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日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。

2020.03.23

中学入試で小学校卒業までに身につけた英語力を評価。〜子どもの個性を早くから伸ばす時代に〜

中学入試で小学校卒業までに身につけた英語力を評価。〜子どもの個性を早くから伸ばす時代に〜

首都圏の中学校では、英語の入試を行う学校や英語力のある受験生を優先的に入学させる学校が約4割。従来の試験や学校の成績だけでは判断できない、子どものあらゆる能力や経験を評価しようとする入試も増えてきており、日本も子どもの個性を早くから伸ばそうとする時代に入ってきました。

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【目次】

 

中学入試でも英語の試験や資格による優遇措置がある

2020年4月から新学習指導要領が実施され、日本全国の小学3〜6年生が学校で英語の授業を受けることになります。2015年度に実施された文部科学省(2015)の調査では、外国語活動の授業を受けている全国の小学5・6年生のうち約7割が「英語が好き」と感じている一方で、その割合は中学1年生で約6割、中学2年生で約5割であることが報告されました。

小学校の授業で英語に興味をもった子どもたちの意識や意欲を中学校入学後にいかに維持・向上させるかという点は、小学校と中学校間の連携における課題の一つです。

公立の小中学校がこのような課題を抱える中、私立や国公立の中学校では、子どもたちが小学校卒業までに身につけた英語力や英語学習意欲を積極的に評価しようとする入試を行う学校が増えてきています。

首都圏中学模試センター(2019)が発表した資料によると、首都圏の中学・中等教育学校(私立・公立・国立)のうち、2020年入学試験の受験科目やその選択肢に英語が含まれていた学校、英語に関する資格などによって受験における優遇措置があった学校は、計146校で全体の4割を占めます。

 

グラフ|首都圏の中学校のうち英語の入試や英語資格による優遇措置の有無の割合

※学校所在地には、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、静岡、北海道、宮城、岩手、長野、愛知、大阪、奈良、愛媛、宮崎、長崎、佐賀が含まれ、帰国生入試は除外されている。

 

表|「英語の試験や英語資格の優遇措置」別の学校数

 

英検などの資格によって加点などの優遇措置がある学校が最も多く、一定の英語力がある小学生のみが受験できる入試枠を設ける学校もいくつかあります。2科(国語、算数)や4科(国語、算数、社会、理科)など、中学校入試の受験科目は学校によって異なりますが、英語力によってはこれらすべての学科試験が免除される場合もあります。

しかしながら、英検などの資格を応募の必須条件とする入試や学校はまだ少数であり、英語力の評価方法は多様です。リスニングテストや英語での面接、英語の文章を暗唱させる、英語のネイティブスピーカーやほかの受験生と一緒に英語のアクティビティをさせる、英作文、英語でのスピーチやプレゼンテーション、英語でのプログラミングなど、学校や教育プログラムに応じた特殊な試験も行われています。

国際的な教育やグローバル人材の育成を学校の特色としている、大学入試改革を見据えて英語力のある生徒を確保する狙いがある、など、私立や国公立の中学校や中高一貫校が英語に関する入試を行う理由はいくつか考えられますが、早期英語教育や学校外での英語学習の普及により、日本で生まれ育ちながらも英語に強い興味をもつ子どもたちや英語を得意教科とする小学生が増えてきたことの表れでもあるのではないでしょうか。

 

早くから個性を伸ばそうとする時代に

中学入試の変化によって早期英語教育が過熱しすぎるのではないかという懸念を示す報道や子どもの英語教育について過度に不安を抱える保護者の反応も見られますが、少し異なる視点から考えることもできます。

近年の中学入試に新たに登場した試験科目は英語だけではありません。ほかにも、プログラミング、スポーツ、芸術、思考力、プレゼンテーション、囲碁・将棋、漢字、読書などの分野もあり、そして、それらを「試験」という形式にこだわらず、面談やグループワーク、発表など、多様な方法で子どもの能力や経験を評価する学校もあります。また、従来の受験科目(国語、算数、社会、理科)であっても得意科目のみで受験できる中学入試も増えています。

首都圏の中学受験情報を提供するエデュケーショナルネットワーク(2019)は、2019年度中学入試の受験者数や入試結果に基づき、「昔ながらの教育方針を守り続けている学校、一流大学に合格することだけを一直線に目指すような学校など」の人気が低下傾向にある一方で、親が「知識や技能といった従来型の勉強だけではない多彩な経験ができる」学校や「個性を大切にし、自身が興味関心を持っていることを追求できる」学校を選ぶようになった、という見解を示しています。

