日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2019.07.17

バイリンガリズムと脳神経ネットワーク —二言語使用が脳にもたらすものは混乱か適応か?

バイリンガリズムと脳神経ネットワーク —二言語使用が脳にもたらすものは混乱か適応か?

Journal of Kid’s Brain Science Vol.2 No.1, 2019

 

バイリンガリズムと脳神経ネットワーク

二言語使用が脳にもたらすものは混乱か適応か?

 

ポール・ジェイコブス

和訳:佐藤有里

ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(IBS)

 

Bilingualism and the Neural Networks of the Brain:

Linguistic Confusion or Flexibility

 

Paul Jacobs

Translated by Yuri Sato

World Family Institute of Bilingual Science (IBS)

 

 

【要旨】

バイリンガリズムは、世界人口の半分以上にとって日常的な現象である。一方、日本のような国においては、バイリンガリズムに対する大きな不安やある種の恐怖心が存在し、子たちが第二言語を学ぶ障壁になり得る。

第二言語が子どもの脳の混乱や言語発達の遅れを生じさせるという考え方は、幼少期からの第二言語学習についてのよく見られる誤解である。日本の親たちは、このような迷信に基づき、子どもに第二言語を学ばせるべきだろうかと悩む。

本総説論文の目的は、幼少期からの第二言語習得が子どもの脳発達に悪影響を与えるかどうかを検証した研究に基づき、学術的根拠を示すことである。バイリンガリズムが子どもや大人の脳神経に与える影響について明確にするため、神経言語学や心理言語学の分野における研究を要約する。

二言語環境が脳に混乱を生じさせるとしたら、バイリンガルの言語に関連する脳神経ネットワークの発達はモノリンガルに比べて劣るのだろうか?

言語の統制を監視することで脳の混乱を防ぐ前帯状皮質は、脳内における二言語の存在そのものによって機能が高められる。幼少期から二言語に触れた人々の脳は、二つの言語知識を脳内に保管しやすいように発達し、バイリンガリズムは脳の混乱を生じさせるのではなく、幼少期から大人まで生涯に渡って良い影響を与える。

 

【キーワード】

バイリンガリズム、神経言語学、前帯状皮質、言語混乱、下前頭回、上側頭回

 

 

[Abstract]

While bilingualism may be a common phenomenon in over half the world, in countries like Japan there exists great uncertainty and a certain type of fear that can become a barrier to children learning a second language. A common misconception about early second language learning is the idea that a second language causes confusion or language delays among young children. Based on this myth parents struggle with whether they should teach their child a second language. The purpose of this review is to provide research-based evidence that examines whether acquiring a second language early in life has negative effects on the development of a child’s mind. It reviews research from neurolinguistics and psycholinguistic fields to provide clarity on neural effects of bilingualism on children and adults. If a bilingual environment causes confusion then do bilinguals develop neurological connections for language that are inferior to monolinguals? The very presence of two languages from early on assists to strengthen the anterior cingulate cortex (ACC) which is what monitors language control preventing confusion. Those who are exposed to two languages from a young age develop in a manner that is most conducive for housing two languages in the brain compared to one. Instead of confusion there are neural benefits during young childhood to adulthood and beyond.

 

[Key Words]

Bilingualism, Neurolinguistics, Anterior Cingulate Cortex (ACC), Linguistic Confusion, Inferior Front Gyrus (IFG), Superior temporal Gyrus (STG)

 

 

序文

 

英語は、世界各国において価値の高い言語であり、日本も例外ではない。日本政府は、2020年の東京オリンピック開催に向けたこの10年間、外国語(英語)教育必修化の開始学年を小学5年生から3年生に引き下げることを大きく推進するなど、重要な政策の改定に着手してきた1), 2), 3)

また、英語について議論するブログやニュース記事が多く見受けられることから、日本の一般市民も英語の重要性を認識している。私が研究者であることを日本人の友人に話すと、その多くが、自分自身は十分な英語力を身につけるには遅すぎると感じているが、自分の子どもたちはまだ間に合うのではないか、という話を私に聞かせる。

親たちは、自分ができなかった経験を子どもに与えたいという願いを共通してもっているが、同じような悩みも抱えている。自分の子どもは何歳から第二言語を学び始めるべきなのか、どのような方法が最も効果的なのか、という悩みである。

日本語を学ぶのと同じように自然に英語を学べるので幼少期から開始するのがよいと聞くこともあれば、一方で、早期英語教育は日本語の発達が損なわれるので日本語がしっかりと確立されてから英語学習を開始するのがよいと聞くこともある4),5),6)

親たちは、このような異なる意見が世の中に多数存在することによって混乱し、子どもにとっての最善策を知ることが困難になっている。特に、一つの言語のみが話される家庭で育った日本の親たちにとっては、尚更である。

本論文は、英語教育に関する懸念事項をすべて解決することはできないが、日本の親たちや教育者にしっかりとした判断の基盤を提供することを目的に、メディアでは一般に議論されていない視点からこの課題に取り組む。

本論文は、心理言語学や神経言語学の分野における研究結果を集め、言語と脳の関係に焦点を合わせる。本論文の二つの章のうち、第1章は、二言語環境で育った子どもの脳発達に着目し、異なる種類の言語接触を経験した子どもたちに関する研究を紹介する。

同時性バイリンガル(3歳以前に第二言語に触れた子ども)、後続性バイリンガル(3歳を過ぎてから第二言語に触れた子ども)、モノリンガル(一言語のみの環境で育った子ども)1)、これら3グループにおける脳発達の類似点と相違点を明らかにする研究である。

目的は、幼少期から二言語に触れて育った子どもたちの脳が混乱を生じさせることなく第二言語を処理できる能力を有することが明らかになる証拠を提示することである。第2章では、成人の発達脳について、そして、言語を統制する基本的メカニズムがどのように幼少期から発達するかという点について着目する。

