日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。
2018.08.22
「早期英語教育」と聞くと、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか? 「英才教育」、「エリート」、「教育ママ」……。
これらは、ときにはネガティブなイメージを伴い、早期英語教育をしていること、検討していることを周囲に話したくない、という親御さんもいます。しかしながら、近年は、英語に限らず、乳幼児期の教育の重要性が公的に認められるようになり、早期英語教育も多くの人にとって身近なものになりつつあります。
【目次】
小学生や就学前のうちから英語を学ぶことは、習いごとのひとつとして広く普及しつつありますが、依然として英才教育のイメージが根強く残っています。その理由は、早期英語教育の歴史の始まりにありました。
1870年代、明治時代初期の小学校では、英語やドイツ語、フランス語、オランダ語が教えられていました。1880年代は「欧米化=近代化」と考えられた時期であり、また世界情勢の変化によって英語への関心が高まり、学校により開始学年や授業時間数が異なるものの、英語教育に力を入れる小学校が増えました。
1890年代は極端な欧化主義が否定され、日本の文化・伝統が重視されるとともに小学校英語教育の奨励は弱まります。しかしながら、日清戦争を機に海外を再意識するようになり、明治時代末期の1900年代の小学校では、発音や会話などの実用性を重視する英語教育が盛んになります。
尚、この時期までの義務教育は現在の小学1〜4年生にあたる尋常小学校のみであり、英語教育が主に行われていたのは、授業料が必要な高等小学校(現在の小学5年生〜中学2年生)でした。
よって、当時の英語教育は、経済的に余裕がある家庭であることの証であり、高学歴やエリートへの道筋だったのです。
明治から大正へと時代が移り変わると、第一次世界大戦などによって国際問題への関心がさらに強まり、英語を教科に加える高等小学校が急増したと言われています。しかし、明治末期に義務教育が4年間から6年間に延長された際、高等小学校はわずか2年間のみとなり、英語教育の授業時間数は激減します。
また、高等小学校に進学しなくても義務教育である尋常小学校から中等学校へ直接入学できるようになったことから、高等小学校で英語を学ぶ生徒も減りました。昭和の第二次世界大戦後は、学校制度の変更に伴い、公立小学校での英語教育が廃止される一方、私立小学校では英語教育が継続されます。
このような経緯により、英語は、すべての国民が学ぶものではなく、私立学校に通うような一部の富裕層・エリート層の家庭の子どもが学ぶものになっていったのです。
戦後は、日本の民主化と復興を目指し、子どもの教育に力を入れる動きが盛んになります。1945年には、文部省が「新日本建設の教育方針」を示し、アメリカ教育界の専門家の協力を得ながら、大規模な教育改革が進められました。
戦時教育体制や一方的に知識を詰め込む教育方法を改め、教育機会の均等や児童・生徒の自律的な活動、個人に合わせた能力育成などを重視する取り組みが多数実施されます。
民間においては、教科書に沿った画一的で形式的な暗記中心の学習方法、能力・才能は遺伝という考え方などに異を唱え、「能力は、小さいころからの環境や教育によって、どの子にも育つ」という考えが広まります。
例えば、1930年代からバイオリン指導者として活躍した鈴木鎮一氏は、戦後間もない1946年に「全国幼児教育同志会」(現「社団法人 才能教育研究会」)を設立しました。鈴木氏のもとで学んだ未就学児〜中学生の子どもたちは、演奏旅行で世界各国をまわり、日本の皇族や各国外交団、アメリカ大統領などが出席する大会や演奏会、日米親善コンサートで活躍します。母語のように自然な環境で幼いころから音楽の才能を育てる「スズキ・メソード」が国内外で注目を浴びました。
ソニー創業者の井深氏は、戦後から復興するには科学技術の振興が重要であるとし、1969年に「財団法人 幼児開発協会」(現「公益財団法人 ソニー教育財団」)を設立し、科学を通した子どもの育成に取り組む教育者や教育施設を支援しました。
好奇心、創造力、挑戦する勇気など、心の育成における乳幼児期の重要性を訴えた著書『幼稚園では遅すぎる』が1971年に出版され、大きな話題を呼びます。
