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ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2020.04.09

オンラインゲームが英語を使う場に

オンラインゲームが英語を使う場に

2020年1月、香川県が全国初となる「ゲーム条例」の制定を検討していることが報道され、オンラインゲームにはネガティブなイメージが定着してきています。一方で、オンラインゲームは、世界各国の人々とゲームの世界で交流することを可能にしました。海外では、このような側面に注目し、オンラインゲームが英語学習に繋がる可能性を探る研究がいくつも発表されています。

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【目次】

 

人気の高いオンラインゲーム

インターネットやスマートフォンの普及によって世界的に人気が高まっているオンラインゲーム。総務省(2019)の調査によると、日本では、インターネット利用者の33.6%がオンラインゲームを目的にインターネットにアクセスしています。

未成年の子どもの場合は、3人に1人以上がオンラインゲームを毎日利用し、週に1回以上利用する子どもは全体の7割近くを占めます(消費者庁, 2014)。

ほかのプレイヤーと協力しながら架空の世界や物語の中で冒険の旅などを楽しむオンラインゲームは、「MMORPG(大規模多人数同時参加型オンライン・ロールプレイング・ゲーム)」と呼ばれ、テレビ画面に映し出されるゲームの世界がインターネットで世界中のプレイヤーと繋がっています。同時にゲームにアクセスしたプレイヤー同士が対戦したり、仲間になって共通の敵を倒しながら冒険を楽しんだりすることができ、ビデオゲームの新たな魅力となりました。

このようなゲームの人気が高まるにつれて、ゲームで遊ぶ頻度や時間が過度に多いことによって生活や健康に深刻な問題が生じる人々も増え、2018年にはWHO(世界保健機関)がゲームに依存することを「障害」と位置づけました。さらに、2020年1月には、香川県が18歳未満の子どもに対してオンラインゲームの利用時間を制限する条例を制定しようとしていることが報道され、オンラインゲームに対してネガティブなイメージをもつ人も増えてきました。

しかしながら、経済産業省(2017)は、海外展開を強化するべき日本の重要な産業としてオンラインゲームを位置付けており、決して悪い側面だけではありません。日本の「ファイナルファンタジー」は世界的に有名なゲームの一つですが、長年すれ違ってきた父親と息子がオンラインゲーム上で交流して関係を深めていく様子を紹介したブログが人気となり、2017年に「ファイナルファンタジー XIV 光のお父さん」としてテレビドラマ化され、2019年には映画化もされています。

 

英語教育でビデオゲームを活用

ビデオゲームは、単なる娯楽としてではなく、「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる新しい時代の子どもたちや若者に適した学習ツールとしても注目されてきました。

英語教育の分野でも研究が進み、ゲーム内容、教師による取り扱い方、学習効果の個人差など、さまざまな課題があります(Bourgonjon et al., 2010; Mifsud et al., 2016)が、ビデオゲームは効果的な英語学習の方法の一つとして考えられています。

例えば、マルタ共和国(公用語はマルタ語と英語)では、計4つの中学校の生徒(11〜13歳)を対象に、アメリカのソフトウェア会社が開発した子ども向けロールプレイング・ゲーム「Clue Finders(クルー・ファインダーズ)」を英語の授業に取り入れる実験が行われました。

ゲームを理解して進めるためには英語を読んだり聞いたりする必要があり、アイテムを集めてさまざまなミッションをクリアしながら謎解きをしていきます。このゲームをプレイした生徒のグループと通常の英語の授業を受けた生徒のグループを4週間後に比較したところ、前者のグループのほうが英語の文法や語彙を多く学習していました(Mifsud et al., 2016)。

また、2011年、アメリカのサウスカロライナ大学は、第二言語としての中国語習得を目的としたビデオゲーム「Lost in the Middle Kingdom(ロスト・イン・ザ・ミドル・キングダム)」を研究開発し、その成果を報告しました。

このゲームには、第二言語習得などに関する理論のほか、特定の目的や課題を遂行することを通じて言語を学習させる「Task-Based Instruction(タスクを基盤とした教授法)や、特定の内容を学ぶことを通じて関連する言語を学習させる「Content-Based Instruction(内容を基盤とした教授法)」といった近年の英語教育の考え方が応用されています(Shepherd et al., 2011)。

 

プレイヤー同士のやりとりで英語が使われる

イメージ画像|英語でやりとりするためのインカム

「Lost in the Middle Kingdom」の開発者らは、マルチプレイヤー機能による学習効果の検証を今後の研究課題の一つとして挙げています。

複数のプレイヤーが協力してゲームを進める場合、プレイヤー同士のコミュニケーションが発生し、ゲームで使われている言語を理解する手助けになったり、その言語を使ったりする機会になるからです。

