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ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

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2019.07.31

幼児はどのような映像で単語を学習するのか?

幼児はどのような映像で単語を学習するのか?

論文タイトル:
Third-Party Social Interaction and Word Learning from Video
三者間の社会的相互作用と映像による単語学習

著者:
Katherine O’Doherty, Georgene L. Troseth, Priya M. Shimpi, Elizabeth Goldenberg, Nameera Akhtar, and Megan M. Saylor (2011)
キャサリン・オドハーティ、ジョージン・L・トロセス、プリヤ・M・シンピ、エリザベス・ゴールデンバーグ、ナミラ・アフタル、ミーガン・M・セイラー(2011)

ジャーナル:Child Development 82(3): 902-915
アクセス:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1467-8624.2011.01579.x

要約:Paul Jacobs
翻訳:佐藤有里

 

はじめに

3歳以上の子どもが映像や関連メディアによって学習できるということは、これまでの研究で一貫して示されてきました(Anderson et al. 2001)。しかしながら、3歳未満の子どもに関しては、さまざまな研究結果が発表されています(Strouse and Troseth 2014; Krcmar 2014)。

Roseberryら(2014)は、2歳〜2歳半の幼児が講師とのビデオチャットでも対面でのやりとりと同等に新しい単語をよく学習できることを明らかにしましたが、録画映像(対面での単語学習と同じやりとりを事前に録画したもの)による学習効果は見られないという結果も示しました[IBS論文要約参照]。これは、幼児は録画映像からは言語を学習できないことを意味するのでしょうか?それとも、幼児が言語を学習できる特定の条件があるのでしょうか?

この問いに対する答えは、O’Dohertyら(2011)の研究によって考察されており、登場人物が子どもに対して直接話しかける録画映像ではなく、登場人物たち同士が互いに話しかけて関わり合う様子を画面上で見せる録画映像であれば、幼児は映像から学習することができる、という仮説が立てられました。どのような映像内容であれば、幼児の第二言語学習を促進することができるのでしょうか?別の種類よりも効果的なものがあるのでしょうか?以下に要約したO’Dohertyら(2011)の研究では、この問いについても検討されています。

 

研究方法について

この研究では、調査1、調査2A、調査2Bという3種類の関連調査の結果が提示されています。各調査では、新しい単語を学ぶ(初めて見る物の名称を覚える)ことができるかどうかを確かめるため、子どもたちに以下の4種類のうちいずれかの条件下で学習させました。

4種類の学習条件
1. 対面で話しかけられる:
目の前の大人と一対一で実際にやりとりし、相手から話しかけられる。
2. 対面で大人同士のやりとりを見る:
目の前の大人2人が相互にやりとりする様子を実際に見る。大人たちは同じ部屋にいるが、彼らから話しかけられることはない。
3. 映像内の登場人物に話しかけられる:
録画映像内の大人から画面越しに話しかけられる。
4. 映像内の登場人物同士のやりとりを見る:
録画映像内の大人2人が相互にやりとりする様子を画面で見る。彼らから画面越しに話しかけられることはない。

3種類の調査
調査1には、生後27〜31カ月の子ども64人が参加し、上記4種類の学習条件のいずれかで学ぶ4つのグループに分けられました。子どもたちは、これから行うことに慣れるためのウォームアップ活動から始め、初めて目にする4種類の物を手に取ったり触ったりしますが、この時点では物の名称は教えられません。次に、「命名(事物に名称を付ける行為)」の学習が始まり、先ほど見せられた4種類の物について、それぞれ異なる動作と共に名称を教えられます。このとき、子どもたちは物に触れることができず、観察のみによって情報を吸収するように意図されています。そして最後に、子どもたちはテスト段階に入り、学習効果について評価されます。講師は、子どもとテーブルを挟んで対面で座り、テーブル上に4種類の物を並べ、子どもの目を見ながら「どれが〜(先ほど教えた名称)ですか?」と質問します。もし子どもが正しい物を選ぶことができれば、その名称を覚えて新しい単語を学習していたことになります。

調査2Aには、調査1と同じ年齢幅の子ども16人が参加しました。学習条件1(対面で話しかけられる)は、命名学習においてわずかな変更が行われました。調査1では、講師である大人が子どもに直接話しかけたものの、子どもには対象物を手に取らせませんでした。この調査2Aでは、対象物の名称を言ったあとに、子どもに対象物を数秒間手渡し、子どもとの関わり合いがより深くなるようにしました。

調査2Bには、調査1や調査2Aと同様の年齢幅の子ども16人が参加しました。この調査2Bで変更が行われた部分は、学習条件2(対面で大人同士のやりとりを見る)です。命名学習において、前の調査では、一人の大人が対象物の名称を言ったあとにもう一人の大人に対象物を手渡していましたが、この調査では手渡しませんでした。

 

研究結果について

調査1:

学習条件2(対面で大人同士のやりとりを見る)と学習条件4(映像内の登場人物同士のやりとりを見る)の幼児たちは学びましたが、対面または画面越しに話しかけられる学習条件1・3の幼児たちは学びませんでした。

調査2A:

命名後に対象物を渡すやりとりを加えた学習条件1(対面で話しかけられる)の幼児たちは、その名称を学ぶことができました。

調査2B:

調査1では、対面または画面越しで大人同士のやりとりを見る学習条件の幼児たちが最もよく学ぶことができましたが、命名後に対象物を渡すやりとりをなくした学習条件2(対面で大人同士のやりとりを見る)の幼児たちからは、その名称を学んだことを示す証拠は得られませんでした。

 