これらは、脳が混乱することなく二言語環境に対応するためにいかに高い能力を備えているかということについて、深い洞察を得ることができる重要な要素である。

これら二つのテーマに基づいて議論することで、幼少期からの二言語環境が発達の遅れや脳の混乱の要因とはならず、それどころか、早期からの第二言語習得の過程で生じる脳内の変化は、二つの言語を同時に脳内に保有することに適した脳神経ネットワークを発達させるために重要であることが明らかになるはずである。

さらに、二言語を絶えず使用するバイリンガリズムは、後の人生において一定の利益さえもたらすものである。

 

 

方法

 

本論文は、アメリカと日本で英語と日本語のバイリンガルとして育った著者の経験に基づき、特に神経言語学の分野におけるバイリンガリズムに関する既存の理論とモデルを中心に選定した研究を比較及び要約し、事実や事例を叙述し考察(ナラティヴ/物語的考察)する質的研究手法を用いる。

これは、言語と脳の関連についての全事項を包括的に研究することを意味するものではなく、本論文は社会的関心の的となっている特定の懸念事項を明らかにすることを意図して執筆するものである。

ここで留意すべきことは、神経言語学が、目的と手法に応じて多様な種類がある非侵襲性(生体に何らかの変化をもたらさない)の脳画像化技術によって、この15年間で大幅に成長した比較的新しい研究分野であることである7。本論文にて要約する研究は、これら技術の多くを用いているが、各技術の詳細な説明は省略し、代わりに、その研究結果を実用化に向けて解釈することに重点を置く。

 

 

1. バイリンガルの脳における言語発達

 

前述の通り、日本人の大多数は家庭で日本語のみを話すため、幼少期から二言語を習得しながら育つことがどういうことなのか想像しがたい親は多い。この点で、日本の親にとって、第二言語が子どもの脳に与える影響について不安を抱くことはごく自然なことである。

残念ながら、日本のメディアの多くは、学術研究に基づいた助言を親たちに与えていない4),5),6)

乳幼児よりも、母語をしっかりと操る年齢の高い子どものほうが第二言語習得に必要とされる認知力をもっている、と考えられがちである。このような論理に基づき、以下二つのもっともらしい仮説が立てられている。

1)幼少期の子どもは、第一言語が完全に発達するまでは、二つの言語を習得するための知的能力をもっていない。2)子どもの脳に大きな負荷をかけることは、脳の混乱や発達の遅れを引き起こす。

しかしながら、言語学や子どもの発達について研究する専門家の間では、幼少期から二言語に接触することは脳に混乱を生じさせず、言語能力や認知能力に悪影響を及ぼさない、という意見で一致している(行動学的研究についてはHoff et al., 2012; Hoff et al., 2015; De Houwer, 2009を参照)8),9),10)  

 

1.2. モノリンガルとバイリンガルの発達過程における類似性

一般的には、個人差はあるものの、バイリンガルとモノリンガルの子どもたちは、同じ発達過程を辿り、成長に応じて到達していく各発達段階・順番も類似している。

例えば、生後6〜12カ月の乳児は、モノリンガルもバイリンガルも 喃語を話し始め、この時期には「バーバー」などと複数の音節(発音される音のまとまりの単位)から成る音を発する。生後12カ月までの間には、単語や文章を理解できるようになり、その後すぐに一語文(一つの単語から成る文)で話し始める。

生後18〜24カ月では、発する単語数が著しく増加し、生後24カ月ごろには二語文(二つの単語から成る文)を話し始める。生後30〜36カ月では、短い文章で話し、例えば英語の場合は、語の複数形や過去形も使用され始める。

生後42カ月ごろで話す言葉は、初対面の大人であってもその大部分を理解でき、生後48カ月ごろには、複雑な文章を話せるようになる。5歳になるころには、いよいよ、短い物語を人に話すことができるようになる10),11)

モノリンガルとバイリンガルの発達過程が類似しているという視点は、大井が日本で行った研究に反映されている。この予備研究では、低年齢時から英語に触れて育った3人の日本人の子どもが調査された。1人目は1歳7カ月から家庭で、2人目は2歳6カ月から家庭で、3人目は4歳10カ月から家庭とインターナショナル・スクールで英語を学び始めた。

家庭での英語学習は、基本的には、英語のDVDや音声・歌を視聴したり、ゲームで遊んだりする[1]ことであった。親は、子どもの英語の発達の様子を、前述の内容と同様の発達段階のリストと比較するように求められる。

子どもたちは2〜4歳の間に英語を学び始めたため、子どもの年齢に関わらず、達したと思われる発達段階にはすべてチェックを入れるように言われる。また、親は、子どもを観察し、発する単語数や、ほかの子どもや大人との対話で使用する言語について、研究者から提供された用紙に記録した。

結果、3人の子どもたちは、日本語のみを話す両親に育てられたという事実にも関わらず、全員の英語の発達が一般的な(モノリンガルの)言語発達段階を辿っていることがわかった11)。これは、3人の子どもたちがそれぞれ異なるペースで意思疎通ができるようになっていたことから、子どもたちが全く同じように発達したことを示すものではない。

この研究は、研究参加者の人数が極めて少ないものの、日本人の幼い子どもが二つの言語において6〜8語を含む文でコミュニケーションできるようになる過程を明らかにする重要な研究である10), 11)

言語の発達段階は、子どもの発達を観察するための良い指標ではあるが、万能ではない。子どもたち一人ひとりが異なる発達をするからである。

5歳の誕生日を迎える前に短い物語を話すことができる子どももいれば、発語までに長い時間がかかる子どももいる。このような違いは、正常な言語発達における自然な多様性の範囲であるが、モノリンガルかバイリンガルかに関わらず、どうしても発語の遅れが顕著な時期を経験する子どもがいる場合もある。

これは、言語のインプット不足や学習障害から生じている可能性はあるが、バイリンガリズムが原因であるという考え方を証拠づける科学的根拠はない8,9。残念ながら、世間では矛盾したアドバイスが提供されており、そのアドバイス内容は子どもがモノリンガルかバイリンガルかによって変わる。

