしょうか。

最初に「主体的で対話的な深い学び」とはどういう学びを指すのか、定義と方法を確認しつつ、日本の公立の小学校英語科で実際に実施された学び、活動の例を低学年、中学年、高学年と学年別にご紹介します。
また、具体的な実践例を見ることで、日本の公立小学校の英語教育について知る機会になればと思います。

【目次】

 

「主体的で対話的な深い学び」とは何か

「主体的で対話的な深い学び」とはどのような学びのことを指すのでしょうか。

河井 (2019)によると、「子供たちに対して、ある事柄に関する知識の伝達のみにとどまらず、その知識を得ることで社会とどのようにつながることができるかをより意識した指導」のことです。子どもたち自身が社会の中で課題を発見し、様々な課題に遭遇した時にすでに学習した知識と技能を活用し、問題を解決する力を養うための学び、と言えますね。

算数の授業を例に考えてみましょう。教員が前に立って公式を使った問題の解き方の手順を児童に教える。子どもたちは、その公式を使って、与えられたプリント問題をひたすら解いてスピードを競う。このような授業を、従来型の授業とします。

一方、算数の授業における「主体的で対話的な深い学び」とは、

・これまでに習った問題の解き方を思い出して今回解く問題の解き方を推測し見通しを立ててみる。

・これまでに習った解き方で応用できそうであれば、試してみる。

・試してみて課題にぶつかったら、その都度先生や友だちと話し合いどうすればいいのか解決策を見つける。

このようなプロセスを伴う授業であると言えます。

このような性格を持つ「主体的で対話的な深い学び」ですが、昨年2020年度から全面実施となった3、4年での外国語活動と5、6年での外国語の授業においては、一体どのようにして児童を主体的に考えさせる協働学習へと導いているのでしょうか。

ここからは、日本の公立小学校の英語活動や英語の授業における「主体的で対話的な深い学び」を意識した授業の実践例を学年別にご紹介します。

 

低学年の「主体的で対話的な深い学び」の実践例

対象学年:第二学年

学習のテーマ:「生き物大好き」<昆虫・花>

準備する物:絵カード、トランプサイズのカードを一人2枚ずつ

使う表現:

様々な動物・昆虫の英単語

A: What animal do you like?  B: I like dogs.  A: Dogs? Me, too./ I see.

A: What animal do you like?  B: I like pandas.  A: Pandas? They are cute./ Oh, nice.

 

●活動のねらい

子どもは自己紹介の時に、自分の好きな物を嬉しそうに伝えようとする。また、友だちとのやりとりの中で友だちのことを知ることができたときに喜びを味わおうとする。ゆえに、低学年では子どもたちに身近な食べ物や動物の英語での言い方を楽しいゲームや活動の中で知り、慣れ親しんだ自己表現の場を設けるようにする。

<1、2時間目>

かるたとり、神経衰弱、ハート見つけなどのゲームの中で動物や昆虫の名前の単語に慣れ親しむ。

<3時間目>

・ALTと担任のロールモデルを見せてから、 What animal do you like? I like 〇〇 で好きな動物を尋ねたり答えたりする表現を練習する。

・好きな動物や昆虫を三つ決めて、その絵をカードに描く(友だちにはまだ秘密にしておく)。

<4時間目>

・制作したカードを持って教室を歩き回り、練習した表現を用いて友だちに好きな動物を聞いたり、答えたりして3枚のカードそれぞれを交換する。

・相手が質問に答えてくれた時の相槌の仕方を先に全員で確認しておき、実際にやってみる。

・活動の前に、全員でどの動物が人気か予想しても面白い。また、少数派の意見も大切にし、英語名を知らなければみんなで確認すると、とても盛り上がる。

 

●評価について

カード交換の活動の際に、自ら友だちに積極的に話しかけようとする態度や、相手の応答に対して反応をしようとしているか、といった姿勢などが評価のポイントになる。(大門, 2017)

 

中学年の「主体的で対話的な深い学び」の実践例

対象学年:第四学年

学習のテーマ:「わたしはだれでしょう?」

準備する物:絵カード、ワークシート、地図、画用紙

使用する表現:

動物や昆虫の英単語

I have ○○. (例: I have big eyes.)/ I live in ○○. (例: I live in a jungle.)/ I’m ○○ (例: I’m brown.)/ I like ○○.(例: I like swinging from the tree.)