1983年には、最新の脳科学データを根拠にした0歳からの育児バイブルとして『赤ちゃん教育』が出版されベストセラーとなります。著者は、脳科学者の久保田競氏と妻のカヨ子氏であり、夫妻が脳科学理論と実際の出産・育児経験をもとに確立した「クボタメソッド」は、新聞やテレビ番組でも取り上げられ、一躍大ブームとなりました。
小さい子ども向けの家庭英語教材や英語教室を扱う企業の多くが、この戦後の昭和時代に設立されており、早期英語教育が盛んになり始めたのは、この時期だと考えられます。
1960年代からは、核家族化や少子化が進み、社会から孤立した母親が教育ママや過保護になる傾向がみられるようになったと言われています。また、受験競争が激化した時代であり、子どもの学業や成績のみを重視したり、子どもの将来に過剰な期待をしたり、子どもを唯一の生きがいとして依存したりする母親が問題視されました。
本来、前述のような当初の早期教育は、著名な大学への進学や大企業へ就職など、競争に勝つことを目的とするものではありませんでした。むしろ、「教える」のではなく、「やってみたい」、「できるようになりたい」という自発的な興味や意欲を引き出し、一人ひとりの能力を伸ばす土台づくりをしようとする、長期的な視点をもったものだったと考えられます。
『幼稚園では遅すぎる』の著者である井深氏も生前、「本当に必要なのは、知的教育より、まずは「人間づくり」「心の教育」だと気付いた」とインタビューに答えています。
しかしながら、教育ママや過保護な母親の登場と早期教育の盛り上がりは相互に助長し合い、また、受験を意識した商品や教育施設が増えるに従って、早期教育は、受験のための英才教育というイメージが広く普及したと考えられます。
尚、1990年の内閣府による世論調査によると、全国から無作為抽出された0歳〜高校生の子どもをもつ親1,358人のうち、「子どもに対する教育はうまくいっている」と回答した人が25.6%、「だいたいうまくいっている」が64.5%でした。合計すると90.1%であり、受験競争時代は、ほとんどの親が自分の教育に対して自信をもっていたと言えます。
時代が昭和から平成となり、1990年代後半になると、受験競争の弊害が注目されるようになります。1996年に文部科学省により公表された中央教育審議会の答申には、以下のように記載されています。
「高等学校や大学を目指した過度の受験競争は、高等学校以下の学校段階における教育や学習の在り方を、受験のための知識を詰め込むことに偏らせる傾向を招いている。」
「過度の塾通いは子供らしい生活体験・自然体験や遊びの機会を失わせる等見過ごすことのできない問題を持っている。その要因とされる過熱化した受験競争については、本来の学ぶ目的を見失わせたり、子供の発達や人間形成に悪影響を与えたりすることが懸念される。特に、今日、その低年齢化が進んでいる状況は教育上の大きな課題と言わなければならない。」
こうした背景から、子どもたちに時間的・精神的なゆとりをもたせながら「多くの知識を教え込む教育を転換し、子どもたちが自ら学び自ら考える力の育成」などを基本的視点とする新学習指導要領、いわゆるゆとり教育が2002年から実施されることとなったのです。
このような政府の発表に続き、受験競争や塾通いとともに、小さいころから習い事をさせること、学業重視の教育ママ、子どもに依存する過保護の親などがメディアから非難され始めます。一方、新学習指導要領により、「総合的な学習の時間」が小学校に設けられ、国際理解に関する学習の一貫として英会話などが実施されるようになったことで、英語への関心は高まります。
こうした状況において、早期英語教育をやるべきかどうか迷う保護者は多かったと推測できます。
ベネッセ教育総合研究所(2016年)が調査した「幼児の生活アンケート」(対象:首都圏在住の1歳6カ月〜6歳就学前の乳幼児をもつ保護者)によると、2000年から2015年の間に最も大幅に増加している習いごとは、「英会話などの語学教室」であり、5.0%から11.2%へ倍増しています。
2015年は、1位 スイミング17.2%、2位 通信教育12.1%、3位 体操11.8%、4位 英会話などの語学教室11.2%。2000年時点では、語学教室の順位は5位であり、4位は楽器(ピアノやバイオリンなどの個人レッスン)でしたが、順位が15年の間に入れ替わりました。
