日本の子供たちが、英語を身につけて ミライに羽ばたくために。
2017.02.09
フィンランドは、国際的な指標として高く評価されているTOEFLで、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの平均スコアが94点と、軒並みスコアが高いヨーロッパの中でも第7位にランクされており、優れた英語教育を実施している国として有名です。日本はというと71点で、スコアの低いアジアの中でも5番目に低いスコアとなっています。
出典:Test and Score Data Summary for TOEFL iBT® Tests
【目次】
このように比較すると、「ヨーロッパ諸国は英語に近い言葉を話しているのだから、漢字やひらがなを使う日本人より英語のスコアが高くて当然」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
ここで一つ、興味深い表をご紹介したいと思います。
この表は、Foreign Service Instituteという、アメリカ国務省の外国語研修を行う付属機関が発表している「英語のネイティブ・スピーカーが他国語を習得するまでの学習時間」をまとめたものです。
「英語に近い言語」とされるカテゴリー1には、やはりヨーロッパ諸国の言語がリストアップされていますが、フィンランド語は「英語とは言語的/文化的に違う言語」とされるカテゴリー4に属しています。
日本はカテゴリー5で、英語のネイティブ・スピーカーにとって習得が難しい言語とされていますが、ヨーロッパに位置しながらもフィンランド語は日本語と同様に英語から距離が遠い言語なのです。
参考:FOREIGN SERVICE INSTITUTE LANGUAGE DIFFICULTY RANKINGS
日本人とフィンランド人は、同様に英語から距離の遠い母国語を話していることがおわかりいただけたかと思いますが、それではなぜ両国のTOEFLスコアにここまでの違いがでてしまうのでしょうか?
フィンランドで英語教育が盛んになった背景には、1991年のソ連崩壊が色濃く関係しています。
経済的にソ連に依存していたフィンランドでは、ソ連の崩壊によって失業率が20%に達するなど、深刻な不況に陥ってしまったのです。
そこで、もともと資源の乏しいフィンランドでは、国際競争力をつける為に「人」を第一の資源と考え、国際共通語である英語の習得も含めた教育改革を推進することになったのです。
参考:「フィンランドの小学校英語教育 日本での小学校英語教科化後を見据えて」 伊東治己 著
(2014年2月1日発行 研究社)
この表はフィンランドと日本の小学校、中学校、高等学校における英語教育を「授業時間数」、「語彙数」、「センテンス数」の3項目で比較したものです。
各国の授業時間数の合計を見てみると、フィンランドが「684時間」なのに対し、日本は「928時間」、実に1.4倍もの学習時間数を英語に使っています。
日本人はフィンランド人に比べて、沢山英語を勉強しているにも関わらず、結果を残せていないのです。
もう一つ注目して欲しいのが、小学校、中学校、高等学校での時間数、語彙数、センテンス数のバランスの違いです。
フィンランドの英語教育は小学校3年生からスタートします。授業時間数は、小学校、中学校、高等学校で各228時間(教育課程の改訂後、現在では小学校により多くの時間を配当)、小学校でも高等学校と同じ時間だけ英語を勉強するのです。
語彙数を見てみると、小学校で既に3615語、センテンスは4,470文の獲得を指標としています。それに比べて日本では、語彙数わずか285語、センテンスに至っては0文となっています。
日本の小学生が英文を一つも話せないでいる間に、フィンラドの小学生は3615語、4470文の英語を習得し、そのベースを基に中学校英語をスタートさせているのです。ここまで違いが顕著だと、両国のTOEFLランキングの違いに、小学校英語教育の違いが大きく影響しているのは明らかでしょう。
遅ればせながら、オリンピックイヤーの2020年に、日本でも小学校3年生からの英語教育が必修化されます。
英語教育において成果が出ている他国を見習って、学習年齢が引き下げられるのは喜ばしいことですが、ALT(assistant Learning Teacher)の確保が困難、小学校英語教師が不足している、評価制度が不透明、など様々な課題が指摘されているのも事実です。
教育の地方分権が進んでいるフィンランドでは、学校が生徒一人一人にあった指導・カリキュラムの方針を独自に立て、優秀な教師の育成にも積極的に取り組んでいますが、このあたりのインフラ整備も日本は他国に比べて遅れをとっています。まだしばらくの間は、「家庭での早期英語への取り組み」が重要だと言えるのではないでしょうか。