日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2019.11.12

YouTubeが英語学習の場になる可能性

YouTubeが英語学習の場になる可能性

いまはSNSによって気軽に国境や言語の壁を越えた交流ができる時代。

SNS上のコミュニケーションは外国語学習の分野でも注目されており、特に世界中で利用者が増加しているYouTubeは異なる言語や文化を学べる場として活用できる可能があります。

 

【目次】

 

 

インターネット利用者の6割はSNSユーザー

世界におけるSNS利用者は16億人以上で、世界中のインターネット利用者のうち6割以上の人々がSNSにアクセスしています(Statista, 2019a)。

日本では、Facebook やYouTube、Twitter、Instagramなどが有名ですが、どれも2000年代後半にサービスが開始して歴史が浅いにも関わらず、利用者数は飛躍的に伸びています。

特にYouTubeは、アメリカの若者の間で最も人気のあるSNSであり、10代の利用者の割合は85%にも上ります(Pew Research Center, 2018)。

日本の小学生にとってもテレビ以上に身近な存在になっており、日本FP協会(2019)調査の「小学生が将来なりたい職業」ランキングでは、2017年度・2018年度の2年間連続でYoutuber(ユーチューバー)が第6位(男子)にランクインしました。

また、学研教育総合研究所(2019)が2018年度に実施した同様の調査でも、YouTuberなどのネット配信者が人気の職業であり、男女全体で第3位、小学4・5年生の男子で第1位になっています。

グラフ 世界におけるSNS利用人口

出典:Facebook (2019), YouTube (2019a), Instagram (2019), Statista (2019b)

 

 

世界中の人々が交流するYouTube

2005年からサービスの提供が始まったYouTubeは、全インターネット人口の3分の1近くにあたる19億人以上のユーザーが毎月ログインしており、サイトの表示や仕様は世界91カ国以上、80の言語に対応しています(YouTube, 2019b)。

インターネットの普及により、いつでも、どこでも、世界各国の映画や音楽、ウェブ・サイトなどにアクセスできるようになりましたが、それらの多くは英語で提供されています。

しかしながら、YouTubeに投稿されている動画は、以下のグラフが示す通り、英語よりもそのほかの言語を使って制作されたもののほうが多数派です。

「グローバル=英語」というイメージが強い中、英語以外の言語も使われていることがYouTubeの特徴であり、さまざまな言語や文化を背景にもつ人々がこの動画共有サイトに集まっているのです。

グラフ YouTube人気チャンネルの使用言語

出典:Pew Research Center (2019)

 

ただ「投稿する」、「視聴する」だけではなく、動画に対するコメント機能を使って、同じ興味や関心をもった投稿者と視聴者、または視聴者同士が交流することもできます。

そして、自動でほかの言語に翻訳した字幕を動画につけられる機能があることによって、投稿や視聴、コメント欄での交流を言語の壁を越えて楽しめるようになりました。

例えば、ある日本人アーティストのミュージック・ビデオのコメント欄では、マレーシア人の視聴者が曲名の意味を英語で質問し、日本人の視聴者が英語で説明しています。

また、ある日本人YouTuberがメイク方法を紹介する動画のコメント欄では、パキスタン人の視聴者が日本語で応援メッセージを投稿し、ほかの視聴者が「いいね」ボタンを押して共感している様子を見かけます。

このように、日本人が投稿した動画のコメント欄でも日本語や英語、そのほかの言語によってやり取りが行われており、同じ動画に興味をもった人々が自分の気持ちや考えを伝え合うために、ときには相手が話す言語を使ってメッセージを書き込んでいるのです。

 

YouTubeのコメント欄が外国語学習の場になっている

近年、YouTubeに投稿されているコメントに対する言語学的な分析も行われており、コメントのやり取りが外国語学習に役立つ可能性を検討する研究も行われています。

スペイン語で投稿されたYouTube動画のコメント欄を調査した研究(Bou-Franch et al., 2012)では、多数のユーザーが匿名でランダムな順番・タイミングで発言をしているものの、各コメントの内容や話題にはそれぞれ関連性や連続性があり、口頭でのやり取りと同じ要素があることがわかりました。