例えば、フィンランドでは、11歳の少年二人が「ファイナルファンタジーⅨ」(英語版)を一緒にプレイする様子を録画し、ゲーム中の会話を分析する研究が行われました。複数のプレイヤーが協力してゲームを進める際には、ルールや操作方法、プレイ経験から得た情報など、そのゲームに関する知識が多いプレイヤーがほかのプレイヤーにいま置かれている状況を知らせたり、キャラクターにどのような行動をさせるか提案したりする場合があります。

子どもたちは、このようなやりとりの過程で、フィンランド語を使うだけではなく、画面上に表示された英語(例:キャラクターのせりふ、武器やアイテムの名前、戦闘結果など)を読み上げることもありました。そして、ゲーム経験が浅く、英語力も比較的低かった子どもは、はじめはもう一人の子どもの指示や提案に従っていましたが、繰り返しプレイするうちに、英語を含むゲームに関する知識を身につけ、自ら判断したり提案したりするようになっていきました(Piirainen-Marsh and Tainio, 2014)。

また、同じくフィンランドで行われた別の研究では、「ファイナルファンタジーX」(英語版)のキャラクター同士が会話する場面(英語の音声付き)が英語学習の機会になっている様子が観察されています。

13歳の少年二人が一緒にプレイしているときの会話には、英語の音のリズムや声の高さ、発音などを真似てキャラクターのせりふをリピートして楽しんだり、そのキャラクターがよく言うせりふや前回のプレイで知っているせりふであれば、英語の音声が流れる前からせりふを予測して言ったりすることがありました。

さらに、せりふやその意味を覚えてゲーム中の違う場面で応用して使ったり、自分が知っている英語を付け加えてキャラクター同士の会話を作り上げたりする場面もありました(Marsh and Tainio, 2009)。

このように、英語学習を目的に制作されていないビデオゲームであっても、そのゲームに使われている言語が英語である場合、複数のプレイヤーがそのゲームを一緒にプレイすることで、英語に触れたり英語を使ったりする機会になるのです。

 

世界中の人とプレイするオンラインゲーム

架空の世界で冒険の旅などを楽しむロールプレイング・ゲームは、かつては、一人で、または、友だち同士で同じテレビ画面の前に並んで座ってプレイするものでした。

しかし、現在は、世界各国に住む人々が同時にプレイできるMMORPGが登場し、ゲームの世界で出会った人や自動でマッチングされた人たちと仲間になり、チャット機能を使って文字や音声でリアルタイムにコミュニケーションをとりながら楽しむことができるようになりました。

ゲームによっては、ほかのプレイヤーと協力しなければクリアできないステージやミッションが用意されている場合もあります。

このようなゲームの世界で異なる言語を話す人同士が出会ったり仲間になったりしたときには、共通語として英語が使われる場合があります。英語でのチャットは、英語を聞き、英語を読み、英語を話し、英語を書く練習になり、英語のボキャブラリーを増やす機会にもなると考えられています(Peterson, 2010)。

ある研究(Rankin et al., 2009)では、英語の授業で教えるよりもオンランゲームでのやりとりを経験させたほうが単語の学習効果が高かったことが報告されています。

研究者らは、アメリカに留学している中国人の大学生と英語のネイティブ・スピーカー(アメリカの大学生)を含む4〜5人で「Ever Quest 2(エバー・クエスト 2)」(アメリカのMMORPG)を一緒にプレイさせ、そのやりとりを分析しました。

結果、中国人留学生もアメリカの大学生も、英語を第一言語としているかどうかに関わらず、ゲームにおける共通の目的を達成するために、仲間への挨拶や提案・指示、質問など、チャットのやりとりを同程度に行っていました。そして、中国人留学生は、やりとりの中で知らない英単語が出てきても、ゲームの状況や進め方に関する質問をしながら単語の意味を推測して理解していたこともわかりました。

スウェーデンでは、11〜12歳の小学生86名を対象にした研究調査も行われています。

研究者らが、学校外で英語に触れる方法と英語力の関係性を調べたところ、オンラインゲームで英語に触れている生徒たちのほうが、テレビや映画、音楽、インターネットなど、ほかの方法で英語に触れている生徒たちよりも英語力(リーディング、リスニング、ボキャブラリー)が高く、ゲームで遊ぶ時間が多い生徒ほどその傾向が強いことがわかりました(Sylvén and Sundqvist, 2012)。

ゲームで遊ぶことによって英語力が身についているのか、もともと英語力が高いからゲームを楽しむことができるのか、という疑問は残されているものの、大人や大学生に限らず、年齢の低い子どもにおいても、オンラインゲームと英語力には何らかの関係性があると考えられます。