考察

 幼児に関しては、ほかの2人のやりとりを映像で見るほうが、相手に直接話しかけられるよりも単語学習が促進されます。

ほかの人々のやりとりを見た子どもたちのほうがよく学習できた理由は、3つの調査に共通していた要素である、応答的なやりとりにあります。応答的なやりとりは、一人がもう一人に対象物を手渡したときに表れ、社会的関わり合いを深めていました。そのため、調査1では、命名学習において対象物を手渡すやりとりが含まれる学習条件2(対面で大人同士のやりとりを見る)と学習条件4(映像内の登場人物同士のやりとりを見る)のみが幼児の単語学習を促進させていたのです。そして、調査2Aでは、対象物を子どもに手渡すやりとりを加える、という唯一の変更が行われたところ、その学習条件の子どもたちは単語を学習できたという結果が出ました。そして、調査2Bでは、逆に、対象物を渡すやりとりをなくしたところ、前調査では単語を学習できた学習条件であっても、この調査では単語学習に結び付きませんでした。

応答的なやりとりによる相互作用は、二者間で対象物の手渡しを行う様子を子どもが見たときに引き起こされ、子どもの脳内では、自分自身と関連付けることができる学習の機会として捉えられる可能性が高いと考えられています(Meltzoff 2005; Herold and Akhtar 2008)。子どもたちは、命名学習で見せられた物にはすでにウォームアップ段階で慣れ親しんでおり、そして、ウォームアップ段階で物を手渡されるという同じやりとりを経験しています。よって、第三者としてほかの2人のやりとりを見た子どもたちは、そのやりとりに自分の学習経験を思い出させる類似性があることに気づき、「自分と同じだ」という関連付けを行ったのです。これは、子どもたちが対象物やそれに関する他者とのやりとりに慣れ親しんでいて、それがテレビ画面で映像として再現された場合、子どもたちはその映像内に登場する単語や動作を実生活での学習状況と関連付け、映像というメディアからの学習を可能にしていたことを意味します。

「どのような種類の映像プログラムであれば幼児の第二言語学習を促進することができるか?」という上記の問いには、O’Dohertyら(2011)の研究結果に基づいて答えることができます。幼児向けの映像プログラムによって事物の名称を覚えるという命名学習の場合、登場人物が子どもに話しかける映像ではなく、2人の登場人物がやりとりをして関わり合う様子を示す映像が最も良い学習結果を促進させることは明らかです。

映像は、子どもが第三者として他者2人のやりとりを見ることができる内容であれば、家庭における幼児の言語学習に活用できる可能性があります。一般的にはさまざまな言語的・心理的・社会的要素が幼児期の第二言語習得に影響を与えると考えられています(Saville-Troike and Barto 2016)が、 他者と一緒に学習教材を視聴すること(Lytle, Garcia-Sierra, and Kuhl 2018)[IBS論文要約参照], 社会的随伴性のある他者とのやりとりを容易に実現できるビデオチャット技術を活用すること(Roseberry, Hirsh-Pasek, and Golinkoff 2014)[IBS論文要約参照]、言語学習教材によるインプットを繰り返すこと(Barr et al. 2007; Krcmar 2014)など、3歳未満の幼児の学習を同様に促進させる重要な要素はほかにもあります。

 

参考文献

Anderson, Daniel R., Aletha C. Huston, Kelly L. Schmitt, Deborah L. Linebarger, and John C. Wright. 2001. “Early Childhood Television Viewing and Adolescent Behavior: The Recontact Study.” Monographs of the Society for Research in Child Development 66 (1): 1–154. https://doi.org/10.1111/1540-5834.00120.

Barr, Rachel, Paul Muentener, Amaya Garcia, Melissa Fujimoto, and Verónica Chávez. 2007. “The Effect of Repetition on Imitation from Television during Infancy.” Developmental Psychobiology 49 (2): 196–207. https://doi.org/10.1002/dev.20208.

Herold, Katherine H., and Nameera Akhtar. 2008. “Imitative Learning from a Third-Party Interaction: Relations with Self-Recognition and Perspective-Taking.” Journal of Experimental Child Psycology 101 (2): 114–23. https://doi.org/10.1016/j.jecp.2008.05.004.Imitative.

Krcmar, Marina. 2014. “Can Infants and Toddlers Learn Words from Repeat Exposure to an Infant Directed DVD?” Journal of Broadcasting and Electronic Media 58 (2): 196–214. https://doi.org/10.1080/08838151.2014.906429.

Lytle, Sarah Roseberry, Adrian Garcia-Sierra, and Patricia K. Kuhl. 2018. “Two Are Better than One: Infant Language Learning from Video Improves in the Presence of Peers.” Proceedings of the National Academy of Sciences 115 (40): 9859–66. https://doi.org/10.1073/pnas.1611621115.

Meltzoff, Andrew N. 2005. “Imitation and Other Minds: The ‘like Me’ Hypothesis.” Perspectives on Imitation: Imitation, Human Development, and Culture 2 (1): 55–77. http://books.google.com/books?hl=en&lr=&id=WVNrDys7cyIC&oi=fnd&pg=PA55&dq=Imitation+and+Other+Minds:+The+%22Like+Me%22+Hypothesis&ots=adRY-FRfvi&sig=NNIKuoy-wAazK4enfeUkLI-jt5o.

Roseberry, Sarah, Kathy Hirsh-Pasek, and Roberta Michnick Golinkoff. 2014. “Skype Me! Socially Contingent Interactions Help Toddlers Learn Language.” Child Development 85 (3): 956–70. https://doi.org/10.1080/10810730902873927.Testing.

Saville-Troike, M, and K. Barto. 2016. Intoducing Second Language Acquisition (3rd Ed.). 3rd ed. New York: Cambridge University Press.

Strouse, Gabrielle A, and Georgene L Troseth. 2014. “Supporting Toddlers’ Transfer of Word Learning from Video.” Cognitive Development 30: 47–64.

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