日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。
2018.08.22
「英語は、子どもが自分でやりたいと思ったときからでよいのでは?」、「自分で決めて始めたことでないと続かないのでは?」。
これらは、親が早期英語教育について考えるときに生じる疑問であり(ベルメゾン生活スタイル研究所, 2017)、子どもの意志を尊重したいという思いや、途中でやめるとお金がもったいないという経済的な理由が背景にあると考えられます。
しかしながら、英語に関する意識調査結果を見ると、「必要だと思うけれど、自分は無理」と英語をあきらめる学生や新社会人が増加しており、必要性を感じたときには手遅れである可能性があります。
【目次】
文部科学省をはじめ、さまざまな研究・調査機関が日本人の英語に対する意識調査を行っており、下図は幼児から高校生を対象とした各種調査結果を、比較を容易にすることを目的として、一つにまとめたグラフです。
研究・調査機関や調査年月などが異なる場合があるため、比較により結論づけることはできませんが、子どもが大きくなるにつれて英語嫌いが増えていく可能性を示唆していると考えられます。
出典(以下3つの調査結果を基にIBSがグラフ作成):
*1横山(1999)
アンケート調査実施年:1994〜1995年(日本人とネイティブ・スピーカーのチーム・ティーチングにより、体を動かす活動や歌を取り入れた30分間の英語クラスを週1回、9カ月間継続し、その最終月に実施)
調査対象:幼稚園の年長児クラスに通う子どもたちの保護者、回答数:71、回収率:78.8%
グラフに関する注意点:同調査における回答「幼稚園での英語学習をとても楽しんでいる/まあまあ楽しんでいる」は「英語が好き」、「あまり楽しんでいない/全然楽しんでいない」を「英語が嫌い」としてグラフ作成。「どちらとも言えない」の回答選択肢はなし。
*2 文部科学省(2015)
アンケート調査実施年:2014年、調査対象:全国の公立学校に通う小学5・6年生 22,202人、中学1・2年生 24,205人
グラフに関する注意点:同調査における回答「英語が好き/どちらかといえば好き」を「英語が好き」、「どちらかといえば嫌い/嫌い」を「英語が嫌い」としてグラフ作成
*3 文部科学省(2018)
アンケート調査実施年:2017年、調査対象:全国の国公立学校に通う中学3年生 957,431人、高校3年生 673,881人
グラフに関する注意点:同調査における回答「英語学習が好き/どちらかといえば好き」を「英語が好き」、「どちらかといえば嫌い/嫌い」を「英語が嫌い」としてグラフ作成。「どちらとも言えない」の回答選択肢はなし
上図における幼稚園児のデータは、横山(1999)の調査結果の一部であり、ほかにも、幼稚園で習った歌や踊りを家で披露することがある子どもが81.6%、「これは英語で何て言うの?」など英語について親に質問をしたことがある子どもが85.8%、という結果も示されました。
また、1998年〜1999年にかけて、幼稚園・保育園で勤務する幼稚園教諭・保育士(新見公立短期大学卒業生)を対象に実施されたアンケート調査(回答数98、回収率23.3%)においても、英語活動を取り入れる園の教諭・保育士の中には「楽しんでいる」、「喜んでいる」など、子どもたちの英語への興味・関心について肯定的なコメントをする者が極めて多かったことが報告されています(山内, 1999)。
さらに、兵庫教育大学付属幼稚園では、2005年〜2006年(9カ月間)に計6回の英語活動と、終了時における保護者へのアンケート調査(回答数33、回収率71.7%)が実施されています。この調査結果によると、82%の保護者が「子どもが英語に興味をもっている」と回答し、保護者に対し「英語が嫌い」と話す子どもはひとりもいないことがわかりました(寺尾 et al., 2010)。
これらの調査研究は、特定の幼稚園や保育園で実施されたものであり、子どもたちの反応も実施カリキュラムの内容により異なる可能性があるため、一概に結論づけることはできません.
