日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。
2023.05.15
2023年4月17日、ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(以下、当研究所)は、千葉県のSEiRYO学園にて幼児教育者・保育者を対象に、原田哲男教授(早稲田大学教育・総合科学学術院/IBS学術アドバイザー)によるセミナーを実施しました。テーマは、イマージョン教育。当日の概要をご紹介します。
著者:佐藤 有里
当研究所は、研究活動および社会貢献活動の一環として、先進的な英語教育・バイリンガル教育に取り組む教育機関の授業視察、教師との意見交換や勉強会などを行っています。
主に公立の小学校やその教員を対象に活動してきましたが、今回は、イマージョン教育(※1)に高い関心を持つSEiRYO学園から要望を受け、同園の教師・保育者の研修を目的としたセミナーを実施しました。
同園では、イマージョン教育の考え方を取り入れ、子どもたちが英語を使ってさまざまな活動を行う時間を設けています。英語のネイティブ・スピーカーが活動をリードし、日本人の担任教師やバイリンガル・スタッフがサポートする体制が整えられているものの、現場の先生方に専門的な知識が不足していることが課題でした。
そこで、イマージョン教育の研究を専門とする原田教授より、イマージョン教育に関わる教師に必要な知識や考え方について解説されました。
※実際には英語で実施されましたが、本記事では日本語で紹介します。
・外国語学習の考え方は近年どのように変わってきたか
・外国語学習に不可欠な条件をイマージョン教育がどのように満たしているか
・世界各国のイマージョン教育に共通する8つの特徴
・イマージョン教育でよくある質問(日本語の発達、日本人としてのアイデンティティ、社会的・認知的な発達)について
・幼稚園の教育方針とイマージョン教育の相性
今回は、英語と日本語の両方を使ってセミナーを実施し、日本語の学習者(英語ネイティブ・スピーカー)、英語の学習者(日本語ネイティブ・スピーカー)、バイリンガル・マルチリンガル家庭の出身者など、さまざまな背景を持つ先生方との対話を重視しました。
先生方には、それぞれの外国語学習体験や幼稚園での英語活動で感じる疑問点についてお話しいただきましたが、それらと照らし合わせながらイマージョン教育について理解を深めていた様子が伺えました。
また、当研究所にとっても、幼児教育現場でのイマージョン教育の実態、現場で必要とされている知識・情報について知ることができ、貴重な研究活動となりました。
原田教授によると、幼稚園の教育理念とイマージョン教育の考え方が合致しているかどうかは、イマージョン教育の効果に影響する可能性があります。
教育理念とは、例えば、協同学習と個人学習のどちらを重視しているか、活動内容はどれくらい柔軟か、教師はどのような役割を果たすべきか、といったことです。
「イマージョン教育の研究でわかっていることをどのように指導やカリキュラムに活かしたらよいか」という、現場の先生方が最も解決したい課題に取り組むためには、幼稚園の教育全体を考慮し、研究者と教育者が対話を重ねながら、その園に合うイマージョン教育を模索する必要があることもわかりました。
特に私立の教育機関は、特色のある教育理念や教育哲学を持っている場合が多いでしょう。その点も考慮して実態調査や効果検証をすることは、幼稚園イマージョン教育の研究を進めるうえで重要だと考えられます。
(※1)イマージョン教育は、バイリンガル教育の一つの形態。学校の教科を二つの言語(母語ともう一つの言語)で指導し、両方の言語を読み書きレベルまで育て、さらに二つの社会文化を受容できることを目的とする。どの授業をどちらの言語で教えるか、それぞれの言語使用をどれくらいの割合にするかは、各学校のプログラムや学年によって異なるが、幼稚園(5歳)から高校卒業までの間(少なくとも5年間)、全学年で授業プログラムの50%以上を外国語や第二言語で指導することがイマージョン教育の特徴とされる(Center for Applied Linguistics , n.d.)。
■関連記事
Center for Applied Linguistics (n. d.). Glossary of Terms Related to Dual Language/TWI in the United States. Two-Way Immersion.
https://www.cal.org/twi/glossary.htm
<講演者プロフィール>
■早稲田大学教育・総合科学学術院 原田 哲男 教授(IBS学術アドバイザー)