言語発達の遅れが生じているモノリンガルの子どもに対しては、言語インプットのレベルと質を高めるように助言する。ところが、数年に渡って二言語に触れて育ったバイリンガルの子どもに対しては、第二言語が発達の遅れに対する何らかの原因であることが示唆し、社会の少数派言語(例:日本社会における英語)への接触をやめ、社会的に必要な言語(例:日本社会における日本語)のみに集中するように助言する。

バイリンガルの子どもにも、言語インプットを増やす、というモノリンガルの子どもへのアドバイスと同じものが与えられるべきである。親たちは、多くの場合、専門家の助言に従って第二言語への接触をやめさせるが、それでも子どもがまだ困難を抱えている様子を見て医師へ相談しにいくと学習障害だと診断され、やっと医師の介入による本格的な治療を始める10)

子どもが抱える困難の原因がバイリンガリズムではないことがわかっていれば、本来の問題点を特定し、最も適した専門分野で子どもを支援する機会を得られるのである。

[1] 使用教材は、Disney’s World of English/ディズニーの英語システム(ワールド・ファミリー株式会社)である。

 

1.3. モノリンガルとバイリンガルの脳発達における相違性

モノリンガルとバイリンガルは、幼少期に同様の言語発達の過程を辿る一方で、明確に異なる発達を経験する。同時性バイリンガルの子どもは、一つの言語のみに触れて育ったモノリンガルと異なり、二つの言語に触れて育つ。

発達において類似する点は多いが、脳神経ネットワークの発達には違いが見られ、その違いが一つの脳内に二つ以上の言語を同時に存在させやすいように脳が発達することを促している。

モノリンガルもバイリンガルも、言語使用時に複数の脳領域が活性化される。言語を処理する古典的な脳領域は、ウェルニッケ野とブローカー野である。

ウェルニッケ野は、聴覚野と視覚野の間に位置する、左脳の上側頭回の後部にあり、言語理解を司る。ブローカー野は、左脳の下前頭回に位置し、言語の産出に関わる。

言語に関与する脳領域は、ウェルニッケ野とブローカー野のみではないが、様々な目的に応じて、異なる脳領域が互いに繋がり合っている。各領域は、白質路とも呼ばれる、神経線維の束を通じて情報を伝達し合う。上側頭回と下前頭回を接続する白質路の一つは、弓状束と呼ばれ、主に会話やコミュニケーションを処理する12)

モノリンガルとバイリンガルの両者が、これらの同じ脳領域を、言語産出やコミュニケーションに使っている。しかしながら、言語課題の内容によって、脳の活動範囲や活動レベルに関する違いがあることが明らかにされている13),14)

言語課題は、音声や文法、語の意味など、言語の様々な要素に基づいている。この数十年間、これらの異なる言語要素がそれぞれどの脳領域で機能しているのかを明らかにしようとする研究が多数行われてきた15),16)

脳神経は、子どもが言語の各発達段階に達するにつれて、特定の方法で言語を処理できるように発達していく。次に、バイリンガルの脳がいかに独特であり、この独特な脳処理の方法が、特に音声、文法(構文)、語の意味という分野での言語処理において有益なのか有害なのか、という点について検討する。

 

1.3.1. 音声

音韻論は、言語の音声知覚能力と音声産出能力を研究する言語学の一分野である。

バイリンガルとモノリンガルは、両者とも、一次聴覚野(ヘッシェル回)を通じて音声が入力され、環シルビウス溝言語領域(ウェルニッケ野、上側頭回の後部)音声系列の処理が行われ、ウェルニッケ野からブローカー野へ接続する神経経路である弓状束を通じて言語の意味が伝達され発語に繋がる17)

特に乳幼児期における音声処理のタイミングと脳の活動領域は、バイリンガルとモノリンガルでいくつかの違いが現れる。生後6カ月に満たない乳児は、あらゆる人類の言語の音声をすべて処理できる能力を有している18),19)

その音声の数は、およそ、子音が600、母音が200である20)。乳児の脳は、生後1年間で、統計的学習として知られる処理過程を通じて、母語の音声とその他の外国語の音声を弁別し始める21)

統計的学習とは、人間がもっている能力であり、統計的にどの音声が他の音声と結びつくかを見極め、周囲の環境で日々耳にする音声の中から言葉を読み取ることを可能にし、言語の習得を手助けしている。例えば、英語を母語とする乳児は、類似するものの異なる音声を多々耳にするが、統計的学習に基づき、異なる音素に分類して知覚することができる。

例えば、「seat」に含まれる音素 /i/ と「sit」に含まれる音素 /ɪ/ は類似しているが、それぞれの音素が典型的な「i」の音声とどれくらいかけ離れているかということに着目し、 統計的に近いほうが /i/ 、遠いほうが /ɪ/ 、というように分類するのである。二言語環境で育ったバイリンガルの子どもは、母語ではない言語の音声を処理する期間がモノリンガルよりも長いと考えられており、その結果として、バイリンガルの子どもは二つの言語を統計的に学習する時間がより多く与えられる。

このように、子どもの将来のため、脳は一つではなく二つの異なる言語を処理する準備をするのである。人間の脳は、幼少期から接触していれば、どのような音声も学ぶことができる能力を有している。

子どもの成長に伴い、母語の音声として形成するための脳神経回路は発達していくが、年齢の高い学習者において再生されることはない24)。脳は、母語の音声を弁別できるようになるまでの間に、特に周囲環境で耳にする言語の音声に対応する新たな神経と神経の結合を形成する

。一方、年齢の高い学習者は、すでに形成された神経回路に加えて、新たな回路を形成しなくてはならない25)

これは、脳神経が一般的には加齢に応じて増加するものではないことが要因である可能性があり、ネイティブ・スピーカーと同等の発音を身につけるためには、生後からの第二言語習得が重要である理由の一つである。

