ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

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2021.10.15

小学校教員向け勉強会「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」を開催

小学校教員向け勉強会「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」を開催

2021年9月26日(日)、ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(以下、IBS)は、小学5・6年生担任教諭および英語専科教員を対象としたオンライン勉強会(計2時間/受講料:無料)を開催しました。

テーマは、「小学生アンケート結果をベースにした英語授業の進め方」。2021年3月に社会貢献活動の一環として初めて開催した「4月からの英語授業 こうやってみよう!」がご好評をいただいたことを受け、今回は第2回目となる開催。当日は、全国から約50名の先生方が参加しました。

2021年9月に全国の小学3年生〜6年生405名(小学3年生:100/小学4年生105/小学5年生:100/小学6年生:100)とその保護者にアンケート調査を実施し(調査元:一般社団法人ダヴィンチマスターズ)、そこから見えてきた課題に基づき、勉強会の内容が準備されました。また、グループ・ディスカッションも今回初の試みです。

以下、勉強会の内容を抜粋して紹介します。

 

第1部 「生徒のレベルを考慮した言語活動:スピーキングをベースにしたリスニング指導」

講師:佐藤 久美子氏(玉川大学大学院 教育学研究科 名誉教授)

小学生のアンケート結果

佐藤教授は、小学生に対するアンケートで「英語の授業は好きですか?」という質問に対し、
「好き」と回答した割合が約7割であったことは、ほかの教科と比較しても高い割合であり、子どもたちは英語の授業を楽しんでいることがわかる、と解説。

一方、3割の子どもは「嫌い」と回答。その理由として「英語を聞いても何を言っているかわからない」などが目立ち、小学校の先生がペラペラと一方的に英語で話すことは考えにくいことから、リスニング教材の難易度が高い可能性がある、と分析しました。

さらに、「単語などを覚えるのが難しい」、「英語を覚えることに負担を感じる」という理由も多々見られたことから、「英語=暗記」という考え方は暗記が苦手なslow learner(学習遅進児)にとって苦手意識が強くなる原因になることを指摘。

これらの考察に基づき、スピーキング(言語活動(※1))をベースにしたリスニング指導、生徒のレベル(学力格差や好き・嫌いの違い)を考慮した言語活動、リスニング指導について講演を行いました。
佐藤教授によると、子どもの聞く力が育つ仕組みからして、日常生活に関わる推測しやすい内容(インプット)を聞かせる工夫が必要。そして、英語を聞く前にイラストを見ながら「ここはどこかな?」などとやりとりをする、ところどころで一旦音声を止めて「何が起きたの?」などと質問する、聞き終わったあとに「お話の内容は好きだった?」などと会話する、といったことを通じて子どもたちがすでに知っている知識と結びつけて内容を推測しやすいようにサポートすることが大切です。

また、一字一句を正確に聞き取ることだけではなく、概要を理解する力に焦点をあてることは評価のためにも重要です。知識・技能だけではなく、積極的に聞き取ろうとする「主体的に学習に取り組む態度」などの評価が可能になるからです。

音声で十分に慣れ親しんだ表現を使ってスピーキングさせる際には、子どもが発話をしたくなる必然的な場面をつくり、「このやりとりができたら “よくできました” だよ」と子どもたちに伝えておくと、暗記が苦手な子どもは安心することができ、「ほかにどんなことを伝えたいかな?」とプラスアルファの表現を紹介することで英語が得意な子どもも楽しめる授業になります。

※1:コミュニケーションの目的や場面、状況などを設定し、実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う活動。

 

第2部 「英語表現をどう導入する? 〜言語が使用される場面を意識して〜」

講師:瀧沢 広人氏(岐阜大学 教育学部教育学研究科 准教授)

英語の授業が嫌いな理由に関する回答状況

瀧沢准教授は、小学生のアンケート結果から、英語の授業を嫌いな理由をAIテキストマイニングで分析。結果、小学3年生と小学6年生の回答で「わからない」というキーワードが最も多いことがわかりました。小学3年生の場合は、知らない言語に初めて触れたことによる感想であり、小学6年生になるとまた違う「わからない」が出てくるのでは、と推測。

これからの小学校英語教育では、「わからない」と感じている子どもたちにどのように教えればいいか、ということが課題である、と考察しました。

瀧沢准教授によると、言語の習得は、インプット(聞く・読む)→気づき→理解→内在化→統合→アウトプット(話す・書く)という順に進みます。よって、子どもが「わからない」と感じているということは、「気づき」が不十分ということ。

そこで、今回の講演では、基本表現の導入方法がテーマとなりました。つまり、教員がこれから教えようとしている表現や語句にいかに子どもたちに気づかせるか、という工夫の仕方です。

まずは、教員が実際に体験したことなどを、わかりやすい写真やイラストを見せながら、学んでほしい表現を繰り返し使って紹介。そして、子どもたちに質問を投げかけながら、気づいているかどうか、意味を理解しているかどうかを確認。このように、教員の体験を伝える、子どもたちの体験を伝える、といったやりとりを行う言語活動を通して、自然と学習内容に気づき理解させることで、「わからない」を軽減する具体的なアイデアが共有されました。

瀧沢准教授によると、「言語が使われる自然な場面で導入する」、「使われる場面を擬似的にでもつくる」、「教員の体験を話すことなどによって教室を「目的・場面・状況」にする」といった工夫をすることは、教材研究の醍醐味であり、教師力につながります。

 

第3部 グループ・ディスカッション&発表

参加者が4、5人ずつのグループに分かれ、佐藤教授による課題(リスニング内容の導入アイデア)、瀧沢准教授による課題(基本表現の導入アイデア)を選び、授業のアイデアを出し合う時間が設けられました。