このように、世間の逆境の中でも早期英語教育をする親は増えていきましたが、周りから否定的な目で見られないように気を配る姿勢が今日の早期英語教育に対するイメージにつながっていると考えられます。
学力低下などによってゆとり教育も非難されるようになり、2006年に教育基本法が改正されます。改正前の教育基本法は、戦後の1947年に制定されたもので、約60年ぶりの改正ということで大きなニュースになりました。
改正の背景として挙げられた事項は、「家庭や地域社会の教育力の低下」、「育児に不安や悩みをもつ親の増加」、「学ぶ意欲の低下や学力低下傾向」などです。例えば、以下のような事項が重要であり振興されるべきであることが新たに明文化されました。
・「我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人」の育成
・「すべての教育の出発点」としての保護者による家庭教育
家庭教育と幼児教育については、初めて法律で規定されました。2年後の2008年には、保育所保育指針も改定され、学校教育法で定められている幼稚園の教育目標が保育所にも適用されるようになります。また、指針の解説書には、乳幼児の発達過程を理解することの重要性が述べられています。
「長期的視野を持って、生涯にわたる生きる力の基礎を培うことを目標として保育することが重要です。それは、生涯、発達し続けていく一人一人の子どもの可能性や、あと伸びする力を信じることでもあり、保育とは、子どもの現在と未来をつなげる営みといえるでしょう。」
生きる力とは、豊かな感性、好奇心、探究心、思考力などであり、それらは乳幼児期に養われ「その後の生活や学びの基礎」となる、と指針の解説書で説明されています。 このような子どもの発達過程の理解に基づく教育の考え方は、昭和時代に注目された本来の早期教育と一致する部分が多く、また、日本人の国際化や就学前の教育、親のかかわりの重要性が法的に認められたことで、早期英語教育が見直されるきっかけになったと考えられます。
また、2005年の文部科学省中央教育審議会の答申では、文部科学省が目指す幼児教育は「受験などを念頭に置き、専ら知識のみを獲得することを先取りするような、いわゆる早期教育とは本質的に異なる。幼児教育は、目先の結果のみを期待しているのではなく、生涯にわたる学習の基礎を作ること、「後伸(あとの)びする力」を培うことを重視している」と述べられました。
このような時代や教育政策の変化の中で、早期教育が「受験のための英才教育」であり続けることはできなくなったのです。
学校教育法が改正された2006年、国立女性教育会館が家庭教育における国際比較調査(対象:各国0〜12歳の子どもをもつ約1,000人の親)を実施しています。調査結果によると、子どもが15歳くらいになったときに日本人の親が強く期待することとして多いものは、以下の通りでした。
参考:国立女性教育会館(2006).「平成16年度・17年度家庭教育に関する国際比較調査報告書」. 国立女性教育会館リポジトリ. http://id.nii.ac.jp/1243/00018703/(2018年3月アクセス). ※上記の資料から日本のデータのみ抜粋して表を作成。
「自分の意見をハッキリ言う」については、「強く期待する」と「少し期待する」を合わせると98%であり、ほとんどの親が期待する事項でした。また、最下位二つの学業と競争について重視する親は、比較対象の他国と比べると少ないことがわかります。
「学校でよい成績をとる」は、日本:11.9%、韓国:21.5%、タイ:28.9%、アメリカ:72.7%、フランス:70.1%、スウェーデン:45.9%。「他人との競争に勝てる」は、日本:11.5%、韓国:29.5%、タイ:21.6%、アメリカ:43.8%、フランス:36.1%、スウェーデン:8.4%です。
また、子どもに強く期待する将来の生き方について、「高い収入を得る」、「高い地位につく」、「有名になる」を選んだ日本人は計8.5%であり、他国と比べて極めて少数派です(韓国:48.2%、タイ:81.9%、アメリカ:65.9%、フランス:98.5%、スウェーデン:33.9%)。
