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ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2018.08.22

観光業で必要とされる、 異文化の橋渡しをするバイリンガル

観光業で必要とされる、 異文化の橋渡しをするバイリンガル

近年、日本の全国各地で急増する外国人観光客。日本が国策として取り組むインバウンド観光の推進において、外国語を話せる人材が必要不可欠となってきました。観光大国としてさらに発展し続けるためには、ただ外国語を話せるというだけではなく、外国人観光客と受け入れ側の地域住民の間で異文化の橋渡しができる人材が求められています。

 

外国人観光客の急増は、必然的で今後も続く可能性大

日本における2017年度の訪日外客数(観光客のほか、留学生や駐在員、その家族などを含む)は、約2,869万人。1年間で東京都人口の約2倍もの数の外国人が日本を訪れていることになり、前回の東京オリンピックが開催された1964年度と比較すると、年間の訪日外客数は約50年間で80倍以上に増えています(日本政府観光局, 2018; 総務省統計局, 2018)。

日本政府観光局(JNTO)提供のグラフに示されている通り、外国人が急増し始めたのは2013年以降。前年度の2012年3月には、「観光立国推進基本計画」が閣議決定されており、2016年までに1,800万人、2020年初めまでに2,500万人の訪日外客数を達成することが計画の目標に含まれていました。この計画の前段階には、「観光基本法」(1964年東京オリンピックの前年に制定)を全面的に改正した「観光立国推進基本法」が2007年から施行され、翌年には観光庁の設置、さらに翌年には中国個人観光ビザの発給開始など、日本の観光業推進における大きな変化がありました。

また、日本を訪れる外国人の国籍は実に多様であり、法務省(2017)の統計によると、2017年6月末時点で、世界198カ国中153カ国もの人々が観光目的で日本に滞在しています。以下は、日本に観光目的で滞在している外国人の国籍のうち、人数が多い上位50カ国です(法務省, 2017; 国土交通省, 2016)。グラフ棒が赤色の国・地域は、ビジット・ジャパン事業(訪日旅行促進事業)において重点的にプロモーションが行われており、ビザの免除や要件緩和により日本への旅行者が増加した国もあります(国土交通省, 2018)。

つまり、外国人観光客の急増は決して偶然ではなく、インバウンド観光推進が日本の発展のための重要な国家戦略として約10年前から法律で明確に位置付けられ、計画に基づいて達成されたものなのです(国土交通省, 2010)。2020年に東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、2016年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」において2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人と、訪日外客数の目標値が引き上げられたことから(国土交通省, 2016)、今後も日本を訪れる外国人は急増していくと推測できます。

 

  1. 外国語を話せる人材の需要が全国各地で高まる

観光庁は、外国人観光客の急増と彼らのニーズの多様化に対応するため、通訳ガイドの制度を変更し、2018年1月に「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」を施行しました。以下は、通訳ガイド制度の概要をまとめたものです(国土交通省, 2018)。

この約60年ぶりの法改正により、国家資格を有する「通訳案内士」の質向上と同時に、資格がない人も含め、より多くの人が通訳ガイドとして活躍することが期待されています。つまり、外国人観光客の受け入れにあたり、国を挙げて、外国語を話せる人材を確保しようとしているのです。

また、「地域通訳案内士」の制度化は、特に地方において外国語を話せる人材が必要であることを表しています。観光庁によると、地方を訪れる外国人観光客が増加する一方で、その地域の魅力を外国語で伝え、異文化交流の担い手となれる人材の不足が深刻化しています(国土交通省, 2018)。以下は、観光で訪れる外国人が多い都道府県のランキングです。

「ゴールデンルート」と呼ばれる、多くの外国人が選ぶ観光ルートに含まれる都道府県が上位を占めていますが、そのほかの地方を訪れる観光客も増加しています。地方のうち、2012年から2015年の3年間で最も増加率が高い地域は関西(約4倍)であり、次いで九州・沖縄、四国(各約3倍)でした。日本政府観光局(2016)の調査によると、初めて日本を訪れる外国人はゴールデンルートを好む人のほうが多いものの、そのほかの地方を選ぶ人の割合と比較すると、その差はわずかです(ゴールデンルート:54%、そのほかの地方:46%)。また、訪日回数を重ねるほど、地方を選ぶ傾向にあることが報告されており(訪日2回目:50%、3回目:55%、4回目:58%)、2016年度の外国人観光客のうち55.1%は訪日回数が2回以上のリピーターです(日本政府観光局, 2018)。