動物の絵カードのサンプル画像

※動物の絵カードのサンプル

 

●活動のねらい

これまでに習った単語を答えにするクイズを自分で作成して、非言語であるジェスチャーや絵も用いて相手にあきらめずに伝えようとする姿勢を育てる。また、必死になって答えを見つけるやりとりの中で、様々な手段を使って分かりやすい言い方を工夫し、コミュニケーションすること自体を楽しむ。

<1時間目>

これまでに習った単語(動物・昆虫)に慣れ親しむゲーム (発音練習、かるた取りなど)

<2時間目>

問題作りに必要な表現に慣れ親しむ(3ヒントクイズ、表現の練習など)

<3時間目>

問題作り(ワークシートを使い、ペアで練習)

<4時間目>

クイズ大会をする((クラスで友だちと問題を出し合う活動)

 

●ワークシートの例

ワークシートのサンプル画像

 

●クイズ大会の進め方

①回転ずし型:半分のチームに分かれて出題者と回答者になり、時間を計って1対1でいっせいにずれる方法。

②コーナー型:二人組のペアになるコーナーを設けて答える人が自由に動きまわる。お互いに助け合えるので苦手意識のある子への不安軽減にもなる。

③インタビューゲーム型:一人で自由に相手を探して問題を出し合う。そのたびにシールを貼ると意欲がアップするし、評価の参考にもなる。(大門, 2017)

 

高学年の「主体的で対話的な深い学び」の実践例

対象学年;第六学年

学習のテーマ:「将来の夢を伝えよう」

準備する物;夢カード(将来の夢に関する4つのヒントが絵で描かれている)

 

●活動のねらい

自分の得意なことや好きなことを憧れの職業のヒントとして絵に描き相手に伝え、そのヒントを手掛かりに相手は夢を予想したり、お互いに伝え合ったりする。英語の会話によっても友だちへの関心を深められると気付かせ、やりとりを楽しませる。

※現代の子どもたちに将来の夢を聞いた時に、児童に好きなことや憧れていることがあっても、明確な職業名が存在しない場合が予想できる。その場合のフォローアップの仕方も考えておくとよい。例えば、職業名がないなら自分が知っている英単語を組み合わせて、どういう職業なのか考えてみよう!など。

<1〜3時間目>

職業の英語表現や、将来の夢を尋ね合う英語表現に慣れ親しむ活動を行う。

<4時間目>

・3、4人のグループに分かれる。

・各自、夢カードを持つ。(夢カードにはヒントになる絵が描いてある。)

・1人ずつメンバーに順にヒントを出して自分の夢を予想してもらい、最後に自分の夢を I want to be 〇〇. という表現で伝える。

・メンバーはそれに対しての反応をできるとなおよい。(すでに習った I like it. や I see. など)

 

「主体的で対話的な深い学び」の実践例からわかる、これからの英語教育のかたち

低学年・中学年・高学年と学年別に「主体的で対話的な深い学び」の実践例の具体例をご紹介しました。

このような「主体的で対話的な深い学び」を実践していくうえで、どの学年でも共通して意識されていることは、以下の3つです。

・児童が意欲的に参加できるゲームやアクティビティを通して、その単元でのテーマである言語活動を行うのに必要な単語や表現に慣れ親しむこと。

・テーマである言語活動において、児童にとって身近で自らが英語を使って表現してみたいと思えるような内容を見極め活動に落とし込むこと。

・テーマである言語活動の中で、友だち同士で協働し、相手が伝えてくれた英語に対する反応の仕方や興味を示す姿勢も忘れずに指導すること。

これらを強く意識して行う授業実践の中で、教員はどのような役割を担うのでしょうか。まずは、児童が既習の表現や単語を使って言いたいことを言えるようにサポートすること、そして、「反応をしたいけれどどう言えばいいかわからない」という時に児童が自分で助けを求める姿勢を育成すること、と言えるでしょう。

また、児童が言いたいことを英語で言えて相手が反応を示してくれた時の喜びを感じられるよう、教員はファシリテーターとしての役割をより一層意識して行う必要があります。

児童が授業中に身につけた英語の知識や技能を実際の日常生活で使ってみようとする姿勢へとつながる指導を目指し、現場の先生たちも日々奮闘されています。2021年度がもうすぐ始まろうとしています。

今後の小学校英語教育でこの「主体的で対話的な深い学び」がより実践・研究されていけば、子どもたちが「自分たちで課題を見つけ、その解決に向けて協働し行動する力」が育っていくような、素晴らしい英語の授業がなされると期待できます。

 

■関連記事

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参考文献

金森, 本多, 泉, (2017)『主体的な学びをめざす小学校英語教育ー教科化からの新しい展開ー』

 

河井亨. (2019). アクティブラーニングおよび主体的・対話的で深い学びと学生の成長のあいだにはどのような関係があるのか. 社会システム研究, (38), 1-27.

 

主体的・対話的な深い学びへ(n.d.). Retrived Feburary 16, 2021 From

https://berd.benesse.jp/up_images/magazine/VIEW21_kyo_2019_02_toku_01.pdf

 

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編(2017) Retrieved February 15, 2021 From

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_011.pdf

 

東野裕子. (2020). 公立小学校における英語コミュニケーション能力育成のためのプロジェクト型言語教育の活用: 英語絵本による 「主体的・対話的で深い学び」 の可視化への試み. 日本体育大学紀要 (Bull. of Nippon Sport Sci. Univ.), 49, 1043-1060. 2017年

 

山口陽子. (2018). < 教育現場からの研究ノート> 主体的・対話的な授業づくりの実践. 教職教育研究: 教職教育研究センター紀要, (23), 97-101.

 

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