ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2020.06.11

幼児の第二言語学習を成功させる6つの原則

幼児の第二言語学習を成功させる6つの原則

幼児の第二言語学習を成功させる6つの原則

論文タイトル:

Early Second Language Learning through SparkLingTM: Scaling up a Language Intervention in Infant Education Centers (2020)

SparkLingTMを活用した第二言語学習:乳幼児教育センターの言語指導力が向上

著者:

Naja Ferjan Ramírez and Patricia K. Kuhl

ジャーナル:Mind, Brain and Education

アクセス:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/mbe.12232

 

要約:Paul Jacobs

翻訳:佐藤有里

 

画像素材:PIXTA


まとめ

・研究開発された英語学習カリキュラムをプリスクール(スペイン)で実施したところ、乳幼児の学習成果が従来よりも高かった。

・カリキュラムは、0〜3歳の子どもが効果的に第二言語を学ぶために必要な6つの原則に基づいて開発された。

・早期からの英語指導は、子どもの第一言語(スペイン語)の発達に悪影響を及ぼさなかった。

 

はじめに

研究に基づく学術的理論は、一般社会や教育関係者の人々にとって、あるテーマについて情報提供を受けるうえで説得力の高い考え方となります。しかし、現実世界の状況で活用する方法がよくわからないこともあります。

そのため、研究結果を実際の自然な環境で試すことも重要です。今回紹介する研究チームは、まさにそのような実験を行なっています。

ワシントン大学(アメリカ)の研究所I-LABS*は、乳幼児がどのように第二言語を習得するか、というテーマについて長年研究を行っています。彼らの研究成果は、バイリンガルの言語習得に関するあらゆる研究に新たな知見を与えてきました(Kuhl, Tsao, and Liu 2003; Garcia-Sierra, Ramírez-Esparza, and Kuhl 2016; Lytle, Garcia-Sierra, and Kuhl 2018)。

そして、多様な研究手法により、0〜3歳の子どもの第二言語習得に影響する6つの原則(以下参照)を明らかにしました。

*I-LABS: The Institute for Learning & Brain Sciences(子どもの学習について脳発達の観点から研究する機関)

2017年、これらの原則を実生活で応用した場合の学習効果が調べられました(Ramirez and Kuhl 2017)。今回紹介する研究は、同じ研究チームがこの実験内容をさらに発展させたものです。

子ども(0〜3歳)の第二言語習得に役立つことが実証された原則に基づき、マドリッド(スペイン)の公立プリスクールで英語の授業を行いました。英語カリキュラムは、以下の6つの原則によって構成されました。

 

<子どもの第二言語習得における6つの原則>

原則1. インプット量の多さ:

できる限りたくさん子どもに話しかける(Weisleder and Fernald 2013)。

原則2. 乳幼児向けの話し方:

大人に話すときよりも、高い声とゆっくりとしたテンポで、大きな抑揚をつけて話す(Ramírez-Esparza, García-Sierra, and Kuhl 2014)。

原則3. 他者とのやりとり:

子どもとのやりとりが多い遊びをしながら、子どもにとって意味のある反応、子どもの発話や行動に応答するような反応を示す(Strouse et al. 2018)。

原則4. アウトプットの促進:

子どもに応答(ことばや喃語)するよう定期的に促す(Bruderer et al. 2015)。

原則5. 複数の英語話者によるインプット:

子どもにさまざまな英語を聞かせる(Seidl, Onishi, and Cristia 2014)。

原則6. 遊びを通じた学び:

遊びながら、子どもの興味・関心に基づくテーマに沿った学習内容にする(Weisberg, Hirsh‐Pasek, and Golinkoff 2013)。

 

結果、これら6つの原則を活用した英語の授業を受けた子どもたちは、英語を理解する力と話す力の両方が大きく向上しました。研究内容の詳細は、以下に考察します。

 

研究内容

・実験に参加したプリスクール

スペインのマドリッドにある4つのプリスクール(乳幼児教育センター)が実験対象として選ばれ、生後9〜33カ月の子ども計240人が参加しました。うち2校は18週間、残り2校は1年間(36週間)、実験用の英語プログラムを実施しました。

子どもたちは、週5日、毎回45分間、英語を使って遊びます(原則1)。各クラスでは、子どもたちが最大限プログラムに参加できるように、専用のトレーニングを受けた指導員3人以上が乳幼児向けのことば(英語)で子どもたちに話しかけました(原則2・5)。

生後9〜21カ月の子どものクラスは14人ずつ、生後21〜33カ月の子どものクラスは20人ずつのグループに分けられました。これは、子どもと指導員のやりとりを最大限に引き出すためです(原則3)。