使っている教材や授業の取り組み、デジタル教科書やタブレット端末の普及状況は、全国各地でさまざま。各地の先生方がこれまで実践したことやアイデア、子どもたちの反応を共有しました。「〜でいつも悩んでいるのですが、みなさんはどうしていますか?」、「そのアイデアいいですね!楽しそう!」という声も多く聞かれ、先生同士の学び合いの場になっていました。

ディスカッション後には、いくつかのチームがアイデア内容を発表し、佐藤教授、瀧沢准教授がアイデアの良かった点や関連するアイデアなどをコメント。参加されている先生方が自由に質問できる時間も設け、とてもアットホームな雰囲気で勉強会が終了しました。

 

佐藤先生コメント

朝日新聞(2021年10月17日朝刊)には、学校が好きな小学生は50%程度、という記事が載っていました。アンケートの対象者は異なりますが、今回行った英語授業調査では、約70%の児童が英語が好き、楽しいと感じていました。

この数値は非常に高く、英語教育を推進している教員としては嬉しく感じると共に責任を感じました。好きな理由として、「みんなでワイワイと話し合える授業だから」「外国人の先生と話ができることは楽しい」という意見が多数見られました。

やはり、一方的に教員の話を聞くのではなく、友達や先生方と話すのが楽しいと感じるのではないでしょうか。今回私も、「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う言語活動が大切」という話をさせていただきましたが、子どもたちも同じ思いであると強く感じました。一方で、今回参加された英語専科の多くの先生方は、具体的な言語活動についてもっと知りたい、他の先生方の活動も知りたいと話されていました。

研修の意義を強く感じました。

 

瀧沢先生コメント

今回、ダヴィンチマスターズによる小学校英語授業におけるアンケートで、今後、私たちが考えていかなくてはいけないことが見えてきたような気がします。それは、〝わかる英語授業の確立″です。

とかく英語の授業は、「わかった」「できた」ということがなかなか実感されない教科です。いつ、どんな場面で児童は英語がわからないと感じるのか、また、どのような指導過程を踏めば、わかる英語授業になるのか、ということも、今後、話題の中心となっていくでしょう。

そういう意味では、児童の言語習得の認知プロセスに沿いながら、今一度、言語材料などの指導過程について整理し、わかる英語への指導過程を工夫し、私たちの考えを深めていく必要性を感じました。子どもたちの声に寄り添い、児童の〝わからなさ″を克服するためにも、皆さんと共に、研究が進められると幸いです。

私自身、楽しい英語授業から、わかる英語授業へと気付かされた研究会でした。

 

おわりに:子どもたちの「わからない」を軽減するために

今回の勉強会では、今後の小学校英語教育で課題となる点が二つ浮かび上がりました。

一つは、子どもたちの「わからない」を軽減するためには、教員が第二言語習得のメカニズムをよく理解しておく必要があるということです。学習指導要領や教科書の内容を把握しているだけでは、「わからない」、「覚えられない」といった子どもが出てきたときに解決が難しくなります。今日、明日すぐに使えるテクニックやアイデアを知ることも重要だと思われますが、子どもが新しい言語を理解しアウトプットできるようになるためにはどのようなプロセスが必要なのかを知っておくことで、英語への苦手意識をもたせないような指導が可能になるのではないでしょうか。

もう一つは、小学校教員が前向きに英語教育に取り組むためには、教員に対する研修だけではなく、教員同士の交流や情報交換が有効であるということです。勉強会終了後のアンケート回答からは、特に英語専科の教員は学校内で相談する相手がおらず、孤独感を感じていることから、グループ・ディスカッションを通じて大きな充実感を味わっていたことがわかりました。今後も、コロナ禍でオンライン交流が普及したことを活かし、学校や地域という枠を超えて教員同士が普段の悩みや指導アイデアを共有する機会を積極的につくることが必要だと考えられます。

英語が苦手な子どもたちを減らすためには、ただ「楽しい」授業をするだけでは不十分です。英語を使う場面設定が子どもの年齢や興味・関心に合っていること、そして、指導方法が第二言語習得のメカニズムに沿っていることが重要なのです。

 

 

【開催協力】

■佐藤 久美子氏(玉川大学 大学院教育学研究科 名誉教授)

玉川大学 佐藤久美子名誉教授のお写真

<プロフィール>

長年、子ども言語獲得・発達(日本語・英語)の過程を研究し、研究から得られた科学的知見を外国語としての英語教育に応用し、指導法や教材開発を行う。2016年の3月まで、NHKラジオの「基礎英語3」の講師を通算8年務め、テキスト執筆や番組のプログラムに知見を活かす。さらに、2012年度からNHK eテレの『えいごであそぼ』、『えいごであそぼwith Orton』の総合指導、2017年からNHK eテレ『エイゴビート』の番組委員を担当。教育委員会や小中学校でも、多数講演を行っている。

 

 

■瀧沢 広人氏(岐阜大学 教育学部教育学研究科 准教授)

岐阜大学 瀧沢広人准教授のお写真

<プロフィール>

公立小・中学校教諭、教育委員会、指導主事兼主幹、中学校教頭と計30年間の教員生活を経て、2018年より岐阜大学教育学部(英語教育講座)で学生指導に当たる。小学校英語教育を専門とし、児童のコミュニケーション能力の向上、母語習得研究、幼児からの英語教育、小学校教員のWillingness to Communicate の調査、教員研修のあり方などについて研究。楽しい英語授業を追い求め、授業アイデアの提供や教材の提案も行っている。

 

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