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ワールドファミリーバイリンガルサイエンス研究所

日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2019.04.09

英語力が世界一のスウェーデン人 〜音楽やテレビ番組・映画の影響も〜

英語力が世界一のスウェーデン人 〜音楽やテレビ番組・映画の影響も〜 © Creative Commons Zero (CC0)

 

英語力が世界一のスウェーデン人 〜音楽やテレビ番組・映画の影響も〜

日本では、世界的な家具メーカーIKEA(イケア)の発祥地として有名なスウェーデン。そのスウェーデンの人々は、「英語力が世界一」という調査結果が発表され、話題になっています。

 

 

スウェーデン人の英語力は世界トップ・レベル

日本では、英語力を判断する際、英検に次いで、日本が初実施国となったTOEICが有名ですが、ETS(2018)公表のTOEIC受験者のスコア国別ランキングにスウェーデンは含まれておらず(ETS, 2018)、「スウェーデン人は英語を話す」というイメージをもつ日本人は少ないのではないでしょうか。また、世界的に有名な英語力テストとしてIELTSもありますが、この国別スコア・ランキングにもスウェーデンは登場しません(IELTS, 2018)。しかしながら、TOEICでは年間の総受験者が500名以上の国のみ、IELTSでは受験者数が多い上位40カ国のみでランキングされているため、スウェーデン人の英語力が低いのではなく、これらの英語力テストを受験する人が少ないことが要因であると推測されます。

一方、EF(2018)が発表した88カ国・地域(非英語圏)に住む約130万人のEF英語標準テスト受験者の分析結果によると、スウェーデン人の英語能力指数(70.72)は世界一。日本(51.8)はもちろん、ヨーロッパ諸国の平均(56.64)と比較しても大きな差があります。また、約10年間で毎年トップ5位以内に入っており、近年は1〜3位の間で推移しています。

出典:EF (2018a)、EF(2018c)

※EF EPI報告書 第1版(2011)〜第8版(2018)のデータを基にIBSグラフ作成

※上位5位以内にランキングされたことがある国と日本のみでグラフ作成。

※上記資料にて未記載だったデータは上記表内で空欄。

 

なお、英語圏出身者を含むTOEFL平均スコアの国別ランキングにおいても、スウェーデンは上位に入っている(日本の平均スコアは71)ことから、スウェーデン人の英語力は世界トップ・レベルであると言えるでしょう。

出典:ETS (2018b)

※出典データを基にIBS表作成

 

スウェーデンで話されている言語

しかしながら、英語はスウェーデンの公用語には含まれておらず、英語を第一言語とする人口は1%未満です。スウェーデンの国語(主要言語)は、スウェーデン語。そのほか、4つの言語(フィンランド語やサーミ語)が一部の自治体における行政機関などで公用語として使用されています(Eberhard et al, 2019)。以下のグラフが示す通り、話者がいなくなりつつある言語も含めると、さらに8つの言語が国内に存在しますが、スウェーデン語を第一言語とする人が圧倒的に多く、国内の公的な場(政治・行政や司法など)ではスウェーデン語を使用することが法的に定められている(Norrby, 2014)ことなどから、スウェーデンは、多民族国家ではあるものの、多言語社会というよりは、日本のようなモノリンガル社会に近いと言えます。

出典:Eberhard et al (2019)

※出典データを基にIBSグラフ作成

 

ところが、英語を第二言語として話す人口を含めると、スウェーデン人口の約9割が英語を使用しており、そのほとんどはスウェーデン語を第一言語としています(Eberhard et al, 2019)。よって、英語が異なる言語を話す異民族同士の共通語として機能しているわけではなさそうです。では、なぜスウェーデンにはスウェーデン語と英語のバイリンガルがこんなにも多いのでしょうか?

出典:Eberhard et al (2019)

※出典データを基にIBSグラフ作成

 

スウェーデン人は、趣味を通じて英語を身につけている?

スウェーデン人は、小学3年生から英語の授業が始まりますが、多くの子どもたちはすでに英語をある程度知っています。日本でも同様のケースは見られますが、家庭教材や英会話教室、保育園や幼稚園などで英語にふれていた子どもたちがほとんどです。スウェーデンの子どもたちは、少し違います。好きな音楽やテレビ番組、インターネットなどを通じて、自然と、ときには無意識に、英語にふれ続けているのです。このように接触する英語は「Extramural English/教室の壁の外側の英語(IBS訳)」や「Out-of-class English/教室外英語(IBS訳)」、「Out-of-school English/学外英語(IBS訳)」などと呼ばれ、それらが英語力に与える効果や影響について研究が進んでいます(Sundqvist, 2011)。

地図データ©2019 Google、INEGI 日本

 

スウェーデンでは1960年代から英語によるテレビ番組などが流行し始め、北欧諸国のテレビ番組の多くはアメリカやイギリスで制作された番組に字幕をつけたものであると言われています(Bolton et al, 2013; Sundqvist et a, 2013)。例えば、スウェーデンの子どもたちや若者は、以下のような英語のインプットやアウトプットの機会が日常的にあります(Sundqvist, 2011)。

 

<英語のインプット>

・英語で歌われている音楽を聞く

・英語で話されている映画・テレビ番組を字幕つき(スウェーデン語など)で見る

・英語で制作されたテレビ・ゲームで遊ぶ

・英語で書かれたウェブ・サイトを閲覧・利用する

・英語で書かれた書籍や新聞、雑誌を読む

 

<英語のアウトプット>

・音楽を聞きながら一緒に英語で歌う

・オンライン・ゲームで海外のプレイヤーと英語で会話する(音声通話やメッセージ入力)

・ウェブ・サイト利用時に英語で情報を入力する

・ブログなどに英語でコメントをする

 