ただし、子どもが二つの言語の音声カテゴリを形成するには、質の高い言語の大量インプットが必要なことは留意するべきである。英語を第二言語として学ぶ環境(ESL / English as a second language)においては、目標とするような、より本物の音声カテゴリの能力を身につけやすいが、英語を外国語として学ぶ環境(EFL / English as a foreign language)においては、英語への接触機会が限られるために、そのような能力を比較的身につけにくく、ネイティブ・スピーカーとは異なるアクセントがいつまでも残る可能性が十分にある。

ただし、最近の研究では、バイリンガルは、一言語のみしか話さないモノリンガルとは異なった音声体系をもっているとされている22,23)

バイリンガルとモノリンガルの生後11カ月の乳幼児たちは、聞き覚えのある音声を聞かされると、両グループとも同様の脳領域(例えば、上側頭回・中側頭回の後部や下前頭回)において脳神経が活性化することがわかっている。

しかしながら、バイリンガルは、前頭前野と前頭眼窩野においてより大きく活性化しているという点で、モノリンガルとは明確に異なる18)。これら二つの脳領域は、人間がコンフリクトの解消や認知的な切り替え課題などの競合する刺激を制御することを可能にする実行制能機能と接続している。

脳の実行機能を検査するための課題においては、バイリンガルとモノリンガルの成人を比較したところ、バイリンガルのほうがいくつかの課題において優れていることがわかっている。

例えば、96人の成人(20〜68歳)を対象に、実行制御課題、ワーキングメモリ(作業記憶)課題、単語検索課題の遂行成績をバイリンガルとモノリンガルで比較する研究が行われ、全年齢層のバイリンガルが実行制御課題の遂行成績においてモノリンガルを上回った26)

この研究結果により示されたことは、バイリンガルが言語の音声を処理するために幼少期から実行制御機能を働かせ始め、競合する二つの言語を操りながら成長することを可能にしている、ということである(本論文の第2章にて詳しく論じる)。

 

1.3.2. 文法(構文)

言語の文法を処理する際は、モノリンガルもバイリンガルも、言語に関する古典的な脳神経ネットワーク(左脳の下前頭回、左脳の上側頭回)が活性化する。しかしながら、バイリンガルは、さらに、それらのネットワークの周囲にある脳領域も活性化させている。

ジャシンスカとペティート(2013)13)による研究では、三つのバイリンガル・グループと二つのモノリンガル・グループが比較された。バイリンガルの3グループは、同時性(早期)バイリンガルの子ども、後続性(後期)バイリンガルの子ども、同時性バイリンガルの成人である。

モノリンガルの2グループは、モノリンガルの子どもとモノリンガルの成人である。

研究者らは、機能的近赤外線分光法(fNIRS)という脳画像化技術を用いて、各グループが文法性判断課題を遂行する間の脳の変化を計測して比較した。被験者は、曖昧さのある四つの文法文を解釈することを求められる。

うち二つの文には筋が通った意味があり、残り二つの文はそうではない。評価の対象となる文法の構成要素は、関係詞節と文におけるその役割(主語か目的語)であり、4種類の文に関する質問に対し、手元のボタンを押して回答する。

以下は、4種類の文と文例である13)

 

1)文中の目的語が関係詞節の主語(OS)であり、意味が通る文:

“The light-house guided the sailor that piloted the boat.”

「灯台は、船を操縦する船員を誘導した。」

(関係詞節の主要部名詞「sailor(船員)」は文全体の目的語として機能しているが、関係代名詞「that」そのものは主語としての役割を果たしている。文の意味は、適切に推論されやすい。)

 

2)文中の目的語が関係詞節の主語(OS)であり、意味が通らない文:

“The sailor guided the light-house that piloted the boat.”

「船員は、船を操縦する灯台を誘導した。」

(文の構成要素同士の関係性は1)の文と同じだが、文の意味は適切に推論されにくい。)

 

3)文中の主語が関係詞節の目的語(SO)であり、意味が通る文:

“The sailor that the light-house guided piloted the boat.”

灯台が誘導した船員は、船を操縦した。」

(関係詞節の主要部名詞「sailor(船員)」は文全体の主語として機能しているが、関係代名詞「that」は目的語としての役割を果たしている。文の意味は、適切に推論されやすい。)

 

4)文中の主語が関係詞節の目的語(SO)であり、意味が通らない文:

“The light-house that the sailor guided piloted the boat.”

船員が誘導した灯台は、船を操縦した。」

(文の構成要素同士の関係性は3)の文と同じだが、文の意味は適切に推論されにくい。)

 

文中の主語が関係詞節の目的語である文(SO文)は、文の主語の後に埋め込み文(関係詞節)がある。一方、文中の目的語が関係詞節の主語である文(OS文)は、埋め込み文がない。

そのため、SO文のほうがOS文よりも文法処理が困難である。よって、OS文の成績を標準値として位置づけ、SO文の成績は被験者がいかに高度な文法知識を処理できるかを示すものとして扱われた。

この文法性判断課題において、早期バイリンガルの子どもの遂行成績はモノリンガルを上回ったが統計的な有意差ではなかった。(例:早期バイリンガルの正解率はSO文で56.1%、OS文で74.6%であり、モノリンガルの正解率はSO文で49.5%、OS文で63.5%であった。)

これは、課題遂行成績という行動的側面についての結果であるが、脳画像においては、最も興味深い発見があった。それは、早期バイリンガルと後期バイリンガルの子どもの両グループの脳において、古典的な言語野とともに、認知処理に関わる脳領域(前頭前皮質背外側部)がモノリンガルよりも活性化していたことである。

前述の音声に関する議論で明らかにしたように、認知制御に関する脳領域は、バイリンガルのほうがより活性化し、これが脳内に二つの言語を保持することを可能にする重要な要因である(次章にて詳しく論じる)13)。興味深いことに、 その脳領域の活性レベルを早期バイリンガルと後期バイリンガルで比較すると、後期バイリンガルのほうが前頭前皮質における活性度が高かった。