ただ、上記と同様の報告をする調査・研究がほかにもいくつかあることから、英語にふれた幼児のほとんどは「楽しい」と感じている可能性が高いと考えられます。
文部科学省(2015)の調査によると、9割もの児童が「英語を使えるようになりたい」と感じています。さらに、英語を使ってしてみたいこととしては、「海外旅行」、「外国人と話す事」、「外国の人と友だちになること」が最も人気が高く、8〜9割近くの児童が「してみたい」と回答していることから、実際に海外へ行くことや海外の人と接することを楽しみにしている様子が伺えます。
2018年3月、埼玉県草加市は、獨協大学との共同地域研究プロジェクト「草加市の子どもと英語教育」の結果報告会を開催しました。
同報告会で公表された、草加市内の小学校(計18校)の外国語活動担当教員へのアンケート調査においては、全教員が「子どもたちは外国語活動に熱心に取り組んでいる」、「子どもたちは外国語活動が好きなようだ」と回答しています。
また、草加市内の小学6年生(草加市全体の約4割を占める971名)本人を対象にしたアンケート調査においては、約8割の児童が英語の授業が「好き」、「おもしろい」、「英語を話せたらかっこいい」、「英語が高校・大学への進学、将来の仕事に役立つ」と感じており、約8〜9割の児童が英語の読み・書きへの興味も示していることがわかりました(羽山, 2018)。
文部科学省による調査と草加市による調査の結果が近いことから、小学校においては英語そのものや授業への興味・意欲が高い児童が多数派であると言えます。
また、同調査により、英語に対する興味・意欲が幼児から小学生にかけて年齢とともに増していく可能性が明らかになりました。市内の幼稚園・保育園・公立小学校に通う児童(年中・年長、小学2年生・4年生・6年生)の保護者へのアンケート調査結果(2017年6月実施)を見ると、年中から小学6年生まで、英語に対する興味・関心、学習意欲が高い児童のほうが多く、一方、使用意欲となると低い児童が多いものの、どちらも年齢が上がるにつれて徐々に高まっていくことがわかります。
出典:羽山 恵、及川 賢 、河合裕美、片山亜紀(2018)よりIBS作成
文部科学省(2015)の調査では、上図のグラフの通り、英語に対する意識を小学5・6年生、中学1年生、中学2年生で比較し、学年が上がるにつれて英語好きが減り、英語嫌いが増えることがわかりました。さらに2016年、文部科学省(2017)は、中学3年生(全国無作為抽出の977,367人)を対象にアンケート調査を実施し、小学生のときに英語の授業が好きだった生徒は57%、現在英語学習が好きである生徒は54%* であったことを報告しました。
わずかな差ではありますが、「小学生のときは好きだったけれど、いまは好きではない」という中学3年生が約3万人(全体の3%)いると言えます。
*この調査における回答の選択肢には「どちらともいえない」がないため、上図のグラフ・データとは比較不可。
つまり、幼児から小学生にかけては英語好きが増えていくものの、小学生から中学生にかけては減っていき、かつては圧倒的に多数派だった「英語好き」が、中学2・3年生になると全体の半分になってしまうのです。
しかしながら、文部科学省(2015)の調査において、「英語を使えるようになりたい」、「英語の勉強は大切だと思う」と回答する児童・生徒の割合は、学年が上がるにつれてわずかに減るものの大きな差ではないことから、必要性を感じているにもかかわらず「好き」ではなくなってしまう子どもたちが多いと考えられます。
文部科学省(2018)の調査によると、中学生は英語学習を好む生徒がかろうじて多数派であるものの、高校生になると割合が減って少数派になってしまいます。
しかしながら、同調査によると、中学生から高校生にかけて、仕事や学問をできる程度の高い英語力を身につけたいと考える生徒の割合は増して、受験を目的に英語学習をする生徒は大幅に減っています。一方、「学校の授業以外での利用を考えていない」という学習意欲の低い生徒は2倍以上に増えています。
よって、中学生から高校生にかけて、受験のためだけではなく、海外で通用するレベルの英語力を身につけたいと考える生徒が増える一方で、英語学習を好まない生徒も増え、生徒間の意欲の高低差が大きくなっていると言えます。
出典:文部科学省(2018)よりIBS作成
GMOリサーチ(2017)の「英語に対する意識調査」によると、英語への苦手意識がある人のうち半数以上は中学生のときにその意識が芽生えており、最も多い学年は中学1年生です。
出典:GMOリサーチ(2017)よりIBS作成
