ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2021.09.21

あなたにとって「バイリンガル」とは何ですか?

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あなたにとって「バイリンガル」とは何ですか?

論文タイトル:

Am I bilingual? Reporting on the self-reflections of Japanese EFL learners (2021)

私はバイリンガル?日本人EFL学習者の自己省察に関する報告

論文著者:Blake Turnbull

掲載ジャーナル:International Journal of Bilingualism; p. 1-22

アクセス先:https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/13670069211019467

 

レビュー著者:Paul Jacobs

翻訳:Yuri Sato

 

【目次】

 

バイリンガルであることに対する日本人学習者の見解

私たちは、自分自身をどう捉えているかによって、態度や行動が変わることがあります。神経学的・生物学的研究では、考え方によって脳に変化が起こることがわかっています(Church 2018)。

動機づけの研究では、人は自分を肯定的に見ることでより多くのことを学ぶとされています(Dörnyei and Ushioda 2009)。そうなると、これを外国語の学習に適用することも妥当だと考えられます。学習者としての自分をどう見るかは、学習の過程に重要な影響を及ぼします。

そこで、今回ご紹介する研究は、外国語としての英語を学ぶ日本人学習者は、

1)バイリンガルという概念をどのように定義しているのか、

2)自分自身をバイリンガルであるとみなしているのか、

という二つの疑問について調査しました。バイリンガルであることに対する日本人学習者の見解や信念を理解することは、彼らのモチベーションのマイナス面やプラス面を説明するのに役立ちます。もし、彼らがバイリンガル学習者としての自分を否定的に見ていることがわかれば、彼らが目標を達成できるように積極的に手助けすることができます。

 

どんな研究が行われたか?

● 日本人の英語学習者174名を対象にアンケートを実施しました。

● 学生たちは、19歳〜20歳で、大学のプレースメントテスト(クラス分けテスト)で英語力が中級の上レベルでした。

● 研究手法の詳細については、こちらを参照してください。

 

 

この研究でわかったこと

● 一つ目の研究課題(バイリンガルをどのように定義しているのか)については、「読む」、「書く」、「話す」、「聞く」の4つの領域が同じくらい流暢であることが「バイリンガル」の条件であるという点で、大多数の学生の意見が一致していました。

 

● アンケートに寄せられた「バイリンガルとは」というコメントをいくつかご紹介します。

・2ヶ国語を流暢に話せたり、読めたり、書けたり、聞けたりすることができる人。

・母語と同じくらい自然に話すことができる人のこと。

 

● 二つ目の研究課題である「自分自身をバイリンガルと見なしているのか」については、「自分はバイリンガルだと思うか」という質問に対し、「思わない」が95.4%と最も多く、「思う」は4.6%にとどまりました。

 

● 学生が自信をもてない理由は、以下のようなコメントからもうかがえます。

・母国語同然に話せない。

・日本語以外は自信を持って必要なときに用いることができない。

・コミュニケーションは取れるが完璧ではないから。

 

考察

学生の大半は、二つの言語を同等に使いこなせなければ、バイリンガルとは言えないと考えている、と回答しています。このようなバイリンガルの捉え方は、「自分の能力は欠けている」というマインドセットにつながります。

つまり、英語を母語とする人と自分の英語レベルを比較することで、理想的な成果を得ることができない自分を失敗者と見なしてしまうのです(Grosjean 1989)。前述のように、このような自分に対するネガティブな見方は、特に長期的には、パフォーマンスの低下やモチベーションの低下につながります。

バイリンガルとは、それぞれの言語のモノリンガルになる、ということではなく、連続してつながっている、多様性に富んだ旅路のようなものです(Jacobs 2018)。このことを学生に理解させることが重要かもしれません。

emergent bilingualism(発達途上にあるバイリンガリズム)やmulticompetence(多言語能力)、そしてEnglish as lingua franca (ELF)(共通語としての英語)といった概念を紹介することは、英語を学習している学生が自分はいまバイリンガルの旅のどこにいるのかを確認するのに役立ちます。自分が「発達途上」のバイリンガルであることを否定する必要はなく、自分が持っていないものよりも持っているものに注目することができるのです。

・「emergent bilingualism(発達途上にあるバイリンガル)」とは、バイリンガルになっていく連続したつながりの中の初期段階にある生徒を指します(García 2009, 397)。Turnbull(2018)は、外国語学習者がこのカテゴリーに含まれることが重要であると主張しています。なぜなら、これらの生徒は、必要に応じて両方の言語を使用し、積極的にバイリンガルスキルを発達させているからです。

