ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2021.05.28

学校外における英語学習環境づくり

学校外における英語学習環境づくり

論文タイトル:

Learning English through out-of-school exposure. Which levels of language proficiency are attained and which types of input are important? (2020)

学校外で英語にふれる学習環境 ―英語力がどの程度向上し、どのようなインプットが重要なのか?―(2020)

著者:Vanessa De Wilde, Marc Brysbaert, and June Eyckmans

ジャーナル:Bilingualism: Language and Cognition 23(1): 171-185

アクセス:https://doi.org/10.1017/S1366728918001062

 

レビュー著者:Paul Jacobs

翻訳:Yuri Sato

 

まとめ

●学校で英語の授業を受け始める前の子どもであっても、日常生活で英語にふれることによって英語力を向上させることができた。

●日常生活での英語インプットとしては、ゲームやソーシャルメディア、会話で使われる英語が最も効果的だった。

●英語学習がうまくいくための重要な要因には、他者との関わり、インプットの量、英語に対する態度、個人差などがある。

 

世界中の多くの子どもたちにとって、潜在的な英語インプットの量は増加

1990年代から2000年代初頭の日本では、何か英語の作品を見ようと思ったら、近所のレンタルビデオ店に行くか、映画館に足を運ぶしかありませんでした。また、英語で音楽やニュースを聞くために、ラジオをつけて国際放送番組を探すこともありました。

しかし、2021年になった今、英語はどこにでもあります。自宅にいながら、画面をタップするだけで、英語の音楽や映画、テレビ番組が無限に流れます。YouTubeなどの動画サイトやソーシャルメディア、双方向型ゲームなどの普及により、学校外の日常生活で外国語にふれる機会は世界中で増えています。

今回ご紹介する研究の舞台となったベルギーでは、9歳から12歳の子どものほぼ全員(98.2%)が自宅でコンピュータを使っています。また、40%がスマートフォン、18%がタブレット端末を所有しています(De Wilde, Brysbaert, and Eyckmans 2020)。

日本の小学生のインターネット利用については、スマートフォン(37.6%)、タブレット端末(33.8%)、ゲーム機器(40.8%)を利用して、86.3%が定期的にインターネットにアクセスしている、という調査結果があります(内閣府 2020)。

このように、世界中の多くの子どもたちにとって、潜在的な英語インプットの量は増加しています。しかし、日常生活における言語インプットは、子どもたちが英語を第二言語として身につけるうえで役立つのかという疑問が残ります。以下の研究は、まさにこの疑問に答えようとするものです。

 

「非公式学習」と「公式学習」

日本における第二言語学習の多くは、特にモノリンガルの日本人家庭の子どもの場合、公式学習の環境で行われています。公式学習は、教師によって構成された授業です。

授業や活動の目的は学習そのものであり、明示的な知識につながる、という特徴があります。 一方、非公式学習は、教師ではなく友だちとの日常的な関わりの中で得られるもので、暗示的な知識につながります。

私たちは皆、この2つのタイプの学習を経験し、人生の中で何らかの恩恵を受けてきています。例えば、私たちは第一言語を非公式(自然)に習得し、数学を公式な学習の場で学んだことがあります。第二言語学習に関して言えば、公式学習と非公式学習どちらのタイプもあり、それぞれがお互いに補完し合うことができます(Ellis and Wulff 2014)。

 

研究内容

今回ご紹介する研究では、二つの重要な問いかけをしています。

1)子どもたちは、学校での授業を受けずに、学校外で英語にふれることによってどの程度の英語力を身につけることができるのか?

2)非公式な英語学習では、どのようなタイプの英語インプットが効果的なのか?

