日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2018.12.06

「小さいころから英語を学習すると、日本語も英語も中途半端になってしまう」というのは本当ですか?

「小さいころから英語を学習すると、日本語も英語も中途半端になってしまう」というのは本当ですか?

■今回の悩み・疑問

「小さいころから英語を学習すると、日本語も英語も中途半端になってしまうので良くない」という意見を聞くことがあります。本当なのでしょうか?

■回答

子どもが言語を身につける過程には、音声、語彙、文法、認知・思考などのさまざまな知識・能力の発達が関わり、それだけ細分化された多くの研究分野があります。そこで今回は、テーマをボキャブラリー(語彙数)に絞り、関連する先行研究を調べた結果を基に回答します。

結論

「小さいころから英語を学習すると、日本語も英語も中途半端になってしまうので良くない」という説は学術的根拠に欠け、語彙量に関しては、近年の研究でバイリンガルがモノリンガルと同等であるという結果が出ています。よって、学術的根拠に欠ける情報をもとに過剰な心配をし、小さいころからの外国語教育やバイリンガル環境をやめてしまう必要はありません。

先行研究の概要紹介

① 「小さいころから英語を学習すると、日本語も英語も中途半端になってしまうので良くない」という意見は、研究手法が未熟だった古い研究結果に基づく “myth”(神話)と言われており、最近の研究では異なる結果が発表されています。

② 1920年代〜1960年代には、バイリンガルがモノリンガルより劣っていることを示す研究結果が多く発表されました。しかしながら、ドイツやアメリカにおける国粋主義(自国の国民や文化・伝統がほかよりも優れていると考える思想)や移民同化主義などの政治的背景の影響を受けた研究者が多く、学術的な信頼性が疑問視されている研究の影響が未だに残っているという側面もあります。

③ 子どものバイリンガルに関する論文や著書を数多く発表している言語学者ピアソンは、古い研究手法を見直した研究者の一人です。発語できる語彙と聞いてわかる語彙を区別した彼女の研究結果では、バイリンガルが発語できる語彙量はモノリンガルより少なかったものの(しかしながら統計的に意味のある差ではない)、聞いてわかる語彙量はモノリンガルと同等でした。

④ 古い先行研究では、バイリンガルの二言語のうち、いずれか一つのみの語彙量がモノリンガルと比較され、言語発達の遅れと結びつけられていました。この比較手法を疑問視したピアソンは、バイリンガルの二言語を合計した語彙量でモノリンガルと比較するべきだと考えました。結果、バイリンガルとモノリンガルの語彙量は同等でした。

⑤ さらに別の研究者による最近の研究では、バイリンガルが語彙を理解する正確さもスピードもモノリンガルと同等という結果が出ています。

 

本ページでの回答は、IBS発表論文を要約したものです。
詳しくお読みになりたい方は下記より論文をダウンロードください。

乳幼児期の英語環境教育は日本語の語彙発達を遅らせるか?
−−近年の先行研究からのグローバルスタンダードにおける考察−−

佐藤 有里
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所

Does Early Bilingualism Delay the Lexical Development of Both Languages in Bilingual Infants and Toddlers Compared to Monolinguals?
-Discussion in the Global Standard Based on Review of the Current Studies-

Yuri Sato
World Family Institute of Bilingual Science (IBS)

 

論文全文は下記よりダウンロードください。

「乳幼児期の英語環境教育は日本語の語彙発達を遅らせるか?
−−近年の先行研究からのグローバルスタンダードにおける考察−−」
IBS_article_1.pdf
PDFファイル1.8MB

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