ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2021.09.06

幼いころから言語に対する意識を高め、言語を楽しむことの良さ~Cate Hamilton氏インタビュー

幼いころから言語に対する意識を高め、言語を楽しむことの良さ~Cate Hamilton氏インタビュー

日本では、日本語以外の言語を知らなくても社会の一員として生活することができます。日常生活を送るうえで第二言語を使うことはほぼ無いのですが、一方で多くの日本人が第二言語学習は望ましく有益なことであり、第二言語を習得することは大きな功績になると考えています。

第二言語の使用をあまり必要としない環境の中で第二言語を学習するとなると、多くの障壁がありますが、そのような困難を克服するためにクリエイティブな活動をしている人々もいます。

Cate Hamilton(ケイト・ハミルトン)氏は、その一人です。自身のビジネスで成功を収めながら、現在、オックスフォード大学(イギリス)にて、歌を使って外国語を学習することの効果を研究し、博士号の取得を目指しています。Hamilton氏の活動拠点は日本ではありませんが、イギリスの環境と日本の環境には多くの共通点があるため、彼女の研究は、日本における効果的な外国語学習を考えるうえでも役立ちます。Hamilton氏は、言語に対する強い情熱から、イギリス(そして願わくば日本でも)の人々の外国語学習に対する意識を変えたい、という夢をもっています。

彼女が立ち上げたビジネスである「Babel Babies(バベル・ベイビーズ)」では、幼い子どもたちに対し、世界中の言語で歌や物語を楽しみながら多言語環境を体験できる機会を提供しています。また、「The Language Revolution(ザ・ランゲージ・レボリューション)」というポッドキャスト番組の司会を務め、言語に関するさまざまな分野の専門家にインタビューを行っています。さらに、自身も子育て中の母親であり、イギリスでさまざまな言語に親しませながら3人の子どもたちを育てています。

【目次】

 

息子が生まれたときがすべての出発点

―どのような経緯で、第二言語習得やマルチリンガリズム(多言語使用)の分野の研究を始めたのでしょうか?

オックスフォード大学で英語とフランス語を学び、その後、教職課程を経て、中学校の教師として英語とフランス語を教えていました。残念ながら、バイリンガル研究で語られるような第二言語習得については何も学んでいなかったので、ただ「フランス語」を教えていました。当時は、人間がどのようにして言語を習得するのか、という知識が何もなく、ただ単に教材やカリキュラム通りに教えることに専念していたんです。

そして、最初の子ども(ディラン)を授かり、息子とは英語とフランス語の両方でコミュニケーションをとりたいと思いました。でも、私は外国語の教師でありながら、バイリンガリズム(二言語使用)について何も知らなかったので、どうしたらいいのかわかりませんでした。二つの言語を使って息子に話しかけるのは私だけになるので、息子が混乱するのではないかと思いました。

長男が生まれた同じ時期に、アラビア語・ドイツ語・ロシア語の通訳をしている親友のルースにも赤ちゃんが生まれたので、子育てについてお互いに話すようになりました。私は彼女に「子どもにドイツ語で話しかけるつもりなの?」と聞き、彼女は私に「あなたはフランス語で話しかける?」と聞き、そんな会話の中で、私たちは自分の子どもたちに「すべての」言語を使えるようになってほしいと考えました。

すべての言語を流暢に話せるようになる必要はありませんが(それは明らかに現実的ではありませんから)、私たちは言語が大好きなので、子どもたちにも好きになってほしかったんです。そこで、さまざまな国から歌や童謡を集めて、子どもたちに歌って聞かせました。それが私たちのビジネスである「Babel Babies」の始まりです。

 

―お子さんたちはイギリスの学校でどのような言語を学ぶのでしょうか?

私には、3人の子どもがいて、長男が10歳、長女が9歳、末っ子の次男が5歳です。

イギリスの子どもたちは7歳から外国語を学ぶのですが、外国語指導のガイドラインは個々の学校が自由に解釈することができます。私の子どもたちが通っている小学校では、音楽、美術、外国語をローテーションで学びます。つまり、音楽の授業が6週間続いたあと、美術の授業が6週間あり、そしてフランス語の授業が6週間ある、という感じなので、フランス語に触れる時間はかなり限られています。

先生がフランス語を話せず、フランス語に対する自信や情熱もない場合もありますから、外国語を学ぶときのワクワク感を子どもたちに伝えることができません。子どもたちは、動物や数字、色の名前をフランス語で覚えますが、それだけなのです。もし科学を同じように教えていたら、6週間に一度、30分だけの授業でロケットの写真を見たり、元素の周期表を見て色を塗ったりするだけで終わってしまい、科学とはどんなものか、ほかの教科とどのようなつながりがあるか、といった概要についてはあまり知ることができないでしょう。