第二言語に接触する年齢がより高い後期バイリンガルは、英語文法を暗黙的に理解したり母語話者のような文法処理をしたりするのではなく、すでに意識的に理解していた(例:明示的学習)。文法は規則性をもつため、後期バイリンガルがより高い認知的思考力を使って文法規則を学んだことは当然である。

研究者らは、幼少期の経験によって、文法処理を担う典型的な言語野における神経細胞がいかに適応するかという点について強調しており、研究結果は二言語使用の「神経信号」の存在を示す証拠であると主張している27)

バイリンガルの言語経験が左脳の下前頭回と上側頭回を適応させ、成熟に伴ってその構造が変化するからである13)。この研究で調査された言語は英語のみだが、二つの言語の文法を処理するバイリンガル脳の言語野にはモノリンガルとは異なる発達が見られることから、研究結果によって幼少期の二言語接触が第一言語と第二言語の両方に影響を与えることが示唆されることは理にかなっている。

バイリンガルは、文法処理によって脳内に変化が生じる。しかしながら、その変化は、脳神経ネットワークの情報処理が非効率的になることを示すものではない。

むしろ、バイリンガルの文法処理課題の遂行成績がモノリンガルに劣らなかったという行動学的研究結果に見られる通り、バイリンガルの脳神経ネットワークが二言語経験に合わせて効率的になることを示すものである。尚、文法処理課題において、成人のバイリンガルは、子どものバイリンガルと同じように、モノリンガルと同等の優れた遂行成績であった。

 

1.3.3. 語彙の意味

言語は、その意味を処理できなければ有用ではないだろう。音韻や構文が完璧に整っていたとしても、音声に意味を付与する能力がなければ、コミュニケーションは失敗に終わる。

バイリンガルが二つの異なる言語の語彙に同一の意味をもたせ、その二語を混同しない、という能力は興味深い。バイリンガルは、語彙の意味を処理する労力も時間もモノリンガルの2倍必要だと考える人がいるかもしれないが、これが事実であることを示すものはない。

言語を処理する際には、多数の異なる脳領域が活動し、語彙の意味に関する領域も例外ではない。

語彙意味の処理課題(例えば、意味のある単語かそうでない無意味語か、意味を知っている単語かそうでない単語かを判断する課題)28)を遂行する際の意味処理には、腹側後頭側皮質や側頭葉前部、左脳の下前頭回、中心前回、中側頭回後部など17)、数多くの異なる脳領域が関わっていることが脳画像研究結果により報告されてきた。

これらの脳領域は、ある脳領域から別の脳領域へ情報を伝達する神経線維(軸索)の束である白質の経路によって接続されている。

モハデスら(2012)29)は、磁気共鳴画像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)のうち拡散テンソル画像(DTI:Diffusion Tensor Imaging)という手法を用いて、同時性バイリンガルと後続性バイリンガル、モノリンガルの子どもたち(8〜11歳)の脳を検査した。

結果、バイリンガルは、同時性・後続性の両グループが、下後頭前頭束と呼ばれる白質路において、モノリンガルよりも白質の密度が高かった。この下後頭前頭束は、前述の多数の脳領域を接続し、語彙の意味を処理する役割を果たすとされている。

白質の密度が高いことは、認知的処理のスピード30)や情報処理のスピード31)、情報伝達32)と相関する可能性がある。バイリンガルの2グループのうち、後続性よりも同時性のバイリンガルのほうが白質の密度が高かった。

研究者らは、幼少期から二言語に触れ始めることは、結果としてより多くの言語使用と言語接触を経験することになり、それが特に語彙の意味処理に関する脳神経ネットワークの接続を強化する、と結論づけた27)。二つの言語が同様の脳領域をコミュニケーションのために使用するのであれば、そのコミュニケーションを円滑にするための神経回路は、モノリンガルと同じように、語彙の意味処理をより素早く行う必要があると考える。

一般的には、バイリンガルとモノリンガルの脳は、同様の方法で発達するものの、わずかな違いがある。このことは、いかに脳が異なる環境に適応するかを示している。

これらの脳の違いは、幼少期から二言語に接触した子どもに利益をもたらすことは明白である。子どもたちの中には、学習困難や学習障害、発達の遅れに直面する者もいる。

これらの問題を抱えている子どもの親には、言語そのものが問題の原因である可能性は低いという見識に基づき、専門家に相談することを勧める。しかしながら、この提言は、その子どもが継続的に二つの言語に接触していることを前提とするものである31),32)

継続的な言語インプットが困難である家庭の場合、その対応結果に個人差が生じる可能性はある。脳における認知制御機能が強化されることは、二つの言語をインプットすることの利点の一つであり、この点を次章のテーマとして論じる。

 

 

 2. 脳における言語統制—二言語を混ぜて話すこと—

 子どもが二言語を話す能力を発達させながら育つとき、その脳内にはそれぞれの言語が同時に存在する。言葉を話すときには、脳はどちらの言語をいつ使うか把握する必要があり、いずれかの言語が活性化している間にはもう一つの言語を抑制することによってそれを可能にしている。

バイリンガルは大抵の場合二つの言語を使い分けるが、両言語を混ぜて使っていることに親が気づくこともある。これを脳が混乱している兆候だと捉える親や、言語の制御機能に障害があるとまで解釈する親もいる。実際、過去には、この脳の混乱を指摘した研究もある35)

もし、言語を混ぜることが好ましくないことだとしたら、そして、もし、子どもが置かれている環境に二つの言語が存在することがその好ましくない行為の原因であるとしたら、当然、幼少期から二言語環境で育ったバイリンガルの成人の言語的制御を担う神経システムの発達を遅らせる、と予測されるだろう。