中学受験が「良い大学・良い就職先のため」から「個性を伸ばすため」へと目的が変化しつつあるのかもしれません。

このような状況から、すべての子どもに同じ知識や能力を求めて画一的に教育するのではなく、子どもの多様な能力・経験を多様な方法で評価し、子どもが好きなこと、得意なことを早い段階から伸ばそうとする時代になった、とも考えられます。海外では、飛び級や飛び入学、ホームスクーリング(家庭学習)など、子どもの年齢や所要年数、「一般的」、「標準」といった概念に捉われず、一人ひとりの個性や能力に応じた教育を行う考え方が早くから定着している国もあるため、何ら不思議なことではありません。

 

「個性」の一つとしての英語

日本では、「全体的な教育水準の向上が重視される中で、年齢に基づく平等性を重視する余り、ややもすれば一人一人の子どもの能力・適正に応じた教育を進めるという視点からの取組が必ずしも十分ではないという指摘が従来なされていた」ことを理由に、20年以上前から大学への早期入学を可能にする法改正が段階的に行われてきました(文部科学省, 2007)。

ある分野における特に優れた資質、高い能力、強い意欲・好奇心を「個性」や「多様性」と捉え、それらを通常よりも早期から高いレベルの教育を受けさせることで効果的に伸ばす、という考え方は日本の学校教育にも存在しているのです。

現在の飛び入学制度は大学や大学院への入学が対象(2年以上の高校在学などの条件あり)であり、実施大学も2019年度入試でわずか8大学(文部科学省, 2020)。文部科学省は、日本で飛び入学の件数が伸びない理由の一つとして「生徒の友人や保護者など、生徒の周囲の者が定められた年齢よりも早く進級・進学するという文化に慣れていない」ことを挙げています(文部科学省, 2007)。

小学校や中学校における飛び級・飛び入学が認められている国や大学の受験・入学に年齢制限を設けない国と比べると、日本ではやはり「早期教育」への抵抗感が比較的強く、中学入試の変化に対する反応とも関連性があると考えられます。

しかしながら、1999年の法改正で中高一貫教育制度が導入され、その目的は「生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じた多様で柔軟な」学校制度にすることでした(文部科学省, 1998)。公立の中高一貫校は、入学条件に適性検査などへの合格があるものの、本来、「受験エリート校」としてではなく、子どもが小学校卒業時点でもっている個性を重視して伸ばすための学校として存在しているのです。

近年は、脳の構造や機能を調べることによって、それらの違いが胎児期や乳幼児期からどのように生まれて変化・発達していくのかを解明しようとする科学的研究も進んでいます(大隅, 2018)。「個性」への理解が深まるにつれて、子どもの教育における個性重視の傾向はますます強くなっていくでしょう。

英語への興味や英語力も個性の一つであると考えると、そのような子どもの個性を早くから積極的に評価して伸ばそうとする中学校が増えていることは、小さいころから英語に親しんできた子どもたちやバイリンガルの子どもたちにとっても、英語力のある人材を必要とする日本社会にとっても、歓迎するべき良い変化になります。親もこのような視点で中学入試の変化を捉えれば、子どもの興味やペースに合わせた楽しい英語環境づくりになりやすいのではないしょうか。

 

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参考文献

エデュケーショナルネットワーク(2019).「受験マニアックス:2019年3月号 2019年 首都圏中学入試の概況」.『スクールスポット 中学受験板 首都圏学校情報検索サイト』 . Retrieved from

https://www.schoolnetwork.jp/jhs/maniax/2019-03/index.php

 

大隅典子(2018).「平成30年度科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」に係る中間評価報告書:「多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解」. Retrieved from

https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-AREA-4802/4802_chukan_hyoka_hokoku_ja.pdf

 

首都圏中学模試センター(2019)「2020年 入試要項一覧【確定版】」. Retrieved from

https://www.syutoken-mosi.co.jp/common/pdf/nyushi_joho/nyushi_yoko_kekka/2020_youkou1216.pdf

 

文部科学省(1998).「中高一貫教育制度の導入に係る学校教育法等の一部快晴について(通知)」. Retrieved from

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/3/980601.htm

 

文部科学省(2007).「報告書 − 一人一人の個性を伸ばす教育を目指して −」. Retrieved from

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/020-17/houkoku/07032207.htm

 

文部科学省(2015).「平成26年度「小学校外国語活動実施状況調査」の結果について」. Retrieved from

https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/1362148.htm

 

文部科学省(2020).「平成31年度入試における飛び入学実施大学」. Retrieved from

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111318/001/002.htm

 

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