ですから、悲しいことに、私の子どもたちは、フランス語の授業を通じて、フランス語と実際の生活とのつながりを感じることができません。

 

イギリスと日本で似ているところ

―イギリスの状況は日本と似ていますね。例えば、日本の学校でも、教師が自信をもって英語を話すことは少なく、言語に対する情熱が欠けていることが生徒に伝わってしまいます。教師は、異なる言語同士のつながりや外国語と実生活との関わりに目を向けることなく、単語や文法規則を教えることに重点を置きます。ほかには、どのような共通点があるでしょうか?

●教師について

イギリスの小学校では、クラス担任の先生が外国語を教えとは限りません。外国語の「 専門家」に来てもらって、外国語の授業をしてもらう場合もあります。日本でも外部の英語教師に来てもらうことがありますよね。

この外国語教師は、子どもたちにとって「本当の」先生ではないので、規律のある授業にすることが難しく、子どもたちは外国語の授業が重要であると感じにくいです。外国語は、単なるおまけのような科目で、必須科目ではないんです。でも実際には、言語はすべての教科において重要な要素であり、必須科目として扱われるべきものなのです。

 

●親について

親の意識も日本と似ていると思います。日本でもイギリスでも、大多数の家庭では、子どもが第二言語を習得しなければならないような家庭事情も社会的理由もありません。

学生時代に伝統的な外国語の授業を経験した親は、自分の語学力に自信がもてず、子どもの第二言語習得を手助けできないかもしれないと感じています。自分の子どもには自分よりも第二言語を話せるようになってほしいと願っているのに、自分にはその手助けができないと思っているんです。

 

●社会環境について

イギリスは、日本と同じように、モノリンガル社会であると考えられています。日本で言うところの日本語のように、社会で生活するために必要な言語は英語だけです。でも、実際には、さまざまな国から来た、さまざまな言葉を話す家庭がたくさんあります。

 

(注:日本では、2019年のデータ(「人口統計_父母の国籍別出生率」2019)によると、一方の親が日本国籍でない家庭に生まれた子どもは17,403人、両親ともに日本国籍でない家庭に生まれた子どもは18,327人。中国、フィリピン、タイ、ブラジル、ペルー、韓国、アメリカなど、さまざまな国籍の人々がいる(「平成28年度 人口動態統計特殊報告 婚姻に関する統計の概況」2017)。よって、多様な言語を話す子どもたちが日本の学校に通うようになる可能性がある。)

 

「Babel Babies」におけるマルチリンガル体験の提供

―ご自身で立ち上げたビジネス「Babel Babies」について詳しく教えていただけますか?

先ほどお話ししたように、私は子どもたちに「すべての」言語に対してワクワク感をもってほしいと思っていましたが、子どもが生まれてから学校で外国語を学び始めるまでには大きな時間差があるとも感じていました。そこでルースと私は、日本の歌「カエルの合唱」のような伝統的な童謡をはじめ、世界中のさまざまな歌を集めて、親子で楽しく世界中の言語に触れられる会を開催し始めました。

コロナ禍前は、親子で集まり、まずその週のメインの言語(例えば日本語)に触れ、途中からほかの国の言語にも触れる、という活動をしていました。ぬいぐるみの「Croc Monsieur(クロック・ムッシュ)」が子どもたちの友だちのような存在として、親子のみなさんと一緒にことばを覚えていきます。

まず、大きな地図を見せながら、「ここが私たちの家があるイギリスで、これから日本に行くんだよ」と言います。日本に着いたら、「こんにちは」と言って、最初の歌として「かえるの合唱」を紹介します。そして、ほかの国を回ってその国のことばや歌に触れ、子どもたちが楽しめるような物語を通じて、その国の地理や文化的なこともお話しします。

また、語源(その単語がどこから来て、どのようにほかの言語とつながっているかという話題)についても話します。例えば、「Row, Row, Row Your Boat」の歌を使って、英語の単語にはノルウェー語の単語に似ているものがあることを紹介できます。

コロナ禍の現在は、みんなで集まって歌うことができないので、すべてオンラインで行っています。また、オンラインで行うことによって、外国語学習に情熱をもっている世界中の人々のコミュニティをつくりたいと思いました。