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所(2017)による共同研究調査の結果では、勉強が好きな児童・生徒と、勉強が嫌いな児童・生徒の割合が逆転する時期は中学生であることが示されました。小学生までは「好き」が64.8%で多数派ですが、中学生では45.3%で少数派になります。高校生になるとさらに39.4%に減りますが、小学生から中学生にかけての変化よりは小さいものです。
出典:東京大学社会科学研究所、ベネッセ教育総合研究所(2017)よりIBS作成
また、同じ児童・生徒を対象にした2015年〜2016年の経年変化に関する調査によると、小学4年生から5年生、または5年生から6年生の間に「好き」から「嫌い」に転じた児童は12.9%でした。それに対し、小学6年生から中学1年生の間、または中学1・2年生から2・3年生の間では16.4%へと増加します。
「嫌い」なままでいる児童・生徒の割合は、小学生(20.5%)よりも中学生(37.2%)、中学生よりも高校生(48.7%)のほうが多く、半数近くの高校生は前年度から嫌いなままです。
さらに、勉強が嫌いなままでいる児童・生徒は、勉強する理由として他者からの評価や進学などの理由(外発的動機)を挙げる場合が多く、好奇心や関心(内発的動機)を挙げる児童・生徒は学年が上がるにつれて減り、小学生と中学生の間で最も大きな差が見られます。
つまり、小学生のうちは、勉強について「うれしい」、「楽しい」、「おもしろい」と感じることが多いにも関わらず、中学生になると教師や親、友人、試験や受験など、他者から評価されることが増え、必然的に「勉強したい」よりも「勉強しなければならない」という意識に大きく変化してしまい、これが英語への苦手意識が芽生えることにも影響していると考えられます。
実際に、文部科学省(2017)が中学3年生を対象に実施したアンケート調査の結果によると、英語学習が好きではない理由として最も多いものは「難しい」、次いで「英語そのものが嫌い」、「テストで思うような点がとれない」でした。「難しい」と感じる対象としては、「文法」(13.8%)、「単語のつづりや文字を覚えること」(12.5%)、「文を書くこと」(10.6%)が上位3つです。
出典:文部科学省(2017)よりIBS作成
前述の草加市・獨協大学による調査によると、草加市内の小学6年生のうち、約6割の児童が中学校での英語の授業を楽しみにしており、約9割が「小学校での英語の勉強は中学校で役に立つ」と考えています。
しかしながら、中学校での英語の授業を楽しみにしている児童とほぼ同じ割合(68.9%)で不安を感じている児童がおり、約4割もの児童が「とても不安」と回答しました(羽山 et al., 2018)。
この小学生たちが不安に感じていることは、まさに英語が「楽しむ」から「勉強する」ものに変化することであり、主に文法や単語が難しいのではないか、良い成績がとれないのではないか、というイメージが強いと推測できます。
2014年、東京広告協会(2014)は首都圏の大学生800名を対象に意識調査を実施しました。この調査結果によると、ほとんどの大学生は自分の英語力に自信がなく、就職先企業の公用語が英語になることに不安を感じる学生が約8割、海外や外資系企業で働きたくない学生が約6〜7割であることも報告されました。
しかしながら、調査対象の大学生の約8割が「グローバル化は自身の将来に影響を及ぼす」、約7割は「世界に通用する人間になりたい」と回答していることから、英語を使って外国人と一緒に働くことについて、決して他人事ではなく自分の問題として捉えている学生がほとんどであると考えられます。
英語が必要だと感じながらも不安を抱く学生の様子は、別の調査でも明らかにされています。例えば、グローバルリーダー育成を目指す小中高生向け教育機関「IGS」とアサツー ディ・ケイ(2013)が実施したインターネット調査を見ると、高校生よりも大学生のほうがグローバル化を身近に感じているものの(高校生:70.9%、大学生:79.6%)、自分がグローバルに活躍したいと考える学生の割合は少なくなっています(高校生:39.3%、大学生33.0%)。
そして、グローバル企業で働くつもりがない高校生・大学生のうち、最も多く(45.5%)が挙げたその理由は「他の国の人とのコミュニケーションが不安だから」です。さらに、半数以上の大学生は「今からでは間に合わない」と考えており、その割合は高校生よりもわずかに増えています。
出典:IGS、アサツー ディ・ケイ(2013)よりIBS作成 ※上記資料に記載のデータをもとに表作成。グラフにおける「思う」は、同調査における回答の選択肢4つのうち「非常にそう思う」「ややそう思う」の合計。「思わない」は、そのほか2つの回答の合計。