各グループの子どもたちは、指導員にリードされながら、前述の6つの原則を取り入れた遊びを体験します(原則4・6)。

各プリスクールは、もともと週2時間程度、絵本の読み聞かせや歌、童謡で英語にふれる活動を行なっていました。研究チームは、実験用の新しい英語プログラムに参加した子どもたちの学習成果を、この既存の英語プログラムに参加した子どもたちと比較しました。

 

・英語指導員

実験に参加した指導員は、研究チームが開発した6つの原則に基づく第二言語指導のトレーニング・プログラム「SparkLingTM」を事前に受講しました。この最新の技術を活用したトレーニング方法の効果を検証することも、研究の目的に含まれています。

もし効果があれば、英語指導のトレーニングを受けさせる人数を増やし、必要なコストも抑えられます。

 

・英語・スペイン語のテスト

まず実験の第一段階として、子どもたちのスペイン語と英語の発達レベルを調べるテストを実験開始前(9月)と実験第18週目のあと(2月)に行いました。次に、第二段階として、18週間参加した子どもたちと36週間参加した子どもたちのスペイン語・英語テストを6月に行いました。

スペイン語のテストは、英語指導によってスペイン語の発達に遅れが生じないかどかを調べるために実施されています。

英語の理解レベルはコンピューターによる語彙理解テスト(CCT/Computerized Comprehension Task)、表出レベルはLENA®︎技術を使って調べられました。LENAは、幼い子どもが身につけられる録音機器です。

録音データを収集し、子ども一人1時間あたり、英語による発語がどの程度の割合であったかが分析されました。

 

結果

毎日遊びながら英語にふれた子どもたちは、スペイン語の語彙発達に遅れが生じることなく、英語力が大きく向上しました。スペイン語の語彙テストの結果は、実験前も実験後も、グループ間の差がありませんでした。

 

・18週間(9月〜2月)参加した子どもたち

実験参加前の9月時点で、子どもたちの英語理解テスト(CCT)のスコアはグループ間で有意差がありませんでした。しかし、2月にテストを行なったところ、新しい英語プログラムに参加した子どもたちのほうが従来のプログラムに参加した子どもたちよりも有意に高いスコアを出しました。

9月時点での平均スコアは前者が11.8で後者が12.5、2月時点での平均スコアは前者が20.9で後者が17.0でした。

英語表出の発達(LENA)は、1時間あたりの発声で評価されました。つまり、この研究チームは、子どもが英語またはスペイン語で発した音声や語彙に加え、動物の鳴き声をまねた音声や喃語も評価しました。

子ども1人1時間あたりの英語発声スコアは、9月時点で両グループとも平均10程度でした。18週間後、新しいプログラムに参加した子どもたちは平均49.5でしたが、従来のプログラムに参加した子どもたちは平均15程度でした。

 

・36週間(2月〜6月)参加した子どもたち

6月には、18週間参加した子どもたちと36週間参加した子どもたちの英語理解テスト(CCT)のスコアが比較されました。結果、18週間参加後に従来のプログラムに戻った子どもたちは、スコアに変化がありませんでした。

しかし、6月まで新しいプログラムに参加し続けた子どもたちは、スコアが約20から22まで上がりました。つまり、新しいプログラムを継続した子どもたちの英語力は向上し続けた一方で、新しいプログラムへの参加をやめた子どもたちは、その後、英語力向上の勢いがなくなったものの、学習した内容を忘れることはなかったということです。

36週間のプログラムに参加した子どもたちは、6月に英語表出のテスト(LENA)を受けました。平均スコアは2月時点で49.5でしたが、6月には83.6にまで跳ね上がりました。

効果量(実験の効果がどの程度大きかったかを測る指標)の数値によると、子どもたちのスコア向上や英語による発声数の増加は、新しい英語プログラムの効果による有意な結果であることが実証された。

 

考察

子どもたちは、第一言語(スペイン語)で理解・表出できる語彙の力を着実に発達させながら、英語の語彙力も急速に伸ばしました。研究に基づく理論を現実世界の状況に応用したところ、良い結果が得られたのです。

この結果が示唆する通り、新しい英語プログラムに参加した子どもたちの英語力は、従来のプログラムに参加した子どもたちよりもかなり大幅に向上しました。

しかしながら、この研究には、6つの原則のどれが最も影響したのかがわからない、という難点があります。1つでも欠けたら学習効果が低くなるかもしれませんし、いくつかの要素を除いたとしても同様の学習効果が出るかもしれません。