つまり、受験競争時代の記憶が影響しているからか、約10年前の日本では、他国と比べると、親が子どもに対して高い学業成績や社会的地位を求めない傾向にあったと言えます。「自分の意見をハッキリ言う」などの上位の事項は、国際社会を意識した回答である可能性があり、また、親が子どもをコントロールしようとする姿勢は弱まっているように見受けられます。
ベネッセ教育総合研究所(2016年)が調査した「母親の子育て意識」(対象:首都圏在住の1歳6カ月〜6歳就学前の乳幼児をもつ保護者4,034人)において、近年で最も変化が大きかった項目は、以下の二つです。 20年の間に、子どもの将来への不安は増し、自分の育児に自信をもつ人が減っています。
参考:ベネッセ教育総合研究所(2016).「第5回 幼児の生活アンケート」. http://berd.benesse.jp/up_images/research/YOJI_all_P01_65.pdf
※上記の調査結果をもとにグラフ作成。
また、2016年に文部科学省が実施した調査(対象:全国の0歳〜18歳の子どもをもつ20〜54歳の父母3,000人)では、「子育てについての悩みや不安がある」と回答した母親は47.6%で、8年前の同調査と比較して約6ポイント増加したと報告されています。悩みや不安の内容で最も多いものは「子どもの進学や勉強のこと」であり、2008年の46.6%から2016年の59.9%へ増えています。
一見、かつての学業重視の時代に戻ったかのように見えますが、子どもへの期待よりも不安が大きいという点、子どもをコントロールするよりも子どもの心を理解したいという願いが強くなっている点が以前と異なると考えられます。例えば、文部科学省の同調査によると、2008年から2016年の間に、家庭教育へのサポートについての要望が変化し、最も変化が大きかった事項は以下の通りです。
参考:株式会社インテージリサーチ(2017).「平成28年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究〜家庭教育支援の充実のための実態等把握調査研究〜」報告書」. 文部科学省. ※上記の調査結果をもとに表を作成。
また、ベネッセ総合教育研究所(2016年)の調査においても、育児の考え方において最も大きく変化した事項は、「子どもが3歳くらいまでは母親がいつも一緒にいたほうがいい」と考える親、「母親がいつも一緒でなくても、愛情をもって育てればよい」と考える親の比率であることが示されました。
2005年は前者が多数派でしたが、2015年にはほぼ半々になっており、昭和時代の過保護の親とも異なる様子が伺えます。
参考:ベネッセ教育総合研究所(2016).「第5回 幼児の生活アンケート」. http://berd.benesse.jp/up_images/research/YOJI_all_P01_65.pdf(2018年3月アクセス). ※上記の調査結果をもとにグラフ作成。
受験競争を経験した人とゆとり教育を受けた人が混在する、現在の子育て世代。どちらも自分が受けた教育を否定された経験があり、「勉強ばかりではなく自分らしく育ってほしい」という理想と「将来への不安」という現実が交錯する中で注目されたのが、「遊び」を通した学びだったと考えられます。
2008年に改定された保育所保育指針には、「遊び」の重要性が以下の通り説明されています。
「子どもは遊びを通して思考力や想像力を養い、友達と協力することや環境への関わり方などを体得していきますが、何よりも今を十分に楽しんで遊ぶことが重要です。その満足感や達 成感、時には疑問や葛藤が子どもの成長を促し、更に自発的に身の回りの 環境に関わろうとする意欲や態度を育てます。」
このような考え方は、「生きる力」同様、近年発見された新しい考え方というわけではありませんが、受験競争ではなくゆとりでもない教育を模索する親にとっては、「楽しく遊びながら、将来に必要となる力の土台を育てることができる」という点で極めて共感できるものだったのではないでしょうか。
そして、早期英語教育も時代の流れに沿って変化してきています。近年、話題や人気になっている早期英語教育には、「遊び」という共通点と、「英語を教える教育」というよりも「英語にふれる環境づくり」という特徴があります。
数年前から、英語で過ごす保育所や幼稚園、学童が人気を増し、音楽やダンス、工作、演劇、スポーツなど好きなことを英語で楽しむ「ホビングリッシュ(HobbyとEnglishを合わせた造語)」教室も登場しています。習いごとという形でなくても、1日だけのイベントとして気軽に英語にふれられるようになりました。