将来の進路がより明確になってくる大学生においても、英語の必要性を感じているにもかかわらず努力はせず、その結果、英語力に自信をもてずに将来の選択肢を狭めている可能性が高いと考えられ、早稲田大学の学生を対象としたグローバル意識調査(早稲田大学)
産業能率大学(2017)は、あらゆる業種、企業規模、企業形態(上場、非上場)において2017年度に新卒入社した全国の新入社員800人を対象としたアンケート調査を実施しました。調査結果によると、語学を勉強している新入社員のうち、「英語は全くできない」と回答する人の割合は、全体における割合よりも少なく、逆に、語学を勉強したいと思わない人たちにおける割合は7割以上で極めて多い、という結果も示されています。
つまり、語学力に自信がある人ほど語学の学習意欲が高く、自信がない人は意欲が低いと考えられます。
出典:産業能率大学(2017)よりIBS作成
また、同調査によると、新入社員の8割が「日本企業はグローバル化を進めるべき」と考えていますが、「海外で働いてみたいと思わない」と回答した新入社員も6割います。海外で働きたくない理由は、やはり「自分の語学力に自信がない」が最も多く、63.6%でした。
グローバル意識は高いものの、語学力に自信がないからチャレンジしないという、このような新入社員の姿勢は、高校生・大学生の調査結果と同様であり、社会人になったからといって変化する可能性は低いのです。
「英語は、子どもが自分でやりたいと思ったときからでよい」という親の考え方がある一方、多くの子どもが中学生のときに苦手意識をもち、必要性を感じるものの自信がもてない、という理想と現実のギャップによってあきらめてしまう可能性があります。では、どのような要素が子どもたちの「英語が好き」、「英語を学びたい」という意識を支え、いざ必要になったときに挑戦できる姿勢を育てるのでしょうか。
草加市と獨協大学は、共同地域研究プロジェクト「草加市の子どもと英語教育」において、現役の大学生を対象としたアンケート調査も実施しました。この調査結果では、英語力が高いほど、英語好きが多いことが報告されています(羽山 et al., 2018)。
GMOリサーチ(2017)が15歳〜59歳の日本人を対象に実施したアンケート調査においても、英語好きの人の割合と英語が得意な人の割合がほぼ同じであることから、英語の好き・嫌いと英語力には相関関係があると考えられます。
出典:羽山 恵、及川 賢 、河合裕美、片山亜紀(2018)よりIBS作成
※調査対象の大学生(計420名)は、獨協大学に在籍する1年生(うち351名は外国語学部英語学科、69名は経済学部/法学部/外国語学部ドイツ語学科/フランス語学科)。このような調査対象者の属性が、「英語好き」の割合が他調査と比較して高い理由の一つと考えられる。(2018年5月 獨協大学「草加市の子どもと英語教育」研究チームに確認)
また、同調査によると、英語学習の開始年齢の平均は、「買い物などはできる」グループは9.9歳、「身近なことは話せる」グループは8.8歳、「流暢に話せる」グループは7.0歳でした。
また、英語力が高いグループのほうが未就学の時期に英語学習を始めている学生が多く、逆に、英語力が低いグループのほうが小・中学校の授業で始めた学生が多いことが報告されています。
出典:羽山 恵、及川 賢 、河合裕美、片山亜紀(2018)よりIBS作成
また、文部科学省(2017)が全国の中学3年生を対象に調査した結果によると、英語を聞く力が高い生徒のほうが、小学校入学前から英語にふれている生徒の割合が高く、聞く力が低い生徒における割合の約2倍です。
つまり、英語を聞く力が高いほど、早くから英語にふれているのです。
これらの調査は、英語学習の開始年齢と後の英語力は相関関係にある可能性を示しており、中学生になってから英語が「難しい」と感じて苦手意識が生まれる人が多いことも考慮すると、未就学児〜小学生の間に英語にふれ、「好き」⇆「得意」⇆「高い英語力を目指す」という意識の好循環を生み出す土台を育てることが重要だと考えられます。
尚、草加市と獨協大学の共同地域研究による調査結果では、草加市内の幼稚園または公立小学校に通う子どものうち、園・学校外で英語学習(塾・英会話教室や通信教材)をしている子どもは3〜4人に1人の割合でおり、英語への興味・関心、学習・使用意欲が比較的高いことがわかりました。
また、興味・関心、使用意欲、理解度にはそれぞれ相関性があり、子ども本人の学習習慣や家庭(保護者の子どもとの関わり、英語への親しみや英語の必要性に対する保護者の考えなど)の影響が強いことも報告されています(羽山 et al., 2018)。