論文内でも述べられていますが、学習効果に影響する要素を絞り込むにはさらなる調査が必要です。

それでもなお、この研究結果は、幼児向けに効果的な第二言語学習プログラムをつくろうとする世界中の教育機関にとって有益な情報です。また、子どもの親にとっても、よい英語教育プログラムを選んだり見極めたりする際の指針になります。

例えば、「英語のインプット量は多いか?」、「遊びながら英語にふれさせる方針か?」、「ほかの人と英語でやりとりをする社会的要素はあるか?」、「さまざまな英語を聞いたり、多様な英語話者とコミュニケーションをとったりする機会はあるか?」、「アウトプット量を十分にするための手段は用意されているか?」というように、6つの原則をもとに確認することができます。

これらの確認事項を知っていれば、早期英語教育のプログラムや教室を提供する機関と建設的に話し合えるようになるでしょう。

当研究所(IBS)は、言語学習における社会的相互作用(他者とのやりとり)の重要性を考察した記事をいくつか発表しています。これは、原則3に関わる分野です。

親が一緒に映像を見ることで幼児の語彙学習をサポート

幼児がSkypeレッスンで言語学習するための重要な要素

幼児はどのような映像で単語を学習するのか?

乳幼児の社会的発達と第二言語習得の関係

今回紹介した研究論文で示されている6つの原則がなぜ重要で効果的であるか、という点については、さらに調査を進め、当ウェブサイトで発表していく予定です。

これら6つの原則の根拠となったさまざまな先行研究を深く掘り下げて考察することにより、特に家庭がバイリンガル環境ではない幼い子どもたちがどのように第二言語を習得するのか、ということについて知識を深めたいと考えています。

 

参考文献

Bruderer, Alison G., D. Kyle Danielson, Padmapriya Kandhadai, and Janet F. Werker. 2015. “Sensorimotor Influences on Speech Perception in Infancy.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 112 (44): 13531–36.

https://doi.org/10.1073/pnas.1508631112

 

Garcia-Sierra, Adrian, Nairan Ramírez-Esparza, and Patricia K. Kuhl. 2016. “Relationships between Quantity of Language Input and Brain Responses in Bilingual and Monolingual Infants.” International Journal of Psychophysiology 110 (December): 1–17.

https://doi.org/10.1016/j.ijpsycho.2016.10.004

 

Kuhl, Patricia K., Feng-Ming Tsao, and Huei-Mei Liu. 2003. “Foreign-Language Experience in Infancy: Effects of Short-Term Exposure and Social Interaction on Phonetic Learning.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 100 (15): 9096–9101.

https://doi.org/10.1073/pnas.1532872100

 

Lytle, Sarah Roseberry, Adrian Garcia-Sierra, and Patricia K. Kuhl. 2018. “Two Are Better than One: Infant Language Learning from Video Improves in the Presence of Peers.” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 115 (40): 9859–66.

https://doi.org/10.1073/pnas.1611621115

 

Ramirez, Naja Ferjan, and Patricia Kuhl. 2017. “Bilingual Baby: Foreign Language Intervention in Madrid’s Infant Education Centers.” Mind, Brain, and Education 11 (3): 133–43.

https://doi.org/10.1111/mbe.12144

 

Ramírez-Esparza, Nairán, Adrián García-Sierra, and Patricia K. Kuhl. 2014. “Look Who’s Talking: Speech Style and Social Context in Language Input to Infants Are Linked to Concurrent and Future Speech Development.” Developmental Science 17 (6): 880–91.

https://doi.org/10.1111/desc.12172

 

Seidl, Amanda, Kristine H. Onishi, and Alejandrina Cristia. 2014. “Talker Variation Aids Young Infants’ Phonotactic Learning.” Language Learning and Development 10 (4): 297–307.

https://doi.org/10.1080/15475441.2013.858575

 

Strouse, Gabrielle A., Georgene L. Troseth, Katherine D. O’Doherty, and Megan M. Saylor. 2018. “Co-Viewing Supports Toddlers’ Word Learning from Contingent and Noncontingent Video.” Journal of Experimental Child Psychology 166 (February): 310–26.

https://doi.org/10.1016/j.jecp.2017.09.005

 

Weisberg, Deena Skolnick, Kathy Hirsh‐Pasek, and Roberta Michnick Golinkoff. 2013. “Guided Play: Where Curricular Goals Meet a Playful Pedagogy.” Mind, Brain, and Education 7 (2): 104–12.

https://doi.org/10.1111/mbe.12015

 

Weisleder, Adriana, and Anne Fernald. 2013. “Talking to Children Matters: Early Language Experience Strengthens Processing and Builds Vocabulary.” Psychological Science 24 (11): 2143–52.

https://doi.org/10.1177/0956797613488145

 

 

PAGE TOP