このオンライン版は、42週間分のプログラムで構成されていて、基本的には、私がこれまでに学んだことすべてを、動画やオンライン交流の形で提供しています。オンラインのプログラムなので、親子のみなさんがそれぞれダウンロードできるアクティビティや補足教材をたくさん追加しました。

例えば、ある週には、さまざまな言語で動物の鳴き声に触れます。おもしろいことに、ネコの鳴き声は、どの言語でも「meow(ミャオ)」と聞こえることが多いのですが、ブタの鳴き声は、英語では「oink, oink(オインク オインク)」、日本語では「bu bu(ブー ブー)」、フランス語では「groin-groin(ゴワン ゴワン)」というように、言語によってまったく異なります。

私たちが大切にしていることは、個々の言語を学ぶことよりも、異なる言語同士のつながりを学ぶことなのです。家庭でほかの言語を学ぶ理由のない2、3歳の子どもたちにとって、フランス語で40単語を学ぶのと、4つの言語で10単語を学ぶのとでは、大きな違いがあるとは思いません。私たちは、一つの言語に焦点を当てるのではなく、言語全般に対するスキルや態度を育てることに焦点を当てています。

 

―そうすると、Babel Babiesでは、歌や物語、体を使ったアクティビティを使って、幼い子どもたちにさまざまな言語を紹介し、言語とその文化や人々とのつながりを感じられるように手助けしている、ということですね。とても楽しそうな活動です。私も子育て中の親なので、とても良いなと思いました。 親御さんも楽しめそうだと感じますが、意図的にそのようなプログラムにしているのですか?

そうですね。イギリスでは、子どもたちが集まって遊べるようなグループの集まりがあるのですが、親は、そこに座ってコーヒーを飲むだけで終わってしまうことがよくあります。でも、Babel Babiesの活動を通じて、親御さんたちは子どもと一緒に頭を働かせてさまざまな言語を学ぶことがとても好きだということがわかりました。

親は子どもにとって最初の教師ですが、自分は外国語を使えないと感じることが多いために、家庭内でさまざまな言語に触れることを避けています。イギリスでは、おそらく、「学校の授業」という伝統的なスタイルで外国語を学んだ経験が原因でこのような意識になっているのだと思います。Babel Babiesの目的の一つは、親御さんたちがこのような考え方を克服できるようにすることです。親は、外国語を完璧に使えなくても、子どもの外国語学習を助けてあげることができるんです。実際に、親子で一緒に学習するスタイルのBabel Babiesプログラムに参加した親御さんたちは、自信をもって子どもたちを助けようという気持ちになったと話してくれました。

 

―英語以外の言語を話す必要がないイギリスの人々は、さまざまな言語に触れる体験について、どのように考えているのでしょうか?

イギリスの社会や政治の大部分では英語だけが使われていますが、イギリスの人口や人々が話す言語を見ると、実際はモノリンガル社会ではありません。イギリスの小学校で生徒たちが話す言語は、計364種類にも及ぶそうです。

その中で子どもたちが日常的に使っている言語は約60種類あると思います。ですから、イギリスの人々も多言語主義の価値を理解しています。でも、同時に、保守的な姿勢をとる人も多いです。私の個人的な経験からすると、Babel Babiesが提供しているマルチリンガル体験に関しては、否定的な意見が届いたことはありません。

私は、英語しか話せない人は、バイリンガル(二つの言語を話す人)ではないにしても、実際にはバイダイアレクタル(二つの方言を話す人)である、という事実をみなさんにお話しするようにしています。私たちは、職場の上司や友人など、話す相手によって異なることばを使って話しますよね。

Babel Babiesのアクティビティのイメージ

Babel Babiesのアクティビティで色々な国について学ぶ子供たちのイメージ

 

歌の効果に関する実証的な研究が求められている

ー中学校の教師、そしてBabel Babiesのビジネスを経験してから大学に再度戻り、どのように歌が子どもの言語発達に役立つかということ研究されていますが、それはなぜでしょうか?