これらの質問に答えるために、研究者らはベルギーの北半分(フランダース地方)に住む780人の子どもたち(10歳~12歳)を集めました。学校の授業はオランダ語で行われており、英語の授業が正式に始まるのは中学1〜2年生(12〜13歳ごろ)からです。そのため、子どもたちは、学校で正式な英語教育を受けていませんが、学校外の環境で英語にふれている可能性はありました。

まず、子どもたちが学校外でどのように英語にふれていたかを確認するために、アンケート調査が実施されました。英語への接触方法や各方法で英語にふれている子どもの割合など、アンケート調査で得られた結果を以下に簡単にまとめました。

英語の音楽を聞く:97%(毎日)
英語のテレビ番組を第一言語の字幕なしで見る:80%(毎日)
英語のゲーム機で遊ぶ:75%(毎日)
英語で書かれたもの(本、漫画、雑誌)を読む:16%(毎日)
英語を話す人に会う:46% (ときどき)
英語を話す:45%(ある程度毎日)

この子どもたちは、ケンブリッジヤングラーナーズ英検(児童向けケンブリッジ英検)を用いて、リスニング力、リーディング力、ライティング力、スピーキング力が評価されました。また、理解語彙のテスト(PPVT-4)も実施されました。

そして、これらのテスト結果をもとに、言語能力を表す国際的な基準であるCEFR(Common European Framework Reference for Languages/ヨーロッパ言語共通参照枠)で子どもたちの英語力が評価されました。

言語レベルは、A1(基礎段階の言語使用者)〜C2(熟練した言語使用者)で評価されます。テストでの高得点は、子どもたちが4技能それぞれでCEFR A2レベルを達成していること、すなわち、身近で日常的な事柄に関してよく使われる文章を理解し、コミュニケーションをとれることを意味しています(“Global Scale – Table 1(CEFR 3.3): Common Reference Levels” 公表年不明)。

これに対し、日本では、学校で7~8年間英語を学んでも、高校卒業時にA2レベルの英語力を身につけている人はわずか50%にすぎません(参照:“各資格・検定試験とCEFRとの対照表” 2019; “令和元年度「英語教育実施状況調査」概要” 2020)。

 

英語力テストの結果:

●リスニング・テスト:平均15点(25点満点)
子どもたちの4分の1は、20点以上であり、CEFR A2レベルだった。

● リーディング&ライティング・テスト:平均21点(50点満点)
子どもたちの10%は40点以上であり、CEFR A2レベルだった。

● スピーキング・テスト:平均7点(20点満点)
子どもたちの14%は16点以上であり、CEFR A2レベルだった。

● 理解語彙テスト:平均78点(120点満点)

 

日常生活における英語インプットは英語テスト結果とどのような相関関係があるか?

テスト結果と最も強い相関関係があった英語インプットの種類は、1)「ゲーム」、2)「ソーシャルメディア」、3)「会話」で、聞いたり使ったりする英語でした。これら3つのインプットには、マルチモーダル(読む、聞くなど、2種類のインプット方法を複合的に組み合わせたもの)であること、他者との関わりがあること、本物のコミュニケーション手段である、という共通点があります。

これらの要素はいずれも、言語学習の成果を高めることがわかっています(Bisson et al. 2014; Kuhl 2007; Rama et al. 2012)。そのため、言語学習の初期段階においては特に、これら3つのインプットが、ユニモーダル(インプット方法が1種類)で他者との関わりがない「英語で書かれたものを読む」などのほかのインプットよりも、言語学習の効果を強化すると考えられるのです。マルチモーダル学習と社会的学習の利点については、関連記事「周囲のものや人との関わりを通じて子どもと同じように学ぶ」を参照してください。

ほかにも、インプットの量、子どもによって認識されている英語の価値、知能や言語学習の適性における違いなどが、テストのスコアに影響を与えた可能性があります。

この研究では、学校で正式な英語指導を受ける前であるにもかかわらず、10〜25%の子どもたちがCEFR A2レベルのコミュニケーション能力を身につけていたことがわかりました。この10〜25%という割合を見ると、この結果に感心しなくても当然かもしれません。

しかし、約25%の子どもたちはほとんど英語を学習しておらず、積極的に英語を学ぼうとしていたわけでも、一定の能力(A2レベル)を達成しようとしていたわけでもないことを忘れてはなりません。多くの子どもたちは、単に自分が楽しいと思う活動を行い、英語を使った他者との関わりや意味のやりとりを繰り返すことで、自分にとって役立つ英語を身につけていたのです。