しかしながら、言語を終始切り替えながら発達した脳における言語を制御する機能は、標準を下回るのではなく、その機能が高められ、モノリンガルよりも効果的になることが研究によって明らかになっている17),36),37)

本章にて論じる脳に関する研究論文は、バイリンガルとモノリンガルの成人の脳を研究したものである。子どもではなく成人の脳を調査したそれらの研究を分析することにより、早期からの二言語習得あるいは後期からの第二言語習得の副産物としてどのような結果や効果があるのかを理解することができる。

このように、二言語使用が子どもの長期的な脳発達に及ぼす影響について調査するためには、成人を対象とした研究も重要である。

 

2.1. 一つの脳に二つの言語

言語を混ぜることが脳神経ネットワークに与える影響について検討するためには、言語の制御に関与している脳領域を特定する必要がある。

いくつかの研究により、言語を制御する脳領域が一般的な認知制御を担う脳領域と重なっていることが判明している。一般的な認定制御に関わる脳領域には、前体状皮質や前頭前野、下頭頂小葉、そのほかの皮質下構造などがある38),39),40)

アブタレビら(2012)36)は、どの脳領域が言語の制御を担っているかを確証するため、イタリア語・ドイツ語のバイリンガルとイタリア語のモノリンガルに、言語的認知制御課題(言語切り替え課題)と非言語的認知制御課題(フランカー課題)を遂行させる研究を行った。

被験者の機能的磁気共鳴画像(fMRI:Functional Magnetic Resonance Imaging)を言語的課題遂行時と非言語的課題遂行時で比較したところ、バイリンガルの脳では前帯状皮質(厳密にはブロードマン領野(BA)32)と補足運動野(BA6)が活動していた。

モノリンガルの脳も、 言語的課題と非言語的課題の両方において前帯状皮質が活動していた36)。これは、バイリンガルもモノリンガルも、言語的な認知制御と一般的な認知制御の両方において、前帯状皮質が重要な役割を果たしていることを意味する。

もし、言語的な認知制御を担う領域と一般的な認知制御を担う領域が前帯状皮質で重なっているのであれば、言語を終始切り替えることは前帯状皮質を活性化させ、言語的な認知制御機能のみならず、一般的な認知制御機能にも影響を与える可能性がある。

ここで、日常的に使用する一般的な認知制御機能の例をいくつか挙げると理解しやすいかもしれない。脳は、一般的な認知制御をするときには数多くの機能を働かせるが、前帯状皮質は特にコンフリクト(競合、対立)を監視する機能をもつ41)

本論文においては、一般的な認知制御とは、外的な要因あるいは内的な要因により発生するコンフリクトを監視することを指す。

例えば、混雑していて雑音がうるさいコーヒー・ショップで読書をしようとする場面を思い浮かべてほしい。

このとき、前帯状皮質は、読書に集中できるように気の散るような音を制御する。これは、外的な要因によるコンフリクト制御である。

次に、例えば、読書の場所を静かなカフェに移したものの、やらなければならないことで頭がいっぱいになっている場面を想像してほしい。

これは、内的な要因により気が散っている状態である。この場合においても、前帯状皮質が読書をするという目的に集中できるように働いている。

このように、一般の人々の日常的な活動において、前帯状皮質が重要な役割を果たしていることは明白である。

研究者らは、バイリンガルとモノリンガル両方に関係する脳領域を明らかにしてから、バイリンガルとモノリンガルの被験者における脳の機能的及び構造的違いを理解することに注目した。つまり、二つの言語を切り替えることは、前帯状皮質に良い影響を与えるのか悪い影響を与えるのか、ということである。

被験者には、言語切り替え課題とフランカー課題の両方を2回ずつ遂行させた。目的は、言語的課題と非言語的課題の両方においてコンフリクトの監視機能が高まるかどうかを観察することである。

フランカー課題は、非言語的な活動に対するコンフリクトの影響を調べるものである。被験者は、横一列に並んだ記号の中央に位置する矢印に注目し、できる限り速く正確に手元にある二つの反応ボタンのうちいずれか(「←」または「→」)を押して、その矢印が左右どちらの方向を指しているかを回答する。

1回目は、バイリンガルとモノリンガルの反応時間と正確さは同等だった。しかし、2回目は、バイリンガルのほうがより速く正確に回答した36)

これは、課題遂行という行動的な側面において、コンフリクトが生じる状況に対してバイリンガルの前帯状皮質のほうがより効率的に適応することを示す。バイリンガルの機能的脳画像診断においても、言語的課題と非言語的課題それぞれの2回目遂行時のほうが前帯状皮質の活動が低下していた。

研究者らは、前帯状皮質が関わるコンフリクト監視課題において、バイリンガルはより少ない労力でモノリンガルよりも優れた遂行成績を出せることを示唆した。脳の構造的な側面では、コンフリクトが生じる課題の遂行時に活性化した前帯状皮質やそのほかの認知制御に関わる脳領域において、バイリンガルの灰白質の容積のほうが極めて多かったことが報告された36)

特定の脳領域で灰白質の容積が多いことは、一般的に、課題遂行能力がより優れていることと相互関係があり42)、この研究においても観察された。

被験者であるバイリンガルは、全員が二言語の熟達度が高く、幼少期から二言語に触れて育った。幼少期からバイリンガルでいることにより、言語の切り替えを行う機会が数多く与えられ、言語の切り替えを行うことなく一言語のみを話す人よりも頻繁に前帯状皮質を使うことになる。

この研究により、幼少期からの二言語習得が言語の制御を担う脳領域に悪影響を及ばさないことは明らかである。それどころか、研究者らは「幼少期からの二言語使用は、前帯状皮質を“チューン・アップ”し、より効果的にコンフリクトに対処できるようになる(IBS訳)」と主張している36)

つまり、前帯状皮質を終始働かせているバイリンガルの子どもは、より効果的で適応力のある前帯状皮質を発達させ、その高められた機能は成人になっても受け継がれるのである。

子どもが言語を混ぜて話す様子を見た親は、子どもの脳がまだ発達の途中にあること、そして、この発達段階においては子どもの認知力に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ、二言語を使用する過程が言語の制御のみならず一般的なコンフリクトに対する認知制御機能に好影響を与えることを理解するべきである。

このように、二言語間で言語を切り替えることが及ぼす有益な影響について見識を得られる研究について理解したところで、まだ答えの出ていない疑問がある。子どもはなぜ言語を混ぜて話すのだろうか。まるで、それが脳にとって有益であることを子どもが知っているかのようではないだろうか?

