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2020.01.21

小学校の英語教育と教育現場にある不安

小学校の英語教育と教育現場にある不安

2020年4月に新学習指導要領の全面実施を控え、ついに全国の小学校で英語の授業が始まろうとしています。日本の英語教育改革への第一歩として期待が高まりますが、小学校教員が抱える不安はいまだに解消されていません。

Image by Kikihiro from 写真AC

 

【目次】

 

英語免許状をもたない小学校教員がほとんど

2020年4月1日から、小学3・4年生は外国語活動、5・6年生は教科として英語の授業が全国で始まります。現状、小学校で英語の授業(*1) を担当する教師の8割以上が学級担任(*2)ですが、現役の公立小学校教員のうち、英語の教員免許状を所有する割合はおよそ6%です(文部科学省, 2018a)。

文部科学省による小学校英語教師の実態調査が始まった2013年度は4.7%(文部科学省, 2013)であり、5年の間に3,676人、割合としては1.2%増加していますが、現在も英語指導に関する専門知識がない小学校教員が大多数です。

(*1)教育課程特例校/研究開発学校として指定を受けた学校によって、すでに教科として扱われている英語の授業を含む。
(*2)他学級/他学年の学級担任を含む。

グラフ|英語免許状を所有する小学校教員の割合

出典:文部科学省(2018a)

※IBSグラフ作成
※英語免許状:中学校・高等学校の教科「英語」の普通免許状/臨時免許状/特別免許状

 

英語力が高い小学校教員は100人に1人

小学校教員免許や中・高等学校の英語免許がない人が小学校で英語の授業を単独で担当(専科指導)するには、学校側からの推薦や教育委員会による審査への合格などに加え、2年以上のALT(外国語指導助手)経験、2年以上の英語を使用した海外留学/勤務経験、CEFR B2相当以上の英語力のいずれかが求められます(文部科学省, 2019a)。

文部科学省(2019b)の発表によると、英検準1級〜1級などに相当し、このレベルの英語力があることが外部試験の結果によって明らかになっている小学校教員は全国で4000人弱(文部科学省, 2018)であり、およそ100人に1人の割合です。
また、英検やTOEFL、TOEICなどの英語に関する外部試験を受けたことがある小学校教員は約4割(文部科学省, 2018)であり、英語を積極的に学んできた人や自身の英語力を確認したことがある人も少ないと推測されます。

表|CEFRの「B2」レベルと習熟度

 

 

英語教育に自信をもてない小学校教員

この実態に沿うように、当事者である小学校教員も以前から不安を抱え、なかなか解消されないことが複数の意識調査で明らかになっています。文部科学省は、2014年度の調査で外国語活動の指導や英語力に自信がない教員が半数以上いることを報告しており、その割合は、全国の小学校で外国語活動の実施が始まった2011年と比較すると、わずかながらも増えていました(文部科学省, 2015a)。

グラフ|小学校の学級担任の外国語活動に対する意識

出典:文部科学省(2015a)

※IBSグラフ作成

 

また、20〜60代の小学校教員174名に対して英語の教科化・低学年化への賛否を調査した研究(米崎ほか, 2016)によると、教科化は反対する教員(56.9%)、低学年化は賛成する教員(60.4%)のほうが多数派であったものの、「どちらかと言えば」という弱い意見が多いため、前向きな気持ちと不安が入り混じる心境であると考えられます。

この研究結果においても、「発音には自信がない」、「英語を教科として教える自信はない」、「指導内容や方法を目標と照らし合わせてできるかどうかが不安」、「教材や教科書をうまく活用できるだけの自信はない」、「自分が評価できるかわからない」というように、教員たちが自分自身の能力や知識に関する不安を抱えていることがわかりました。

 

 

小学校教員の養成課程に「外国語」が加わる

2019年度春からは、法改正により、全国の大学で、小学校教員の教職課程内容に「外国語/英語科の指導法」と「外国語/英語科に関する専門的事項」が追加されました(文部科学省, 2019c)。小学校教員を目指す学生は、従来の国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育に加え、外国語(英語)についても学ぶことが義務づけられたのです。

講義を受けるのみでなく、実際に授業を観察・体験し、模擬授業を実施することも必須となっています。よって、2023年度春以降に大学や大学院を卒業・修了して免許状を取得した小学校教員は、英語教育に関する知識・技能をすでに学んでいることになり、そのような若手教員が増えていくことにより、前述のような不安は徐々に解消されていく可能性はあります。