スウェーデンでは、2006年〜2007年の1年間、国内の中学3年生(9年生:15〜16歳)80名を対象にした研究が行われています。この生徒たちは、都市部や地方を含む異なる地域の計3学校(計4クラス)に通学しており、海外旅行歴や親の学歴などもさまざまです。ほとんどの生徒が学校の外でメディアを通じた英語にふれており、そのような英語接触時間は1週間あたり平均18.4時間。音楽が最も多い接触方法であり、次いで、ビデオ・ゲーム、テレビ番組や映画でした。この研究の結果、彼らのスピーキングの流暢さは1年間で明らかに向上していました。また、音楽やゲームなどを通じて英語にふれている時間が多い生徒ほど、スピーキングが流暢であり、ボキャブラリーが多く、自分の英語力に対する自己評価が高いことがわかりました(Sundqvist, 2011)。

EF (2018c)によると、ほかの世界各国と同様、スウェーデンでも都市部は特に英語力が高い傾向にありますが(例:ストックホルムのEF英語能力指数71.06)、最も低い地方(スモーランド地方のEF英語能力指数69.13)であってもヨーロッパ諸国の平均(56.64)をはるかに超えています。このような特徴からも、都市部か地方かに関係なくアクセスできる音楽やテレビ番組、インターネットなどのメディアがスウェーデン人の高い英語力に影響を与えている可能性が高いと推測できます。

 

日本生まれ・日本育ちでもバイリンガルになれる可能性も

EF(2018b)によると、イタリアやフランスの人々は英語力が停滞しており、その要因として、英語が「母国語に対する脅威」としてみなされていることが指摘されています。一方、スウェーデンを含む北欧諸国の子どもや若者たちは、ほかのヨーロッパ諸国(フランスやスペインなどの南部地域)と比較すると、英語力が高いだけではなく英語に対してポジティブな印象をもっており、それらが英語の積極的な使用に繋がり、「英語を話せること」はスウェーデン人としてのアイデンティティの一つと捉えられている、という研究結果が発表されています(Bolton et al, 2013; Norrby, 2014)。

日本でも、インターネット環境やSNS、動画配信サービスの普及により、海外の音楽や動画、テレビ番組・映画などに簡単にアクセスできるようになりました。近年の子どもたちは、親たち世代よりも、英語の歌を聞いたり、英語で歌ったりすることが身近になっています。好きな音楽を聞きながら、好きな歌を歌いながら、好きなテレビ番組や映画を見ながら、好きなゲームで遊びながら、英語が身についていく。このような英語への接し方が高い英語力に繋がることを実証する研究結果がさらに多く発表されれば、「日本生まれ・日本育ちでバイリンガルになることは不可能」というイメージは覆され、早期英語教育やバイリンガル教育、日本人の英語力向上において、新たな可能性が生まれるのではないでしょうか。

 

 

参考文献

 

Bolton, K. & Meierkord, C. (2013). English in contemporary Sweden: Perceptions, policies, and narrated practices. Journal of Sociolinguistics, 17(1): 93-117. https://doi.org/10.1111/josl.12014(2019年3月アクセス).

Eberhard, D.M., Simons, G.F. & Fennig, C.D. (eds.) (2019). Ethnologue: Languages of Sweden: Twenty-second edition data. Ethnologue: Languages of the World. Twenty-second edition. Dallas, Texas: SIL International. Online: http://www.ethnologue.com(2019年3月アクセス).

EF (2018a).「EF EPI報告書」. https://www.efjapan.co.jp/epi/downloads/(2019年3月アクセス).

EF (2018b).「EF EPI報告書 第8版(2018)」. https://www.efjapan.co.jp/__/~/media/centralefcom/epi/downloads/full-reports/v8/ef-epi-2018-japanese.pdf(2019年3月アクセス).

EF (2018c). EF EPI 2018 REGIONAL FACT SHEET: Sverige [SWEDEN]. https://www.ef.com/~/media/centralefcom/epi/downloads/fact-sheets/v8/ef-epi-country-fact-sheet-v8-se-en.pdf(2019年3月アクセス).

ETS (2018a). 2017 Report on Test Takers Worldwide: TOEIC Listening & Reading Test. 国際ビジネスコミュニケーション協会. https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/pdf/Worldwide2017.pdf(2019年3月アクセス).

ETS (2018b). Test and Score Data Summary for TOEFL iBT Tests: January 2017 – December 2017 Test Data. https://www.ets.org/s/toefl/pdf/94227_unlweb.pdf(2019年3月アクセス).

IELTS (2018). Test taker performance 2017. https://www.ielts.org/teaching-and-research/test-taker-performance(2019年3月アクセス).

Norrby, C (2014). English in Scandinavia: Monster or Mate? Sweden as a Case Study.

https://www.researchgate.net/publication/267748583_English_in_Scandinavia_Monster_or_Mate_Sweden_as_a_Case_Study(2019年3月アクセス).

Sundqvist P. (2011). A Possible Path to Progress: Out-of-school English Language Learners in Sweden. In: Benson P., Reinders H. (eds) Beyond the Language Classroom. Palgrave Macmillan, London.

Sundqvist P. & Olin-Scheller, C. (2013). Classrom vs. Extramural English: Teachers Dealing with Demotivation. Language and Linguistics Compass, 7(6): 329-338. https://doi.org/10.1111/lnc3.12031(2019年3月アクセス).

国際ビジネスコミュニケーション協会(2018).「TOEIC Listening& Reading Test受験者数の推移」. https://www.iibc-global.org/library/default/toeic/official_data/lr/pdf/lr_transition_2017.pdf(2019年3月アクセス).

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