言語を切り替えることや言語を混ぜて話すことについては、数多くの研究が行われてきており、コミュニケーション能力が高いことの表れであるとの見解で一致している43),10),44)。バイリンガルの成人も言語を混ぜて話すが、彼らは二言語を両方とも使用することの目的をはっきりと意識している。

一方、幼い子どもは、二つの言語が異なる言語であることを明確に意識していない可能性がある。例えそうだとしても、幼い子どもも目的をもって言語を混ぜて話す様子が観察されている。

著名な言語学者であるフレッド・ジェネシーは、子どもが言語を混ぜて話すことについて研究を行ってきた。

ジェネシーは、自身の総説論文において、子どもが言語を混ぜる場合は、文章の中にもう一方の言語の語彙が使われていたとしても、その文法構造は損なわれないままである、と述べている。大抵の場合、意識しているかどうかに関わらず、 子どもは 二言語のうちいずれかの言語の文法規則に従っている43)

これは、いかに言語を混ぜて話すことが脳の混乱を招かないか、ということを裏付ける証拠である。また、ジェネシーは、子どもが二つの言語を混ぜて話すことができる理由をいくつか述べている。

まず、言語Xを言語Yに混ぜて話すことにより、言語Yで知らない単語の「不足を補う(IBS訳)」ことができる、という理由の説明がある43),45)。この目的で言語を混ぜて話す子どもは、コミュニケーションを円滑にするために、単に自分がもっている言語能力を総動員しているだけなのである。

これは、発達段階にあるモノリンガルの子どもが、コミュニケーションをとろうとして、文章の中に“間違った単語”を入れる場合があることによく類似している。しかしながら、バイリンガルが二言語を混ぜて話す文章は、大抵の場合、文法的に正しいだけでなく、用いられている単語も正しい単語である。

次に説明されている理由は、周囲にいる人が誰なのか、話題が何なのか、などといった文脈に対して子どもが敏感であるという観察に基づいている。両親が二つの言語を切り替えて話すバイリンガル家庭で育った子どもは、親と一緒にいるときのほうが、ほかの人々と一緒にいるときよりも二言語を切り替えて話す傾向にある10),43),46)

最後に説明されている理由は、幼い子ども(1〜2歳)でさえ、より年齢の高い子ども(4歳以上)であればなおさら、自分の主張を通すため、相手に訴えかけるため、親が言った言葉を引用するため、ときには話題を変えるためにも、言語を混ぜて話す、というものである47),48),43)

これらは、子どもが二言語を混ぜて話す理由として言語学者が提示してきた説明のうちの三つにすぎないが、これらの理論から、子どもの脳は自らが置かれた環境に応じて効果的にコミュニケーションを図る方法を学んでいくということは明らかである。

幼い子どもは、使用する言語が一つか二つかに関わらず、伝えたいことをどのように言うかを考える過程に時間がかかる。バイリンガルが“間違った言語の単語”(もう一方の不適切な言語の単語であるために間違いと認識される単語)を入れて文章を完成させる場合は、コミュニケーションの方法を創造的に編み出していることの表れである。

そして、この間には、前述してきた脳における制御の中枢神経が働いており、前帯状皮質などの脳領域の機能を高める。

アブタレビら(2012)によって行われた研究では36)、脳における言語の制御機能が極めて効果的に働いていたバイリンガルの被験者は、言語習得を幼少期から開始しており、調査時点で両言語の熟達度が比較的高く、生涯に渡り両言語に終始触れて育っていた。

このような条件を満たせば、言語の制御機能は最も優れたものになる。ただし、短期間のうちに一方の言語への接触が減った場合は、以前よりも、前帯状皮質などの言語を制御する脳領域の機能が弱くなり、二言語を切り替える効率も低くなることがほかの研究で報告されている49)

 

2.2. 二言語への接触

二言語への接触がバイリンガルに与える影響を調べるため、ある研究グループ49)が幼少期から二言語に触れて育ち両言語の熟達度が高いバイリンガルの中国人大学生を対象に研究を行った。

そのバイリンガルたちは、全員が広東語と北京語の両方を話しながら育っており、第一言語と第二言語の両方を使って無声ナレーション課題を遂行することを求められた。昼、夕暮れ、夜、それぞれの写真を見て、前日の各時間帯に何をしていたかを口に出さずに心の中で語る課題である。

この精神作業課題を遂行している間、被験者の脳神経活動が観察された。学生たちは、二つの異なる状況で課題を遂行した。

一回目は、被験者全員が二つの言語で接触量と使用量がほぼ等しい(広東語50%、北京語50%)時期に行った。2回目は、被験者が家族と一緒に30日間の休暇へ出かけたあとに行った。

休暇先では、平均して広東語90%、北京語10%の割合で接触していたことが学生たちによって報告された。結果、第二言語(北京語)への接触が減った30日間のあとに行った2回目においては、生まれたときから使用してきて熟達度が高いにも関わらず、第二言語による課題遂行時に言語の制御を担う脳領域がより強く活動したことがfMRIによる脳画像によって明らかになった。

具体的には、言語の制御においてそれぞれ異なる役割を果たしているとされる、左脳の弁蓋部(下前頭回の一部であるBA44)、左脳の中前頭回(BA9)、左脳の尾状核、左脳の前帯状皮質が最も強く活性化していた49)