*日本政府観光局(2016)は、東京、京都、大阪、兵庫、千葉、山梨、静岡、愛知を「ゴールデンルート」と定義。成田空港から東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪、というルートで観光するのが定番と言われる(訪日ラボ, 2018)。

日本政府観光局(2016)は、外国人観光客の地方志向について、以下のように述べています。

つまり、いまは外国人観光客のうち2人に1人が、都市部にない体験を求め、地方の観光地を訪れているのです。しかしながら、日本の通訳ガイドは、長年、国家資格がないと仕事にできないというハードルの高い職業でした。また、資格を取得した通訳案内士の多くが都市部で活動しているという実情から、特例として、資格がなくても自治体の研修を受ければ仕事にできる、という地域限定の通訳ガイドが認められていました。しかしながら、以下の表の通り、地域通訳案内士の制度が導入されている自治体も登録人数も極めて少数です(国土交通省, 2018)。

日本政府観光局(2016)は、訪日外国人旅行者の消費動向とニーズに関する調査の結果として、「訪日外国人には、訪問先の文化や生活をよく理解したいとの欲求から、現地でのガイド付きツアー等にニーズがある。一方で訪問先の現地においては、そのようなニーズに応えるだけのサービスは十分には提供されていない」と報告しました。さらに、地域密着型の通訳ガイドとも言える地域通訳案内士は、「地域における通訳案内業務を通じて得た訪日外国人旅行者の嗜好やニーズについて、地方公共団体や地域の観光の関係者等に提供すること等により地域の観光の質を高めていくように努める」ことが役割の一つとして定められています(国土交通省, 2018)。つまり、外国人観光客と直接会話する貴重な人材として、地域の観光業発展に貢献することも期待されているのです。このような背景により、2018年1月の法改正に至ったと考えられ、国家資格のある全国通訳案内士や地域通訳案内士ではない人も、今後は通訳ガイドにより報酬を得ることが合法化されたことから、早急に多数の通訳ガイドが必要になっていると推測できます。

また、地域通訳案内士と同様に、地域の外国人観光客誘致・受け入れに欠かせない人材として、外国語を話せる地域住民によるボランティア活動の需要も高まっています。例えば、東京都(2017)は2017年に約500名のボランティアを募集し、外国語での観光案内や国・地方公共団体などが実施するイベントや国際会議への協力を求めました。

 

観光業におけるバイリンガルの役割:
3.1. 文化の違いによるストレスを軽減する

日本政府観光局(2016)の調査によると、外国人観光客が地方への旅行を検討する際に懸念する事項には、言語の不便さが含まれます。また、新潟県湯沢町を訪れる外国人観光客*を対象としたアンケート調査(回答数:84件)を実施した湯沢町商工会(2017)は、湯沢町を訪れてみて悪かった点として最も多く挙げられた事項は「英語を話せる人が少ない」であることを報告しました。つまり、観光地における外国語が話せる人材の不足は、観光客に不便さや不安を与え、初訪問や再訪問の可能性を狭めてしまうと考えられます。

*調査対象者の国籍:台湾30人、シンガポール11人、オーストラリア5人、香港13人、イギリス3人、インドネシア3人、タイ3人、フィリピン3人、マレーシア5人、中国3人、アイルランド1人、オランダ1人、スペーイン1人、ブラジル1人、フランス1人

藤田(2009)は、外国人観光客を受け入れる側に必要な整備として、ハード面(案内板や案内所など)とソフト面(人材)のうち、特に後者の遅れが問題となっていることを指摘し、以下のように述べています。