文部科学省(2017)の調査によると、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)のうち、「話すこと」の能力が高いほど、英語学習が好きである生徒の割合が高いことが示されています。さらに、「国際社会での活躍」や「海外での語学研修やホームステイ」など、海外での仕事や勉強、生活で使えるレベルを目指す割合は、話す能力が低い生徒の倍以上(話す能力が高い生徒:30.9%、低い生徒:12.9%)です。
出典:文部科学省(2017)よりIBS作成
<グラフの補足説明>
*CEFR A1レベル:
CEFR(Common European Framework of Reference for Language/ヨーロッパ言語共通参照枠)は、世界標準の英語力測定方法。A1は、最も低いレベルであり、英検3〜5級、TOEIC200〜380レベルに該当するとされるが、上記の文部科学省による調査においては、A1レベルを4段階に細分化して分析。上位2段階を「A1上位レベル」、下位2段階を「A1下位レベル」と表現している。
よって、この調査からも、「好き」⇆「得意」⇆「高い英語力を目指す」、「嫌い」⇆「苦手」⇆「高い英語力を目指さない」というように、英語に対する意識と英語力、学習意欲にそれぞれ相関性があることがわかり、英語力に関しては「話す力」が最も学習意欲に良い影響を与えると考えられます。
東京広告協会(2014)の調査を始め、大学生や新入社員を対象とした英語や海外に対する意識調査がいくつも実施されています。その結果、多くの若者が「できるようになりたい」「必要だ」と考えているにもかかわらず、「語学力に自信がない」という理由で海外留学や海外勤務、就職企業のグローバル化に不安を感じ、かといって積極的に学習するわけでもない、という状況であることが明らかになっています。
東京広告協会(2014)は、英語の勉強をしている大学生のほうが、全体平均よりも海外志向が強く、就職先のグローバル化への不安も少ないことを報告しています。さらに、単に英語を勉強している学生よりも、外国人との交流経験や海外留学経験のある学生のほうがその傾向が強いことが明らかになっています。以下のデータは、同調査結果の一部です。
出典:東京広告協会(2014)よりIBS作成
英語学習により知識や技術を身につけること以上に、外国人と実際に交流する体験が自信を与え、その自信が意欲や挑戦する姿勢に繋がると考えられます。
東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所(2017)による研究調査では、小学4年生〜高校生の児童・生徒が1年の間に「勉強嫌い」から「勉強好き」に転じる場合、「自分の良いところが何かを言うことができる」、「失敗しても自信を取り戻せる」、「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」という、自己肯定感の高さが影響している可能性が高いことが示されています。
この勉強における自己肯定感の重要性と併せて、「話す力が高いほど英語好きで学習意欲が高い」、「外国人との交流が自信に繋がる」という前述の調査結果も考慮すると、実際に外国人とのコミュニケーションに挑戦し、試行錯誤しながらも意思疎通ができた経験が自信を生み出し、英語そのものや英語学習を好む姿勢に繋がる可能性が高いと言えます。
さらに、小さいころから英語にふれることが後の英語力に良い影響を及ぼす可能性があり、中学生のときに英語への苦手意識が芽生える人が多いことから、小学生までの時期に、外国人とふれ合う経験をすることは重要だと考えられます。英語に対する意識や学習意欲、英語力に相関関係があれば、小さいころに上記のような体験をした子どもたちは、中学生以降の成績や試験結果などからも英語力に自信がついていき、英語や海外への「心の壁」ができることはないのではないでしょうか。
幼児や小学生のうちは、ほとんどが英語に興味を示し、「英語を話せるようになりたい」「英語はできたほうがよい」という気持ちが社会人になるまで変わらない人たちも多くいます。
しかしながら、実際にそのための努力をする人は極めて少なく、高校生・大学生など進路を決める時点で苦手であれば、英語を身につけることをあきらめてしまいます。
子ども本人がいざ必要だと感じたときには「やりたい」と思うだけで行動には移さない可能性が高いのです。学校で良い成績をとるために早くから知識や技術を詰め込むのではなく、子どもたちが必要だと思ったときにあきらめてしまわないように、英語や海外に対する「心の壁」をなくすための体験をさせること。
これが早期英語教育の重要な意義の一つであり、親が子どもに強制するべきものではありませんが、「子どもが自分でやりたいと思ったときからでよい」と軽視してよいものでもないのです。
GMOリサーチ(2017).「「英語に関する意識調査」を未成年・成人計10,000人に調査 〜英語の活用意欲は成人よりも未成年が高い傾向に〜」.