そして、興味深いことに、テスト結果が上位25%の子どもの英語知識量は、学校で英語の授業を2年間受けた子どもに期待される量と一致していました。子どもたちは、この英語力を土台にして、今後の学校での公式学習を通じて英語力をさらに高めていくことができるのではないでしょうか(Ellis and Wulff 2014)。

冒頭で述べたように、日本では小学生の子どもたちがメディアやゲームにふれる機会が増えています。

これらを活用すれば、日本の家庭における英語環境づくりに役立てることができるでしょう。日常生活における非公式学習(暗示的学習)が最も効果的であるためには、それが続けやすいものである必要があり、子どものモチベーションに左右されます。

よって、子どもが英語で楽しめる話題やゲーム、グループ(英語を使ったり英語で遊んだりするコミュニティなど)を見つけることで、今回の研究で見られたような英語の非公式学習を促進することができると考えられます。

 

■関連記事

周囲のものや人との関わりを通じて子どもと同じように学ぶ

オンラインゲームが英語を使う場に

 

参考文献

Bisson, Marie-Josée, Walter J B van Heuven, Kathy Conklin, and Richard J Tunney. 2014. “The Role of Repeated Exposure to Multimodal Input in Incidental Acquisition of Foreign Language Vocabulary.” Language Learning 64 (4): 855–77.

https://doi.org/10.1111/lang.12085

 

Brown, Ronan, Rob Waring, and Sangrawee Donkaewbua. 2008. “Incidental Vocabulary Acquisition from Reading, Reading-While-Listening, and Listening to Stories.” Reading in a Foreign Language 20 (2): 136–63.

 

De Wilde, Vanessa, Marc Brysbaert, and June Eyckmans. 2020. “Learning English through Out-of-School Exposure. Which Levels of Language Proficiency Are Attained and Which Types of Input Are Important?” Bilingualism: Language and Cognition 23 (1): 171–85.

https://doi.org/10.1017/S1366728918001062

 

Ellis, Nick C., and Stefanie Wulff. 2014. “Usage-Based Approaches to SLA.” In Theories in Second Language Acquisition: An Introduction, edited by Bill VanPatten and Jessica Williams, 2nd ed., 75–93. Routledge.

 

“Global Scale – Table 1 (CEFR 3.3): Common Reference Levels.” n.d. Common European Framework of Reference for Languages (CEFR). Accessed March 19, 2021.

https://www.coe.int/en/web/common-european-framework-reference-languages/table-1-cefr-3.3-common-reference-levels-global-scale.

 

Kuhl, Patricia K. 2007. “Is Speech Learning ‘Gated’ by the Social Brain?” Developmental Science 10 (1): 110–20.

https://doi.org/10.1111/j.1467-7687.2007.00572.x

 

Milton, James. 2013. “Measuring the Contribution of Vocabulary Knowledge to Proficiency in the Four Skills.” In L2 Vocabulary Acquisition, Knowledge and Use New Perspectives on Assessment and Corpus Analysis, edited by Camilla Bardel, Christina Lindquist, and Batia Laufer, 57–78. Eurosla.

 

Rama, Paul S., Rebecca W. Black, Elizabeth van Es, and Mark Warschauer. 2012. “Affordances for Second Language Learning i.” ReCALL 24 (3): 322–38.

https://doi.org/10.1017/S0958344012000171

 

“令和元年度「英語教育実施状況調査」概要.” 2020. 文部科学省.

https://www.mext.go.jp/content/20200715-mxt_kyoiku01-000008761_2.pdf.

 

内閣府. 2020. “令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要).” 政府統計.

https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/r01/net-jittai/pdf/kekka_gaiyo.pdf.

 

“各資格・検定試験とCEFRとの対照表.” 2019. 文部科学省.

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/03/__icsFiles/afieldfile/2019/01/15/1402610_1.pdf.

 

 

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