 

より自然に、より自発的に学ぶ英語

学校の授業や教材、テレビ、映画、音楽、インターネット上のウェブ・サイト、SNS、オンラインゲームなど、グローバル化が進むにつれて英語に触れる方法は多様化しています。このような方法の中でも、オンラインゲームは、異なる言語を話す人々が共通の目的を達成するための手段として自発的に英語でコミュニケーションを図ろうとし、さらに、その過程を楽しみながら日常的に何度も繰り返すことができる、という点で特徴的です。

「テストで点数を取るため」、「試験に合格するため」といった、親や教師から与えられた目的ではなく、ゲームで遊びたい、ゲームを楽しむためにミッションをクリアしたい、そのために仲間と協力したい、協力するために全員で目標や情報を共有して役割分担をしなければならない、そのためにはコミュニケーションが必要である、というように、ごく自然な状況と自発的な理由で英語の使用に繋がるのです。

これまでのビデオゲームやオンラインゲームに関する研究は、北欧の子どもたちや英語圏在住の留学生など、一般的な日本人よりも英語力が高いと思われる人々を対象とした調査結果であるため、すべての日本人にとって有効な英語学習方法であるとは限りません。しかしながら、「授業」や「レッスン」という場や方法でなくても、日常生活の中で、何度も繰り返し継続して楽しめる方法で英語に触れ、ある目的を達成するために自発的に英語を使うことも効果的な学習方法であることは明らかです。

早期英語教育においても「遊びながら学ぶ」という言葉はよく耳にしますが、ただ楽しいだけではなく、その遊びを楽しむために英語が必要であれば、より学習効果が高いということも示唆されているのではないでしょうか。

 

■関連記事

イメージ画像 Youtube YouTubeが英語学習の場になる可能性

 

 

参考文献

Bourgonjon, J., Valcke, M., Soetaert, R., and Schellens, T. (2010). Students’ perceptions about the use of video games in the classroom. Computers & Education, 54(4), 1145-1156.

https://doi.org/10.1016/j.compedu.2009.10.022

 

Marsh, A. P. and Tainio, L. (2009). Other‐Repetition as a Resource for Participation in the Activity of Playing a Video Game. Modern Language Journal, 93(2), 153-169.

https://doi.org/10.1111/j.1540-4781.2009.00853.x

 

Mifsud, C. L., Vella, R., and Camilleri, L. (2016). Attitudes towards and Effects f the Use of Video Games in Classroom Learning with Specific Reference to Literacy Attainment. Research in Education, 90(1), 32-52.

https://doi.org/10.7227/RIE.90.1.3

 

Peterson, M. (2010). Massively Multiplayer online role-playing games (MMORPGs) as arenas for second language learning. Computer Assisted Language Learning, 23(5), 429-439.

https://doi.org/10.1080/09588221.2010.520673

 

Piirainen-Marsh, A. and Tainio, L. (2014). Asymmetries of Knowledge and Epistemic Change in Social Gaming Interaction. Modern Language Journal, 98(4), 1022-1038.

https://doi.org/10.1111/modl.12153

 

Rankin, Y.A., Morrison D., McNeal, M., Gooch, B., and Shute, M.W. (2009). Time will tell: in-game social interactions that facilitate second language acquisition. FDG ’09: Proceedings of the 4th International Conference on Foundations of Digital Games (pp. 161-168).

https://doi.org/10.1145/1536513.1536546

 

Sylvén, L. and Sundqvist, P. (2012). Gaming as extramural English L2 learning and L2 proficiency among young learners. ReCall, 24(3), 302-321.

http://dx.doi.org/10.1017/S095834401200016X

 

Shepherd, J. J., Doe, R. J., Arnold, M., Cheek, N., Zhu, Y., and Tang, J. (2011). Lost in the Middle Kingdom: a second language acquisition video game. ACM-SE ’11: Proceedings of the 49th Annual Southeast Regional Conference, 290-294.

https://doi.org/10.1145/2016039.2016114

 

経済産業省(2017).「平成28年度コンテンツ産業強化対策支援事業(オンラインゲームの海外展開強化等に向けた調査事業)報告書」. 『DATA GO.JP(データカタログサイト)』. Retrieved from

https://www.data.go.jp/data/dataset/meti_20170510_0024

 

消費者庁(2014).「平成25年度 消費生活に関する意識調査 結果報告書 —オンラインゲームに関する調査—(未成年利用者の保護者対象)」. Retrieved from

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/research_report/survey_001/pdf/h25_mar_cyousa4.pdf

 

総務省(2019).「報道資料:平成30年通信利用動向調査の結果」. Retrieved  from

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000062.html

 

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