この研究論文の著者らは、この研究結果を、短期間(この研究においては30日間)であっても言語への接触が減ると前述の脳領域が一言語のみを必要とする新しい言語環境に適応することの証拠として解釈した。このような現象について言及する際には、グリーン&アブタレビ(2013)50)が作り出した「適応制御」という用語が使われる。

前帯状皮質は、言語の制御を監視するために日頃から繰り返し使われているときには活動が低下し、常に使われているという状況でないときには活動が強まることが脳画像に表れる36)。また、両言語を日常的に使用するバイリンガルは、前帯状皮質をより頻繁に使う。

それは、使用しない言語を抑制する機能を働かせる必要があるからであり、これが前帯状皮質の機能を高めるのである。対照的に、一方の言語への接触と使用機会の減少により、言語の制御を監視するために前帯状皮質をあまり使っていないバイリンガルは、前帯状皮質の機能が低下する可能性がある。

そして、二つの言語を使う環境に戻ったときに、使用していなかったほうの言語を抑制するために、前帯状皮質はより多くの活動が必要となる可能性がある。ただし、一定の期間が経過すると、前帯状皮質の機能は正常に戻る。

この研究結果は、本論文の著者の経験からしても理にかなっている。

著者は、アメリカで生まれたため第一言語は英語であったが、7歳のときに日本へ移り住み、英語と日本語のバイリンガルになった。家庭内の言語は英語だったが、家庭の外では日本語を使用し、日本に住んでいた10年間で両言語の熟達度が高くなったのである。

17歳のときにアメリカへ戻り、日本語に触れることがほとんどないまま10年間を過ごす。日本語をできる限り多く使おうとしたが、日本語への接触機会が限られているため、日本語を長時間使うと頭が疲れてぼんやりした。

日本へ戻って仕事を始めたときは、常に日本語のみの環境で過ごすと、短時間であっても強い疲労感があることに気が付いた。しかしながら、数カ月経つと、それほど疲れなくなり、異なる環境の中で自然に役割を果たすことができるようになった。

当時は、なぜ自分が日本語環境によってそれほど大きな影響を受けるのかわからなかったが、完全に日本語のみの環境の中、脳が強いほうの言語(英語)を抑制しようとして普段以上に懸命に働いていたようである。

認知制御の脳領域が適切に働いていたものの、最も効果的に機能している状態ではなかったため、疲労感をもたらしたのである。

幼少期から二言語環境で育つと脳の発達の遅れや混乱が生じる、というメディアでよく見られる議論には、信頼性がない。現実には、日常的な二言語使用と二言語接触は、脳の処理能力を高めてくれる。

もし、第二言語を習得したいと思うのであれば、明らかな利点があるのだから全力を注ぐほうがよい。もし、子どもが言語的な問題に直面したら、両方の言語への接触量を増やすことが効果的である可能性がある10)

これらを理解しておくことは重要であり、二言語環境が脳の認知制御機能へ与える良い影響は、成人の初期のみでなく、年齢を重ねても受け継がれていく。

 

2.3. 加齢とバイリンガリズム

二言語使用は、若い人と同様に高齢者の脳にも良い影響を与え、その影響についての研究も多数行われてきた。それらの研究結果により、二言語使用が下頭頂葉など54)の認知機能障害に関係する脳領域の灰白質を増量させることで神経保護効果を働かせ53)、アルツハイマー型認知症の発症を遅らせる51),52)ことがわかっている。

このような結果は、中国人バイリンガルの高齢者に第一言語と第二言語による命名課題(語彙処理)を遂行させ、その間の脳活動を中国人モノリンガルの高齢者と比較した研究に基づいている。バイリンガルの高齢者の灰白質が増量するには、二言語の熟達と日常的な二言語への接触が必要である。

即ち、二言語環境によって脳の認知機能が良い影響を受けるためには、年齢を重ねたバイリンガルにとっても、二言語を使い続けることが若者のバイリンガルと同等に重要である。

 

 

結論

 

本論文では、幼少期からの第二言語教育は不必要であり言語発達を遅れさせることがある、というメディアやときには教育者の間で語られている誤った考え方を浮き彫りにするため、神経言語学の分野から選出した研究を提示してきた。

これまで考察してきた研究結果によると、幼少期からの二言語接触は、発達段階にある脳を二言語環境に適応させ、複数の言語を処理する能力において脳がより効果的に働くことができるようになる。子どもが幼少期から二言語に触れた場合、子どもにはそのように脳を組織する能力があり、目標言語の話者に近い発音や文法情報の処理、語彙理解が二言語で可能になる。

人間は、二つの言語を処理できる能力をもっているだけでなく、言語の制御を手助けする脳神経ネットワークが発達することにより、混乱が生じることなく、同一の脳内に二言語が存続することができる。さらに、言語を制御する脳神経ネットワークの日常的な使用によって、一般的な認知制御能力がより効果的に働くようになることも二言語使用の利点である。

脳は環境への適応力が高いが、このように脳が変化するためには重要な要因がいくつかある。それは、二言語への接触開始年齢や熟達度、接触の種類や量である。

子どもの脳が二つの言語を操る能力をもっていることは研究で明らかになっているが、一つの疑問が残る。日本のような国において、子どもが高い言語スキルを身につけるために必要な環境を親が与えることはできるのだろうか。

もし、子どもの脳が言語接触に応じて良い方向に適応するのであれば、どのような言語接触が適切なのかを知ることは、親にとって極めて重要である。

脳における言語について学ぶことは基礎として重要であるが、モノリンガルの親が子どもに与えられる言語接触の種類など、検討するべき言語習得の側面がほかにも数多くある。これらの重要な論点については、次の総説論文にて考察することにする。

 

 

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利益相反について(COI)

この論文は、ワールド・ファミリーバイリンガルサイエンス研究所のサポートを受けて作成されました。

This study was supported by World Family Institute of Bilingual Science.

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