歌は、親子の日常生活の一部です。親はいつも赤ちゃんに歌を歌っていますよね。Babel Babiesの試みは成功して、歌を通して多くの親子の言語学習を手助けしてきましたが、私はもともと歌の効果に強い興味をもっていたので、歌と言語学習の関わりを証明した研究があるのか知りたいと思いました。

でも、いくら探しても、この分野を調査した実証的な研究(※1)は見当たりませんでした。さまざまな大学の講師に相談したところ、やはりエビデンスはほとんどないとのことで、自分で研究してみたらどうか、と提案されました。そのような経緯で、私は博士号を取得することにしたんです。

いまは、もうすぐオックスフォード大学の修士課程を終えようとしているところですが、イギリスの教師が子どもに外国語を教えるときにどのように歌を使っているか、という背景的な部分を研究しています。教師が歌の効果についてどのように考えているかを調べているんです。

結果、教師は、語彙の学習や内容の記憶に歌が役に立つと信じているものの、授業で歌を使って教えるためのきちんとしたトレーニングは受けていないことがわかりました。

来年は、歌を使ったグループを、物語を使ったグループや対照群(歌も物語も使わなかったグループ)と比較して、歌は子どもの外国語学習にどのような効果があるのかを検証する実証的な研究を行う予定です。私が特に興味をもっているのは、歌がどのようにして語彙の学習を助けるのかということですが、それ以外にも解明したい分野があります。

例えば、歌は、子どもの行動を変えるのに役立つ可能性があります。片づけをする、順番に並ぶ、周りの人と絆を築く、モチベーションといったことをテーマにした歌がありますよね。

ビジネスの世界から学術の世界に移ることを選んだ理由は、もう一つあります。それは、日本でもそうかもしれませんが、イギリスでは、言語や音楽、芸術といった教科への予算が減らされていて、代わりに科学や数学ばかりが重視されるようになっていることです。

でも実際には、音楽や言語、芸術は、人間の本質の核となるものです。もし、音楽や言語が子どもたちのためになることを示す強力な証拠があれば、数学や科学を重視する社会の目的を達成するために音楽を活用することができる、ということを提唱することができます。エビデンスが多ければ多いほど、子どもたちのためにカリキュラムを改善することができるんです。

 

学校や家庭での外国語学習についての見解・提案

―日本では、子どもたちの外国語を学ぶモチベーションが低下している、という大きな問題があります。何かアドバイスをいただけますか?

●家庭でも学校でも、外国語への好奇心を高めるようにする

5歳未満の子どもであれば、外国語に興味をもたせることはさほど難しくないと思います。なぜなら、幼い子どもは、周りの世界すべてに自然と好奇心をもつからです。ですから、そのような子どもに対しては、周りの世界を探検する道のりの一つとして外国語を紹介してあげればいいのではないでしょうか。

親がその外国語についてたくさんの知識をもっていなくても大丈夫です。まずは、自分の子どもが何に興味をもっているのかを考えましょう。そうすれば、親が子どもをリードしてあげて、子どもが興味をもっているものに外国語を取り入れることができます。

保育園や幼稚園であれば、クラスの中に、外国語を話すお子さんがいるかもしれません。もし保育士や教師がその言語を話せなくても、その子の言語に興味を示す姿勢を見せれば、ほかの子どもたちの好奇心を高めることができると思います。

 

●その言語が使われる状況と一緒に、包括的に教える

教師のみなさんは、外国語を教えるとなると、何かテーマ(色の名前や動物の名前など)に沿っていくつかの単語を単独で教えようとしますよね。でも、そのような考え方からは脱却してほしいです。

歌や物語は、文法をしっかり学ぶことができますし、語彙がもつ本来の概念を表現していますから、ぜひ活用してください。そうすれば、子どもたちは、単語や文法を個々に覚えるのではなく、それらが実際に使われる状況と一緒に学ぶことができます。

特に幼い子どもは、物事を総合的に学習する(経験を通して、ほかのものとの関わりを見出しながら学んでいく)ものです。物語の場面の中でことばと意味との結びつきを発見できるようにして、その過程で登場する単語やフレーズを教えることはとても有効だと思います。例えば、すぐに色の名前を紹介するのではなく、歌や物語の中から色の名前を探させてみましょう。そうすれば、子どもたちは、受け身でなく、主体的に学ぶことができます。

このような教え方のスタイルは、ただ子どもたちに単語をリピートさせるドリル的な教え方と比べて、教師のモチベーションが高まると思います。教師自身が教えている内容に親しみを感じていれば、子どもたちは一層そのように感じることができるでしょう。

 

―子どもに早くから外国語に触れさせたりすることは、子どもの言語発達にとって悪い影響を与えるのではないか、と心配する親御さんもいます。この点については、どのように考えていらっしゃいますか?