そして、小学校という環境や子どもの年齢・発達段階を考慮した英語教育について学んだ小学校教員は、中学校や高校の英語科免許をもった教員とは異なる価値を持っています。

表|小学校教員養成課程 外国語(英語)コアカリキュラム

※IBS表作成

 

しかしながら、中・高等学校の教職課程(英語科)では英語科の指導法・専門的事項に関して計28単位程度の履修が想定されており、CEFR B2レベル以上の英語力が求められているのに対し、小学校の教職課程ではわずか3単位程度であり、目標とする英語力も明確にはされていません。

また、二種免許状(短期大学卒業相当)の場合は、外国語の単位は必修ではないため、すべての小学校教員を目指す学生がこれらの科目を学ぶようになるわけではありません。

小学校教員には中学校や高校の英語科教員ほどの専門性が求められていないことは明らかであり、学級担任が全教科を教えるという小学校教員の特性上、当然とも言えますが、これから養成されていく新たな小学校教員がどれだけの自信をもって英語の授業を行えるかどうかは、大学入学時点での英語力や英語経験などにより、個人差が生まれそうです。

2011年に全国の公立小学校で5・6年生に外国語活動を導入することが義務づけられましたが、多くの小学校が英語の授業を行うようになったのは「総合的な学習の時間」が始まった1998年。外国語活動における学級担任の役割としても、年間指導計画を立てること、教材を準備して授業を進行すること、児童のつまずきに気づいて発話をサポートすること、児童の関心・意欲・態度・国際理解について評価することなど、当初から多くのことが要求されていた(文部科学省, 2015b)にもかかわらず、小学校教員の教職課程を変更するまでにこれほど長い年月がかかったことにも疑問をもたざるを得ません。

どのような学習をしてきたか、どのような専門教育を受けてきたか、どのような教育環境にいるのか、どのような授業を行うか、どのような信念・知識・考え方をもっているか、といった教員の過去の経験や現在の状況・行動などは、互いに影響し合い、教員が抱える不安もその要素の一つとして授業の内容や進め方に影響を及ぼすと考えられています(米崎ほか, 2016)。

現職教員の不安や研修内容については多くの指摘や提案がされていますが、これから小学校教員を目指す学生たちが抱える不安や、教職課程の学生への効果的な指導内容・方法などについては、全国規模での調査や研究がまだ十分に行われていません。この分野の調査・研究も早急に進めなければ、日本の英語教育改革はさらに実現が遠のき、予想以上に長い道のりになってしまうのではないでしょうか。

 

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参考文献

British Council(2019).「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)」. Retrieved December 16, 2019 from

https://www.britishcouncil.jp/sites/default/files/ees-cefr-jp.pdf

 

文部科学省(2013).「平成25年度公立小学校における英語教育実施状況調査の結果について」. Retrieved December 16, 2019 from

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/09/03/1351570_04.pdf

 

文部科学省(2015a).「平成26年度「小学校外国語活動実施状況調査」の結果について」. Retrieved December 17, 2019 from

https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1362148.htm

 

文部科学省(2015b).「小学校英語の現状・成果・課題について」. Retrieved December 17, 2019 from

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/053/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/05/25/1358061_03_04.pdf

 

文部科学省(2018a).「平成30年度 小学校等における英語教育実施状況調査【集計結果】」. Retrieved December 16, 2019 from

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/17/1415043_07_1.pdf

 

文部科学省(2018b).「現職教員の新たな免許状取得を促進する講習等開発事業実施要項」. Retrieved December 25, 2019 from

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1367300.htm

 

文部科学省(2019a).「令和2年度 概算要求主要事項1(文部科学省初等中等教育局)」.  https://www.mext.go.jp/component/b_menu/other/__icsFiles/afieldfile/2019/08/29/1420671_07-1.pdf

 

文部科学省(2019b).「大学入試英語成績提供システム参加予定の資格・検定試験とCEFRとの対照表」. Retrieved December 16, 2019 from https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/09/25/1420500_3_2.pdf

 

文部科学省(2019c).「平成31年度から新しい教職課程が始まります」. Retrieved December 16, 2019 from

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1414533.htm

 

文部科学省(2019d).「外国語(英語)コアカリキュラムについて」. Retrieved December 16, 2019 from

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/04/04/1415122_3.pdf

 

米崎里・多良静也・佃由紀子(2016).「小学校外国語活動の教科化・低学年化に対する小学校教員の不安:その構造と変遷」.『小学校英語教育学会誌』, 16(1), 132-146.

https://doi.org/10.20597/jesjournal.16.01_132

 

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