公共交通機関や商品・サービス、アクティビティの説明などの情報提供については、看板や掲示物、チラシ、ウェブ・サイト、翻訳アプリなどのハード面で解決できる場合があり、必ずしも外国語が話せる人材が必要とは限りません。しかしながら、信念や価値観、習慣など、文化の違いで起こりうるストレスやトラブルを防止するには、言葉や行動の背景にある目には見えないものを理解できる知識や経験をもち、それらを外国人観光客と受け入れ側の日本人の両方に共有できる人材のソフト面が必要だと考えられます。外国人観光客は、言葉がわからないことそのものだけではなく、言葉がわからないことにより、現地特有の習慣や価値観、マナーなどの情報が得られないことも不安に感じているのではないでしょうか。また、外国人観光客を受け入れる地域住民も、言葉が通じないことにより、自分たちとは異なる考え方や行動をする外国人に対してコミュニケーションをとれず、不安やストレスを抱える場合があります。

文化の違いによるストレスやトラブルを防止・軽減するには、自分の文化と相手の文化、両方に対する理解が必要です。特に、信念や価値観などは目に見えず、無意識に言葉や行動に表れるため、あらかじめ両文化の違いを把握していなければ、トラブルになりやすい、理解されにくいものが何であるのかを推測したり発見したりすることはできません。例えば、日本の温泉施設でトラブルになりやすい事例の一つに、タトゥーがあります。日本では多くの施設がタトゥーを入れた人の入場を禁じていますが、タトゥーに対する認識や価値観は国により異なります。日本のように、歴史的な背景から反社会的勢力のイメージが根強く残る国もあれば、ファッションや自己表現としてみなす国もあるのです。このことを理解していなければ、温泉を訪れる外国人観光客に注意点として伝えるということを思いつかないのではないでしょうか。気づいたとしても、「あなたはタトゥーがあるから入れません」と一方的に日本のルールを伝え、相手によっては、理由がわからず、差別のように感じる場合もあります。文化の違いを理解している人材であれば、受け入れ側の日本人にも事前に説明し、ルールを知らない外国人観光客の訪問があった場合は相手の文化への理解を示しながらも日本の文化を背景や理由とともに説明する、という対応が現場でできるように手助けすることが可能です。

つまり、「外国語を話せる人材」といっても、観光の現場においては、ただ外国語を話せるだけでは不十分であり、前述のような異文化の橋渡しをすることが重要な役割の一つだと考えられます。以下は、海外に拠点をもつ日本の旅行企業を調査した研究で述べられている、旅行企業の役割についての見解です。

同研究では、「緩衝材」とは、旅行者の好むものを選んで提供し、また、旅行者が快適に過ごせるよう現地の受け入れ側を教育・指導することを指します。これは旅行企業について説明したものですが、旅行者や受け入れ側と直接会話することができる通訳ガイドや外国語を話せる地域住民にこそ、大いに期待される役割なのではないでしょうか。

 

観光業におけるバイリンガルの役割:
3.2. 異文化交流により地域文化の価値を高める

観光の現場においてバイリンガルが果たすことのできる役割は、外国人観光客と受け入れ側双方のストレス防止・軽減のみではありません。バイリンガルが異文化の橋渡しをすることにより、地域文化が守られたり、失われかけていたものが復活したり、活性化したりする場合があります。

例えば、日本昔ながらの山里風景で有名な岩手県の遠野や、宿場町の町並みが残る長野県の妻籠は、近代化や過疎化なども影響し、伝統文化や町の活気が失われつつありました。しかしながら、訪れる観光客との交流により、住民たちが自分たちの伝統文化や町並みの価値に気づき、それらの復活や保存運動を始めたと言われています(Eguchi, 2017)。