例えば、子どもが職業体験をできる人気施設「キッザニア」は、施設内の共通語を英語にするプログラムを実施しています。英語で楽しめる日帰りキャンプやスキーなどの野外アクティビティも増えました。英語を学ぶのではなく、英語で遊ぶスタイルが主流になってきているのです。
昨年の2017年に実施されたベルメゾン生活スタイル研究所の調査によると、0〜12歳の子どもをもつ親2,259人のうち、95.9%が「将来は子どもに英語を話せるようになってほしい」と考えており、約3割の子どもがすでに英語を習っているそうです。
その理由に関する回答内容からは、「勉強としてではなく遊びとして」、「英語への壁を作らない環境づくり」、「英語に親しみがあれば、勉強もはかどる」など、苦手意識をもたせないようにという配慮が見られます。
同研究所は、約8年前の2010年、小学生の子どもをもつ1,136人に別のアンケート調査を実施していますが、外国語を勉強させている、または勉強させたことがある理由(複数回答可)として多かった上位三つの回答は、「発音や聞き取りがうまくなる」、「外国語を好きにさせる(嫌いにさせない)ため」、「受験とは関係なく、将来外国語力は必要になってくると思うため」でした。
一方、「受験に必要になる外国語力をつけるため」という回答は少なく、ほぼ最下位でした。
参考:ベルメゾン生活スタイル研究所(2010).「小学生の外国語(英語)教育について」. http://www.b-desse.jp/report_live/072/live072.htm(2018年3月アクセス). ※上記の調査結果をもとにグラフを作成
また、同調査の回答者のうち、外国語に自信がない親は81.1%でした。つまり、子どもの早期英語教育において受験を意識している親は少数派であり、半数以上の親が「英語を嫌いになってほしくない」という想いで英語教育を始めています。そして、その背景には、「英語が苦手」という親自身の体験があると推測できます。
このような背景も、遊びを通して日常的に英語にふれられるような早期英語教育への注目に影響していると考えられます。
文部科学省は2017年3月、2018年4月から実施予定の新しい幼稚園教育要領について告示しました。5歳児修了時までに育ってほしいものとして「知識及び技能の基礎」、「思考力、判断力、表現力等の基礎」、「学びに向かう力、人間性等」という3つの柱を挙げています。 ここで重要なことは、知識や技能、能力そのものを身につけるのではなく、のちにそれらを身につけるための「基礎」を育てる、という点です。
また、幼児教育と小学校教育との連携を強く意識するようになっており、新しい幼稚園教育要領には「小学校低学年は、学びがゼロからスタートするわけではなく、幼児教育で身に付けたことを生かしながら教科等の学びにつなぎ、子供たちの資質・能力を伸ばしていく時期」という説明があります。つまり、近い将来、乳幼児期の教育を前提に小学校教育が進む可能性が高いと考えられます。
さらに、以下の内容が新たに教育要領に加わり、小学校に入る前から異文化にふれることが推奨されるようになります。
「(前略)我が国の伝統的な遊びに親しんだり、異なる文化に触れる活動に親しんだりすることを通じて、社会とのつながりの意識や国際理解の意識の芽生えなどが養われるようにすること。」
早期英語教育の必要性は、小学校における英語の教科化を取り上げて説明されることが増えています。しかしながら、「小学校の英語で遅れをとらないため」、「授業で英語を嫌いにならないため」という考え方のみで早期英語教育を検討してしまうと、短期的な結果を求める受験競争時代の「英才教育」になるか、あまり意義のない体験になってしまうかもしれません。
英語に限らず、早期教育そのものは、乳幼児期の発達過程とその重要性を認識したところから始まっています。早期英語教育が広く普及し始め、その方法が多様化するいま、この原点を念頭に置き、古いイメージやインターネットの情報に惑わされず、誰もが乳幼児期や小学生の英語環境を身近なものとして考える必要があるのではないでしょうか。
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