https://gmo-research.jp/pressroom/survey/voluntary-survey-20170929
IGS、アサツー ディ・ケイ(2013).「グローバル教育に関する意識調査」.
https://www.adk.jp/1819.html
小林文、齋藤勲、沼澤聡、中村明弘、木内裕二、橋本みゆき、佐藤均、板部洋之、昭和大学薬学部海外学生実習・研修推進委員会(2011).「薬学部2〜4年生に対する海外留学、英語学習に関する意識調査」.『昭和大学薬学雑誌』. 2(1), 91-99. 昭和大学薬学雑誌編集委員会. 昭和大学学術業績リポジトリ.
http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/showa_jour_pharm/back_number/frdi8b000000ilk2-att/kobayashi.pdf
産業能率大学(2017).「第7回新入社員のグローバル意識調査」.
http://www.sanno.ac.jp/research/global2017.html
寺尾裕子、鈴木正敏、名須川知子、高橋美由紀(2010).「幼稚園での英語活動の試みによる園児の学びと教員の学び ―保護者と教員への調査に基づいて―」.『学校教育学研究』. 22, 1-12. 兵庫教育大学. Hyokyo Educational and Academic Resources for Teachers.
http://hdl.handle.net/10132/3342
東京広告協会(2014).「大学生意識調査プロジェクト FUTURE2014 大学生の「日本」に関する意識調査」.
http://www.tokyo-ad.or.jp/activity/seminar/pdf/FUTURE2014.pdf
東京大学社会科学研究所、ベネッセ教育総合研究所(2017).「子どもの生活と学びに関する親子調査2015—2016 速報版 —親子パネル調査にみる意識と実態の変化—」.
https://berd.benesse.jp/up_images/research/2016_oyako_web_all.pdf
羽山 恵、及川 賢 、河合裕美、片山亜紀(2018).「草加市の子どもと英語教育(獨協大学・草加市地域研究プロジェクト2017 結果報告かい・パネルディスカッションにおけるプレゼンテーション資料)」. 獨協大学.
http://www.dokkyo.ac.jp/news2018/sokakodomo.html
ベルメゾン生活スタイル研究所(2017).「英語教育について」.
文部科学省(2015).「平成26年度「小学校外国語活動実施状況調査」の結果について」.
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1362148.htm
文部科学省(2017).「平成28年度 英語教育改善のための英語力調査事業(中学校)報告書」.
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1388654.htm
文部科学省(2018).「平成29年度英語教育改善のための英語力調査 事業報告」.
http://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1403470.htm
山内圭(1999).「<調査資料> 幼稚園・保育園での英語教育の取り組みについて(1)」.『新見公立短期大学紀要』. 20, 183-198. 新見公立短期大学. CiNii.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110000037976/
横山 東(1999).「幼稚園における英語教育の効果についての研究」.『九州女子大学紀要』. 35(3), 1-18. 九州女子大学. CiNii.
https://ci.nii.ac.jp/naid/110005999055
早稲田大学 異文化交流センター(2012).「早大生のグローバル調査アンケート分析レポート」.『ICC Web Magazine』.
http://global.waseda-icc.jp/report/enquete#enquete05