観光学の分野では、近年は海外観光のスタイルが「マス・ツーリズム」から「オルタナティブ・ツーリズム」へ変化してきているという分析が多く、後者の説明においては「地域主導」、「人的交流」、「文化交流」、「対応する人が旅行者の経験を作り出す」などがキーワードとして見られます(藤田, 2009)。例えば、日本政府観光局(2016)の調査によると、中国人(30〜40代)やアメリカ人、フランス人は、地元の人と食事をしたい、地元の学校を訪問したい、など、地域住民との交流を希望して地方旅行を選んでいます。つまり、特に地方を訪れる外国人観光客の中には、この新しい観光スタイルを好む人が増えており、ただ「見る」「食べる」といった表面的な体験ではなく、そこに暮らす人々と会話をすることで地域特有の文化を知ろうとしていると言えます。そして、地域住民にとっては、外国人観光客と会話することで、自分たちが当たり前だと思っていた、または古くさいと思っていた習慣や考え方、町並みが、他文化の人々からすると珍しいものであり、実は大きな価値があることを知るきっかけになります。ときには、異質なものを排除する閉鎖的な文化だった村が外国人観光客の受け入れによって視野を広げ、住民たちが新たな文化を築いていくかもしれません。

このような外国人観光客と地域住民の交流において、自分の文化と相手の文化、両方を理解するバイリンガル人材は大きな役割を果たすことができるのではないでしょうか。「観光の本質は「自文化と異文化の交流」にあると言える」と述べる吉田(2017)は、異文化理解力を3つの次元に分類し、それぞれの海外旅行スタイルについて推測しています。この分類における3つ目の「トランス・カルチャー理解」という異文化理解力がある人が好む海外旅行スタイルは、前述の新しい「オルタナティブ・ツーリズム」というスタイルと一致する部分が多くあります。この研究においては、日本人の海外旅行者の多くが「イントラ・カルチャー理解」の次元で表面的な異文化体験しかできていないという問題点を指摘し、観

この研究は、日本人が海外旅行へ行く際の異文化理解力について考察したものですが、外国人観光客を受け入れる日本人にも当てはまると考えられます。もし、地域住民が「イントラ・カルチャー理解」の次元にある場合、異なる文化から自分たちがどう見られているか想像することができず、地域文化の価値に気づくことができません。また「インター・カルチャー理解」の次元にある場合は、地域文化の価値に気づくことができても、見せる、体験させる、といった表面的な方法でしか観光資源を提供できません。しかしながら、もし「トランス・カルチャー理解」の次元で地域の観光資源について考え、さらに外国人観光客と地域住民の出会いや交流を手助けすることができる人材がいれば、地域住民は外国人観光客との交流によって地域文化の価値を再認識し、ときには相手の文化に共感することで地域文化を見直し、さらに価値あるものへと磨いていくことができるのではないでしょうか。ツーリズムの定義と概念を考察した大橋(2013)は、ウェアリングらのオルタナティブ・ツーリズム論を紹介し、ツーリズムについて以下のように説明しています。

このことからも、外国人観光客を受け入れるにあたり、自分たちの文化について「絶対」「当たり前」という固定的な考えに捉われず、異文化との交流がより良い地域文化をつくっていくという認識をもった人材の需要が高いことが伺えます。そして、このような人材により、多くの観光ビジネスや地域活性化のチャンスが生まれ、また、前述の観光の現場におけるストレスやトラブルを防止・軽減することにも繋がるのです。

 

必要とされる人材は、異文化の橋渡しをするバイリンガル

このように、観光の現場では、外国人観光客と受入側の日本人の間で異文化の橋渡しをすることにより、お互いのストレスやトラブルを防止・軽減し、かつ、地域文化の価値を高めることができるバイリンガル人材が求められています。そして、このような人材は、日本が国家戦略として観光業の推進を成功させ、さらに継続するにあたり極めて重要であると考えられます。

観光分野における世界最大の国際機関、国連世界観光機構は、1999年に世界観光倫理憲章を採択し、その前文では「平和のための重要な影響力並びに世界の人々の間の友好と理解をもたらす要素を持つ」と観光の価値について説明しています。また、計10条から成る憲章の第1条には、以下の内容が記されています(UNWTO, 2014)。