●心配しなくても大丈夫

日本では、両親が日本人であれば、家庭で使われている言語は社会で使われている言語と同じですから、少しくらいほかの言語に触れても、日本語がダメになることはありません。なぜなら、日本語力は常に強化されているからです。

一方、社会の少数派の言語(例えば英語)は、日常的な環境の中で日々強化されていないため、言語発達のサポートが日本語よりも困難です。このような日本の環境で育っている子どもは、多数派の言語(日本語)が少数派の言語(英語)に取って代わられる心配はありません。

 

●早くから外国語に触れるメリット

その一方で、幼いころからほかの言語に触れることには、素晴らしい利点があります。 第二言語を学ぶことで、メタ言語意識(※2)が発達し、第一言語の発達にとってもメリットがあります。この現象については、私の指導教員であるVictoria Murphy(ビクトリア・マーフィー)が同僚と一緒に素晴らしい研究(Murphy et al.2014)を行っています。

この研究チームは、英語を第一言語とし、フランス語とイタリア語を学んでいる子どもたちについて調査しました。その結果、イタリア語を学んでいる子どものグループは、英語のリーディング力が上達したことがわかりました。イタリア語は、文字と音が一致する言語です。このような言語を学んだ経験により、英語の音をより上手に処理できるようになったからだと考えられます。短期間(15週間)イタリア語を学んだだけでも、メタ言語意識が高まり、第一言語(英語)にも良い影響があったのです。

子どもたちがほかの言語に早くから触れたほうがいい理由はほかにもあります。それは、言語学習に対する積極的な姿勢を育てることができる、ということです。子どもは元々好奇心旺盛ですが、おそらく、思春期に入ると、新しいことにチャレンジするのが恥ずかしいと感じるようになってしまいます。

 

まとめ:外国語を学ぶことに関する意識や体験について、イギリスと日本の間には多くの共通点が

今回、幼いころから言語に対する意識を高め、言語を楽しむことの良さについて、Hamilton氏にお話を伺うことができて光栄でした。意外にも、外国語を学ぶことに関する意識や体験について、イギリスと日本の間には多くの共通点がありました。外国語教育においては、歌や物語を活用すること、言語が使われる状況と一緒に学ぶこと、幼いころから言語を楽しむ方法を提供することが重要だとわかりました。そして、親や教師の外国語に対する姿勢も重要です。これらは、文化の違いや地理的な距離はありますが、日本の環境でも言えることです。

特に、子どもたちが異なる言語同士のつながりを発見できるように働きかける、という考え方は、日本語を話す人にとっては実用的であり、興味を引きつける活動だと考えられます。日本語には、ほかの言語から借りていることば(借用語)がたくさんあるからです。パン(/pan/)は、スペイン語でもパン(/pan/)と言う(どちらも同じ食べものの「パン」を意味する)ということがわかれば、子どもたちはそのスペイン語を覚え、スペイン語に対する好奇心が芽生えるかもしれません。

歌が子どもたちの言語学習にどのように役立つかを調査しているHamilton氏の研究結果はとても楽しみです。外国語に触れる子どもたちやその親、教師にとって重要であり、非常に関わりの深い研究分野です。

Hamilton氏のブログでは、研究結果に基づいた外国語学習に関する有益なアドバイスが親しみやすい英語で紹介されています。英語がわかる方であれば、読みやすく、理解しやしすい、素晴らしい資料になると思いますので、ぜひご覧ください。

 

Cate Hamilton氏や「Babel Babies」に関するくわしい情報はこちら:

「Babel Babies」ブログ:https://www.babelbabies.com/blog

「The Language Revolution」ポッドキャスト:https://thelanguagerevolution.co.uk/

 

(※1)言語学習における歌の効果を調べた研究の大半はケーススタディであり、参考にはなるが、通常、歌を使って言語学習をさせたグループとそうでないグループを比較した実証的な研究ではないため、歌の効果を示す証拠としては比較的弱い。そのほかの論文は、実験ではなく著者の経験に基づいているため、研究結果が曖昧であったり、考察が主観的であったりして、その結果をほかの文脈に当てはめて一般化することができない。

(※2)言語の性質について意識的によく考える能力

 

■関連記事

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参考文献

Murphy, Victoria A., Ernesto Macaro, Sonia Alba, and Claudia Cipolla. 2014. “The Influence of Learning a Second Language in Primary School on Developing First Language Literacy Skills.” Applied Psycholinguistics 36 (5): 1133–53.

https://doi.org/10.1017/S0142716414000095

 

「人口統計_父母の国籍別出生率」. 2019. 国立社会保障・人口問題研究所.

http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2019.asp?fname=T04-02.htm.

 

「平成 28 年度 人口動態統計特殊報告 婚姻に関する統計の概況」. 2017. 厚生労働省.

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/konin16/index.html.

 

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