さらに、使用言語が一つのみのYouTube動画(例:中国語を話す俳優が中国語でインタビューに答える動画)よりも、使用言語が複数であるYouTube動画(例:中国語を話す俳優が英語でインタビューに答える動画)のほうが、言語や文化に関するコメント(例:話されている英語や英語の使用態度に対する見解や評価、質問など)の投稿が多いことを示した研究結果もあります(Benson, 2015)。

この研究結果によると、そのようなコメントの大半は、ほかの視聴者からの反応コメントがさらに投稿され、言語や文化に関する考えや知識・情報を伝え合うようなやり取りが発生していました。

例えば、台湾人歌手が中国語で歌う映像にファンが英語のテロップをつけた動画に、「英語の歌詞を見ても意味がよくわからないので教えてほしい」という英語のコメントがつきました。

すると、ほかの視聴者から歌詞の意味や解釈についてのコメントが続々と英語で投稿されることに。

これにより質問をした視聴者は英語の歌詞に対する理解を深めることができ、YouTubeのコメント欄で異なる言語や文化の学習が起きている、と結論づけられています。

YouTubeでは、ほかの言語を話す視聴者のために投稿者自身が字幕をつける場合がありますが、視聴者が自主的にほかの言語に翻訳してほかの視聴者の理解を手助けする場合もあり、投稿者と視聴者が一体となってYouTube動画の多言語化や言語・文化の壁を越えた人々の交流に貢献している点は、ほかのSNSには見られない現象なのではないでしょうか。

特定の時間で特定の英語を学ぶような学校の授業だけが「学習」ではありません。

音楽、ファッション、食、教育、旅、健康、ライフスタイル、スポーツ、社会問題など、自分が興味をもった話題について海外の人々とインターネット上でやり取りすることも外国語学習に繋がるという学術的見解は、日常的に英語を使う機会が少ない日本人にとってはとても興味深いものです。

このような外国語学習におけるSNS活用に関する研究は、海外でもまだ歴史の浅い分野ではありますが、日本でも研究が進むことが期待されます。

 

■関連記事

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参考文献

Benson, P. (2015). Commenting to learn: Evidence of language and intercultural learning in comments on YouTube videos. Language Learning & Technology, 19(3), 88–105.

http://dx.doi.org/10125/44435

 

Bou-Franch, P., Lorenzo-Dus, N., and Blitvich, P.G. (2012). Social Interaction in YouTube Text-Based Polylogues: A Study of Coherence. Journal of Computer-Mediated Communication, 17(4), 501-521.

https://doi.org/10.1111/j.1083-6101.2012.01579.x

 

Facebook (2019). Company Info. facebook Newsroom. Retrieved October 30, 2019 from https://newsroom.fb.com/company-info/

 

Instagram (2019). OUR STORY. INFO CENTER. Retrieved October 30, 2019 from

https://instagram-press.com/our-story/

 

Pew Research Center (2018). Teens, Social Media & Technology 2018. Retrieved October 31, 2019 from

Teens, Social Media & Technology 2018

 

Pew Research Center (2019). A Week in the Life of Popular YouTube Channels. Retrieved October 31, 2019 from

A Week in the Life of Popular YouTube Channels

 

Statista (2019a). Social Media & User-Generated Content: Statistics and Market Data on Social Media & User-Generated Content. Retrieved October 30, 2019 from

https://www.statista.com/markets/424/topic/540/social-media-user-generated-content/

 

Statista (2019b). Twitter: number of monthly active users 2010-2019. Retrieved October 30, 2019 from

https://www.statista.com/statistics/282087/number-of-monthly-active-twitter-users/

 

YouTube (2019a).「数字で見るYouTube」. YouTube. Retrieved October 30, 2019 from

https://www.youtube.com/about/press/

 

YouTube (2019b).「YouTubeについて」. YouTube. Retrieved October 30, 2019 from

https://www.youtube.com/intl/ja/about/

 

学研教育総合研究所(2019).「小学生白書Web版 2018年9月調査 調査結果」. Retrieved October 31, 2019 from

https://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/201809/index.html

 

日本FP協会(2019).「小学生の「将来なりたい職業」集計結果」. Retrieved October 30, 2019 from

https://www.jafp.or.jp/personal_finance/yume/syokugyo/

 

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