観光は、世界の人々の間に「平和」、「友好」、「理解」をもたらすという重要な意義があり、観光客のみでなく、受け入れ側にも、相手の文化・生活習慣・価値観を理解する責任があるのです。同憲章の第2条においても、「十分に柔軟性のある考え方で実施されることにより、観光は自己啓発、相互に対する寛容を実現するためのかけがえのない要素となるとともに、民族や文化の違いやその多様性を学ぶための必要不可欠な要素になる」と明記され、個人や集団における観光の意義も提示されています。つまり、日本が世界に認められる観光大国となるには、異文化の橋渡しをするバイリンガル人材は不可欠なのです。また、日本全国どの地域においても、地域住民の理解や協力が必要であり、外国人観光客と地域住民の間に誤解や排除が生まれてしまっては観光推進を継続することはできません。バイリンガルによる異文化の橋渡しにより、両者の間に平和や友好を生むことができれば、外国人観光客はリピーターとなり、地域住民も彼らを歓迎することができるのではないでしょうか。

金川(2008)は、真の異文化交流としての外国人観光客受け入れのあり方を、「ギャップはギャップとして理解し、それを卑屈に相手の文化にあわせるのではなく、ましてやこちらの文化を理解せよとばかりに押し付けるのでもない」と表現しています。この研究によると、そのような観光の現場において必要とされる英語力は、ただ案内や説明ができればよいというレベルではなく、また、英語の試験で高い点数がとれる能力でもなく、「生活習慣の違いに現れる文化の違いに着目し、それぞれの独自性を尊重しながら差異を伝えあう」ための考える力に基づいた英語力です。

また、ヨーロッパの国際機関である欧州評議会によると、外国語を学習する人は、文法知識や技術により情報を伝えるだけの話者ではなく、その言語を社会的・文化的に適切に使用し、言語や文化が異なる人々と人間関係を築くことができる「intercultural speaker(異文化に対応する話者)」になるべきである、という考え方が言語教育の専門家の間では広く認識されています。従来の外国語学習者は、その外国語のネイティブ・スピーカーの真似をすることで彼らと同じ言語能力や文化を身につけようとし、ネイティブ・スピーカーこそがその道のエキスパートであり、目標とするモデルであると考える傾向にありました。しかしながら、異文化間コミュニケーションの意義や重要性が増している現代においては、ネイティブ・スピーカーになることではなく、異なる文化で育った相手に対し、自分が伝えたいことを正しく適切に説明できることを目標にするべきだと考えられています。欧州評議会は、相手に対する理解において注意しなければならない点として、文化の違いのみでなく、社会の違いも挙げています。同じ国で育った人であっても、例えば、会社員や教師、農業など、職業によって価値観や信念が異なり、それらは無意識に身につくものだからです(Byram et al., 2002)。よって、「intercultural speaker(異文化に対応する話者)」は、相手を「この国の出身だから」とステレオタイプや偏見で判断せず、相手の文化や社会的な背景、さらには個人的な価値観までもよく観察したうえで、相手の言葉を理解し、自分の言葉を考え発する必要があるのです。また、育った文化・社会環境が自分の価値観にどのように影響し、それが異なる文化・社会からはどのように見られているか、という自分自身や自文化に対する客観的な視点も求められます。

近年の日本が語学力を図る目安として取り入れているCEFRという国際基準の指標は、この欧州評議会が定めたものであることを考えると、このような見解は、日本にとって決して無関係ではないと言えます。特に、日本において最も身近な異文化交流の現場である観光業においては、ただ外国語を話せるバイリンガルではなく、「intercultural speaker(異文化に対応する話者)」としてのバイリンガルが早急に必要とされているのではないでしょうか。さらに、将来的には、そのような人材が小さいころから育成される可能性もあります。日本の観光庁は、2008年より、地域の子どもたちが観光客のガイドを行うことを推進する「児童・生徒によるボランティアガイド普及促進事業」を実施しています(国土交通省, 2011)。小さいころから地域の文化や歴史を学び、それらを観光客に伝える経験をさせることで、将来的に地域の観光業で活躍できる人材を育てようとしているのです。観光教育の早期化が進んでいると考えられ、もし、小学校の英語教育において観光教育を効果的に関連づけることができれば、子どもたちは「intercultural speaker(異文化に対応する話者)」の重要性を実感しながら英語や異文化理解について学んでいくことができるかもしれません。

参考文献

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