これは、二つ以上の言語を話す人は、そのスキルレベルにかかわらず、標準的なモノリンガルの人とは異なる複雑な心的言語システムを持っているというバイリンガルの現実を意味する「マルチコンピタンス(多言語能力)」の概念と結びついています(Cook 1992)。

・「English as lingua franca (ELF)(共通語としての英語)」は、グローバルな国際コミュニケーションの手段です。この「リンガフランカ(共通語)」という文脈で英語を話す目的は、二つの言語をバランスよく習得することではなく、自分の英語を巧みに使って意思表示することです。

この事実に基づいて、学生の考え方を変えることができます。実際、世界の英語話者の大半は、英語を第二言語または第三言語として話す人々であり、いずれも習熟度が異なります(Anil 2018)。

 

複数の言語能力を持つ発達途上にあるバイリンガルであることを認識することで、生徒は自分の世界の中で自分の言語を使い、失敗したと感じることなく、自信を持てるようになると考えることができます。

 


(参考)研究で使われたアンケートの詳細

この研究には、19歳から20歳の日本人学生174名が参加しました。全員が中学から高校までの6年間、必修の英語教育を修了していました。参加者の平均英語学習歴は7.08年でした。

全員が、大学のプレースメントテストによって、大学の英語クラスの中で、同じ中級の上のレベルのクラスに分類されました。

 

質問事項:

質問票は、研究者が作成した40の質問をオンラインで実施しました。質問内容は、クローズドエンドの質問(選択肢から回答を選んで答える質問)とオープンエンドの質問(自由記述で答える質問)の両方が含まれています。

また、クローズドエンド型の質問では、参加者に、その質問文にどれだけ同意するかを1~5のスケールで評価してもらいました。例えば、以下のような質問です。

(1), (2), (3), (4), (5)

  1. You are bilingual if you can understand two languages fluently

2ヶ国語を完璧に理解できるならバイリンガルです。

 

オープンエンド型の質問の例は、以下の通りです。

  1. To you, what does it mean to be bilingual?

あなたにとって、バイリンガルとはなんですか?

 

アンケートは二つのセクションに分かれており、一つ目は参加者の言語背景や学習歴、二つ目はバイリンガリズムに対する認識に焦点を当てています。

 

分析:

クローズエンド型の質問の回答は数値化され、SPSS23ソフトウェア(SPSSは言語学や応用言語学を含む社会科学でよく使用される統計パッケージ)に入力して分析されました。そして、記述統計分析で平均値や標準偏差などのデータを決定し、一方、一元配置のANOVA検定で質問の変数間の統計的有意性を決定しました。

オープンエンド型の質問は、テーマに基づいてカテゴリーに分け、テーマに数値を割り当てて、研究者の主観的な解釈で分析しました。

 


■関連記事

日本および諸外国におけるバイリンガリズムへの見解 – バイリンガルが育つ環境としての日本の実情と将来性

 

 

参考文献

Anil. 2018. “English Language Statistics – an Exhaustive List.” Lemon Grad (blog). December 5, 2018.

https://lemongrad.com/english-language-statistics/

 

Church, Dawson. 2018. Genie in Your Genes: Epigenetic Medicine and the New Biology of Intention. Hay House, Inc.

 

Cook, Vivian J. 1992. “Evidence for Multicompetence.” Language Learning 42 (4): 557–91.

https://doi.org/10.1111/j.1467-1770.1992.tb01044.x

 

Dörnyei, Zoltán, and Ema Ushioda. 2009. Motivation, Language Identity and the L2 Self. Multilingual Matters.

 

García, Ofelia. 2009. Bilingual Education in the 21st Century: A Global Perspective. Wiley.

 

Grosjean, François. 1989. “Neurolinguists, Beware! The Bilingual Is Not Two Monolinguals in One Person.” Brain and Language, Bilingualism and Neurolinguistics, 36 (1): 3–15.

https://doi.org/10.1016/0093-934X(89)90048-5

 

Jacobs Paul. 2018. “日本および諸外国におけるバイリンガリズムへの見解 −−バイリンガルが育つ環境としての日本の実情と将来性−−Perspectives on Bilingualism in the World and and Japan:The Reality and Potential.” Jounal of Kid’s Brain Science 1 (1): 1–42.

 

Turnbull, Blake. 2018. “Reframing Foreign Language Learning as Bilingual Education: Epistemological Changes towards the Emergent Bilingual.” International Journal of Bilingual Education and Bilingualism 21 (8): 1041–48.

https://doi.org/10.1080/13670050.2016.1238866

 

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